AI広告は、一直線ではなく何度も戻りながら作る

従来の広告制作は、企画を決め、絵コンテを作り、撮影し、最後に映像を仕上げる流れが一般的でした。前の工程で決めた内容を、次の工程で形にしていく進め方です。

BAKERSが説明するAI制作は、これとは少し違います。まず生成し、使えそうな結果を選び、修正する。その途中でより良い表現が見つかれば、演出や制作方法そのものを見直します。

生成、選定、修正、再設計を繰り返すため、AIは撮影や仕上げの一部を置き換えるだけの道具ではありません。生成中に偶然生まれた表情や構図が、次の演出案につながることもあります。

ただし、出てきた素材をそのまま広告にはしません。登場人物や空間がカットごとに不自然に変わっていないか、前後の場面に違和感がないか、一本の広告としてつながって見えるかを確認します。生成結果は完成品ではなく、広告を作るための素材として扱うという考え方です。

残り半分は、選ぶ・合わせる・仕上げる

AIは大量の画像や映像を作れます。しかし、そのなかから広告として世に出すものを決めるのは人です。

「なぜこの場面を使うのか」「商品やブランドの見え方は適切か」「前後のカットが自然につながっているか」を判断し、人物と空間の一貫性、場面の連続性、アートディレクション、ブランドのトーンをそろえます。さらに、VFXや合成、編集・仕上げを重ねて一本の広告にまとめます。

BAKERSは、生成AIが成果物の半分を作るなら、残りの半分は人の演出、選定、技術管理、AI VFXと合成、編集・仕上げ、広告制作の経験が完成させると話しています。これは工数を計測した比率ではなく、同社が自分たちの制作を説明するために使った表現です。

AWWは、AIらしい派手さより「本当にいそうな人」を選んだ

BAKERSの公式案件ページで期間が2026年5月と記載されたAWWのリニューアルキャンペーンでは、複数の人物、空間、スタイル、感情を一つの映像にまとめています。

この広告で優先したのは、AIらしい派手さではなく、登場人物が本当にその場にいるように見せることでした。人物の肌や表情、照明、色調、影を整え、人物と背景が一つの空間になじんで見えるように調整したと説明されています。BAKERSの公式案件ページには、生成AI、VFX合成、3D、イラストの修正を使ったと記載されています。

AWWリニューアルキャンペーンの公式プロジェクトページ

テラは「本当に街にあったのか」と思わせる現実感を狙った

テラタワーは、実在の街に巨大な広告物が現れたように見せるFOOHの映像です。FOOHとは、現実には存在しない屋外広告を、実際にその場所にあるように見せる表現です。

この形式では、巨大な物体が道路を転がるなど、現実離れした演出もよく使われます。テラが狙ったのは逆で、韓国の街に本当に巨大なタワーが建ったのではないかと思わせる現実感でした。

そのため、建物だけでなく、周囲の人が驚き、見上げ、楽しんでいる様子まで画面に入れています。大きな物体を置くだけではなく、街の景観と人の反応まで含めて一つの場面を作ることで、「本当にあったのでは」と思わせる映像に仕上げています。

BAKERS公式のテラタワーFOOH案件ページ

画像:BAKERS公式のテラタワーFOOH案件ページを引用。案件名と公式動画が掲載されています。

新世界ポイントは、説明を詰め込まず動物キャラクターを前に出した

新世界ポイントのキャンペーンでは、動物キャラクター、音楽、日常の中に少しだけ混ざる空想的な場面を使っています。

ポイントサービスは、機能や特典を順番に説明すると情報が多くなりがちです。この広告は説明を詰め込まず、短い時間で好感を持ちやすい動物キャラクターを前に出しました。

ただ、かわいいキャラクターだけではブランドのメッセージが流れてしまいます。そこで、重要な場面では目に留まる構図や動きを取り入れ、キャラクターの印象と広告として伝える内容の両方を残したと説明されています。

BAKERSは、AIを使うことでキャラクター、背景、動き、音楽の雰囲気を短時間で試し、改善できると説明しています。作れる案が増えるほど、どれを広告に残すかという判断も重要になります。

早くなるのは制作。短くならないのは判断

3つの広告で、AIに任せた役割は同じではありません。

AWWでは、多様な人物と空間を見せながら、実在感を崩さないことが課題でした。テラでは、現実にはない巨大なタワーを、街の中に本当に存在するように見せることが狙いでした。新世界ポイントでは、動物キャラクターの親しみやすさを生かしながら、広告で伝える内容を残すことが課題でした。

どの案件でも、モデル名や生成枚数だけでは制作の中身を説明できません。先にブランドが伝えたいことを決め、生成した素材を選び、登場人物や背景がカットごとに不自然に変わらないよう調整し、一本の映像に仕上げます。この流れまで見て、ようやくAI広告の制作が分かります。

ユン氏は、制作作業は経験を積むほど速くなる一方、何を作るべきかを考える時間は技術だけでは短くできないと話しています。AIで作れる量が増えたからこそ、一つを選ぶ判断の重さはむしろ増しています。

公式動画・公式公開物

BAKERSのAWW公式案件ページには、同社の公式YouTube動画が埋め込まれています。生成AI、VFX合成、3D、イラストの修正を組み合わせた完成映像です。

動画:BAKERS KOREA 公式チャンネルより引用

テラタワーの公式動画は、街の景観、巨大なタワー、周囲の人の反応を一つの場面として見せています。

動画:BAKERS KOREA 公式チャンネルより引用

BAKERS公式のAI広告一覧には、AWW、テラ、新世界ポイントを含む公開案件が掲載されています。本文で扱った3案件は、制作会社がクライアント名を付けて掲載しているものに限りました。

BAKERSのAI広告制作を確認した公式ソース・当事者インタビュー

AIGC TIMESでは、AI広告の制作会社を選ぶ際の確認項目として、作例だけでなく、生成後の修正、制作記録、社内への引き継ぎも挙げています。AIクリエイティブパートナー選定ガイドで、比較時に確認したい項目をまとめています。

関連して読める記事

BAKERSが語った「生成後の仕事」を、依頼側と制作側の両方から掘り下げるための関連記事を挙げます。

よくある質問

Q1. AI広告の制作は、従来の広告制作と何が違いますか。 A. 従来は企画・絵コンテ・撮影・仕上げの順に進みますが、BAKERSはAI広告では生成・選定・修正・再設計を繰り返すと説明しています。生成中に生まれた表現から、演出まで戻して見直す場面が出ます。

Q2. AI広告の制作で、人が担う仕事はどこですか。 A. BAKERSの整理では、演出、使うカットの選定、人物と空間の整合性の管理、AI VFXと合成、編集・仕上げ、そして広告制作の経験を持ち込んだ判断が人の側に残ります。

Q3. AI広告は、AIらしい派手さで作ったほうがよいのですか。 A. AWWの例では逆に、登場人物が「本当にその場にいるように見える」ことを優先したと説明されています。作品の狙いによって、AIらしさを前に出すか、逆に抑えるかを選び分けています。

Q4. FOOHとは何のことですか。 A. FOOHは、現実には存在しない屋外広告を、実在の街に本当にあるように見せる映像表現です。テラタワーの案件では、巨大なタワーが街の中に建ったように見せることを狙っています。

Q5. AI広告の制作会社を選ぶときは、何を確認すればよいですか。 A. 作例の印象だけでなく、生成後の修正、制作記録、社内への引き継ぎ手順まで確認することが挙げられます。詳細はAIクリエイティブパートナー選定ガイドにまとめています。


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