導入手順の 9 段階全体像

AI 編集を社内へ入れるとき、9 つの段階を順に通します。順番を飛ばすと、後工程で作り直しが増えます。

  1. 目的合意:制作物のどの工程を、なぜ AI 編集へ置き換えるのかを部門長と合意します。
  2. 対象業務選定:元素材と結果を比べやすく、社内で完結する仕事を 1 つに絞ります。
  3. 参照素材整備:承認済みの正面・側面カット、ロゴ配置、色見本を一箇所に集めます。
  4. ツール選定:候補は 2〜3 に絞り、無償枠と有償枠で同条件の試作を回します。
  5. 判定基準初版:採用・要修正・不採用の 3 区分と、確認項目を紙 1 枚で決めます。
  6. 概念検証(PoC):同じ素材と指示で 5〜10 件を並列に試し、結果の再現性を確かめます。
  7. 承認統合:既存の商品情報・法務・広報の承認フローに、AI 編集用の確認欄を差し込みます。
  8. 記録運用:素材、指示、モデル、確認者、判定結果を毎案件で残す運用を回します。
  9. 拡張判断:作業時間、修正回数、再現性、確認負担の 4 データで、拡張か見直しかを決めます。

この 9 段階を 90 日に配ります。前半でツール選定と概念検証(PoC)、中盤で承認統合、後半で記録運用と拡張判断です。

90 日の週次計画

段階を月でまとめると、週内の予定が曖昧になります。週単位で担当と成果物を決めると、遅れがその週のうちに見えます。

  • 第 1〜2 週:準備:目的合意、対象業務選定、参照素材整備を並行で進めます。素材の権利確認と、入力してよい情報の線引きを社内で共有します。
  • 第 3〜6 週:検証:ツール候補 2〜3 で概念検証(PoC)を行います。同じ素材、同じ指示、同じ出力サイズで 5〜10 件ずつ回し、再現性を確認します。
  • 第 7〜10 週:承認統合:判定基準初版を、法務、広報、情報管理の承認フローへ組み込みます。承認欄の追加、記録項目の共通化、社外公開前の確認手順を文書化します。
  • 第 11〜13 週:記録運用と拡張判断:本番案件 3〜5 件で記録運用を回し、拡張・条件変更・見送りの 3 分岐へ進みます。

第 13 週の直前に全データを揃え、部門長と経営層へ 30 分で説明できる状態にしておきます。週次で 30 分の確認会議を置き、決めごとを翌週の担当へ引き継ぐと、月末にまとめて判断する運用より遅れが早く見えます。会議の記録は、判定シートと同じ場所に残します。

各段階の到達確認項目

段階を進む前に、各段階の到達点を 4 項目で確かめます。到達していない項目は次段階へ持ち越さず、その段階のなかで解消します。

  • 目的合意:置き換える工程/期待する変化/中止条件/責任者
  • 対象業務選定:業務名/必要素材/承認関係者/情報の機密度
  • 参照素材整備:素材一覧/権利記録/保管場所/更新責任者
  • ツール選定:候補比較表/契約プラン/データ取扱い/社内承認記録
  • 判定基準初版:確認項目/採否 3 区分/記入者/保管ルール
  • 概念検証(PoC):件数/再現性/作業時間/確認負担
  • 承認統合:追加した承認欄/記録項目/担当分担/文書番号
  • 記録運用:毎案件の記録/週次レビュー担当/異常時の連絡経路
  • 拡張判断:4 データ集計/拡張条件/見送り条件/次期予算案

各段階の 4 項目は、担当者が変わっても同じ確認ができるよう、紙 1 枚に落として保管します。項目名は略さずに書き、判定の担当も併記します。書式を変えずに 90 日を通すと、後半で見返すときに時系列で比較できます。

ツール選定で確認する観点

ツール選定は、料金と機能一覧の比較だけでは判断できません。ブランド運営会社が実際に見るのは、契約プランごとの生成物の権利、入力素材の保存期間、モデル更新時の告知、社外公開時に必要な表示、そして企業向けの保護機能です。

候補が多いときは、市場全体の観点で外観を掴んでから、自社の 2〜3 候補へ絞る流れが速くなります。AIGC TIMES の有料調査「生成 AI クリエイティブ・プラットフォーム 17 社調査」(¥22,300 / 全 33 ページ)では、17 サービスの機能、契約条件、データ取扱い、企業導入時の確認項目を、同じ様式で並べています。候補比較表の下敷きとして使うと、抜けが減ります。

比較の観点そのものを整理したい段階では、AI 編集ツール選定の考え方 を合わせて確認しておくと、比較の軸がぶれません。

段階手順を体系的に理解する

9 段階の全体像は、無料メソッド「AI 編集社内導入ロードマップ」で、段階ごとの目的、成果物、確認項目、想定期間まで通しで確認できます。本記事の 90 日計画は、この無料メソッドを 3 か月へ落とし込んだものです。

