コラム
AIはデザイナーの仕事を奪うのか
「AIにデザイナーの仕事が奪われる」AIクリエイティブの導入を検討する組織で、
必ず出てくるこの問いに対して、制作現場の実態は意外なほど明確な答えを示しています。
起きているのは仕事の「消滅」ではなく、仕事の「重心の移動」です。
AI制作の現場で、社内のデザイナーの役割はどう変わっているのか?
AI制作が実装段階に入った組織では、
デザイナー の仕事は「手を動かして制作すること」から
「AIの出力をディレクションし、制作物を仕上げること」へと移行しています。
AIが大量の候補を出し、人が最適解な画像や動画を選択し、最終的な制作物を仕上げるとい
うAIとの分業構造が、いま海外ブランドの制作現場で起きている実態です。
博報堂プロダクツがAI専門チームを結成し、
新職種「ジェネレーター」を育成していることも示唆的です。
AIの導入は仕事を「なくす」のではなく「新しい種類の仕事を生む」方向に進んでいます。
具体的に「なくなる仕事」と「増える仕事」は何か?
減少する仕事は、指示に基づいて定型的なビジュアルを制作するタイプの作業です。
商品画像の背景差し替え、バナーサイズのリサイズ、など主に既存の撮影素材の編集業務。
こうした作業はAIによって大幅に簡略化されています。
一方で新たに生まれる仕事も存在します。AIクリエイティブディレクション、プロンプト設
計、品質管理といったAIを活用した制作工程の管理や、組織全体のAI戦略の立案・構築がそ
の中心です。
Business of Fashionは2026年のファッションマーケティングを分析し、
「AIが当たり前になった今、差別化は人の判断によって生まれる」と指摘しています。
社内デザイナーはAI時代にどんなスキルを身につけるべきか?
AI時代のデザイナーに求められるスキルは、従来のデザインスキルとは異なる軸にあります。
第一に、言語化(言葉にする)能力です。AIへの指示の品質は、
視覚的な特徴をどれだけ具体的に言葉にできるかに依存します。
しかし、すべての人が指示を組み立てる必要はありません。これについては弊社が運営する
研修内で解説しています。日本語の指示のみでAI未経験の人材が5日間で制作ができるカリ
キュラムになっています。
第二に、大量の画像や動画の中から最適解を選び取るキュレーション能力です。
AIは100案を出せますが、その中からブランドにふさわしい案を選び、
理想の方向へ制作を進められるのは、AI技術への理解と審美眼の両方を持つ人の仕事です。
第三に、AIの出力をブランド独自のクリエイティブ施策に変える思考力です。
Metaが「クリエイティブは新たなターゲティング手法」と提唱する世界では、デザイナー
は「制作を行う者」から「クリエイティブの戦略家」へと進化することが求められます。
今多くのブランド企業はどのようなクリエイティブを制作しているのか、どのようにオーデ
ィエンスを惹きつけているのか、そういった分析をすることや市場のクリエイティブの変化
に着目する能力が求められます。
あるブランド企業では、ソーシャルメディアの担当者がそのままAIクリエイティブ制作者
に、マーケティング担当者がAI制作プロジェクトリーダーに変化したりと職能再編が起こっ
ています。
FAQ
Q. AIの導入でデザイナーの仕事は減りますか?
定型的な制作作業は減少しますが、AIクリエイティブディレクション、品質管理、プロンプト設計、AI制作の戦略設計といった新しいポジションが生まれています。
Q. デザイン未経験者でもAIクリエイティブの仕事はできますか?
可能です。AIクリエイティブの制作は従来のデザインスキルよりも、言語化能力とブランド理解が重要です。言語化に関しても基本的には日本語のみで制作をすることができます。
Q. AI時代にデザイナーが身につけるべき最も重要なスキルは何ですか?
画像や動画のイメージを言語化(言葉にする)能力です。AI時代の制作者の中核的なスキルになります。
参考情報・文献: AI and the Future of Fashion E-Commerce Content(Business of Fashion / BoF VOICES 2025) dentsu Creative 2025 CMO Report – Agents of Reinvention(dentsu)