段階の順序を先に共有しておくと、部門ごとに認識がずれにくくなります。導入前に、事務局と関係部署で 1 度読み合わせをしておく運用がおすすめです。

編集そのものの定義や、生成との違いを共有できていない段階では、AI 編集とは何か を先に配ってから、9 段階の説明へ入ると、議論が短くなります。

各段階で発生しやすい 4 つのつまずき

段階を進めるほど、次のようなつまずきが繰り返し出てきます。事前に想定して、対応者と再開条件を決めておくと、止まる期間を短くできます。

  1. 参照素材が揃わない:正面カットしかない、色見本が旧版のまま、といった状態です。素材整備の担当を営業部門ではなく、商品管理側へ寄せると解消しやすくなります。
  2. 概念検証(PoC)の結果が案件で再現しない:試作時と本番で入力素材の解像度、モデルバージョン、指示文の長さが変わっていることが多くあります。3 点を固定した記録を残します。
  3. 承認統合で法務・広報が止まる:AI 用の確認項目を、既存フローの外に置くと承認が滞ります。既存の確認欄へ追加する形にします。
  4. 記録運用が形骸化する:記入が任意になっていると抜けます。判定シートを承認フローの必須項目に組み込み、シートがない案件は次工程へ進めない運用にします。

4 つのつまずきは、どれも段階を戻せば解消できます。戻す判断を「後から」「まとめて」に寄せると、後半で作業が重なります。週次確認会議で 1 件でも兆候が出た時点で戻す運用にしておくと、90 日全体の遅れが最小で済みます。

社内制作物への展開順序は 社内ブランド資産の AI 編集運用 が参考になります。制作物の性質ごとに参照素材と承認関係者が変わるため、拡張前に読み返しておくと判断が早くなります。

90 日終了時の 3 分岐

90 日の終わりに、扱った業務と記録データを持ち寄って、次の 3 分岐で結論を出します。感想ではなく、記録データに沿って判断します。

  • 継続拡張:作業時間、修正回数、再現性、確認負担のすべてで、開始前に決めた条件を満たした場合。対象業務と担当部署を広げます。
  • 条件変更再検証:一部条件を満たさない場合。素材、ツール、担当分担、承認手順のどれを変えるかを 1 点だけ選び、次の 30〜60 日で再検証します。
  • 見送り:情報管理、権利、確認負担で解消できない問題が残る場合。理由と再検討時期を記録し、次期の技術更新まで凍結します。

見送りも失敗ではありません。条件が整えば戻れる形で残すことが、次の判断を早めます。3 分岐を出した会議には、部門長、法務、広報、情報管理の担当が同席する形にしておくと、結論の共有と次期予算の議論を同じ場で終えられます。分岐ごとに、対象業務、根拠データ、次に確認する時期を 1 枚で残します。

拡張判断で押さえる 5 項目

継続拡張へ進むときは、次の 5 項目で対象範囲を決めます。

  1. 業務:概念検証(PoC)で扱った業務と同じ性質か、新しい性質か
  2. 素材:参照素材の整備状況と、権利の管理主体
  3. 担当:制作、確認、承認の担当が明確に分かれているか
  4. 記録:本番案件でも記録運用を継続できる体制か
  5. 費用:ツール代と作業時間を合算した費用が、既存工程と比較可能か

5 項目のいずれかが未確定なら、その業務は次期の対象に回します。範囲を絞るほど、拡張後の混乱は減ります。「一気に広げる」計画は、記録運用と承認統合を先に痛めます。業務単位で 1 つずつ足していく方が、結果的に拡張速度は上がります。

90 日間で記録するべき 6 データ

判断の質は、記録の質で決まります。次の 6 データを、最初の 90 日から毎案件で残します。

  1. 利用したサービスとモデル(バージョンまで)
  2. 入力素材(ファイル名、権利管理元、契約範囲)
  3. 主な指示文と参照素材
  4. 判定結果(採用/要修正/不採用)と作業時間
  5. 修正内容と再判定回数
  6. 確認者、承認者、公開先

3 か月後に見返せる形で残すと、拡張判断が感覚ではなくデータに寄ります。記録が薄い案件を無理に判断材料に入れず、次期に回すのが安全です。記録の保管場所と権限も、90 日の初日に決めておきます。担当者が異動しても参照できる形にしておくと、翌期以降の判断が止まりません。関係者が読める場所を 1 箇所に決め、そこ以外に控えを置かない運用にすると、記録の版ずれも防げます。

よくある質問

90 日で足りない場合はどうしますか

対象業務、素材、承認関係者のどこで詰まったかを分けて確認します。素材整備で遅れた場合は、期間を 30 日足して同じ計画で進めます。承認統合で止まった場合は、既存フローの再設計から入るため、別プロジェクトとして扱います。

概念検証(PoC)の件数はどのくらい必要ですか

同じ条件で 5〜10 件を並列に回すと、再現性の傾向が見えます。件数を増やしても、条件がそろっていなければ判断精度は上がりません。件数より条件固定を優先します。

90 日中にツールを乗り換えても良いですか

概念検証(PoC)中の乗り換えは、記録が分断されるため避けます。判定条件を満たさなかった場合は、第 11 週以降の見直し段階で候補を差し替えます。

3 か月終了後、拡張の予算はどこから確保しますか

継続拡張へ進む案件は、既存の制作費、外注費、修正差し戻し費の 3 費目から振り替えるのが基本です。新規予算は、条件変更再検証を経て 2 期目に判定してから確保する方が承認が通りやすくなります。

情報管理の観点で最初に潰しておくべき論点は何ですか

入力素材の保存期間、企業向け保護機能の有無、生成物の権利帰属、社外公開時の表示義務、この 4 点を第 1 週の時点で情報管理部門と確認します。第 3 週以降にずれ込むと、概念検証(PoC)の結果ごと再判定になるため、順序を前へ寄せます。

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