AI編集の社内導入で最初に決めること

AI編集の社内導入は、ツールの契約から始めません。最初に、どの素材を、どの仕事で、誰が扱うのかを決めます。

対象には、承認済み素材のサイズ調整、背景の修正、社内確認用のラフなど、元の素材と結果を比べやすい仕事が向いています。ブランドの中心となるキービジュアルや、権利関係が複雑な素材は、導入初期の検証から外す判断も必要です。

次に、公開前の確認者と、外部制作会社へ依頼する範囲を決めます。社内導入は、すべてを内製するためではありません。社内で判断する仕事と、外部の専門性を使う仕事を分けるためのものです。この切り分けを最初に置くことで、あとから「AI編集で全部やれるはず」という誤った期待を社内に生まないで済みます。

AI編集社内導入ロードマップ

AI編集の対象業務、準備、3か月・6か月の進め方をまとめたAIGC TIMESの無料メソッド。出典:AIGC TIMES「AI編集社内導入ロードマップ」

3か月導入で行うこと

3か月導入の目的は、社内でAI編集を試し、自社で扱える素材と仕事を判断することです。本番公開物を一気に置き換える計画ではありません。あくまで「どこまで自社で扱えるか」の輪郭を描く段階です。

1か月目:対象と利用範囲を決める

扱うブランド素材、掲載先、現在の制作手順、承認の流れを確認します。そのうえで、試す仕事、候補となるツール、入力してよい素材、確認する担当者を決めます。

この段階で残すのは、対象素材の一覧、利用範囲、候補ツール、初期ルールです。候補ツールの選び方の詳細はAI画像編集ツールの選び方にまとめています。

2か月目:既存素材で小さく試す

承認済みの素材を使い、背景、サイズ、構図、軽い修正など、範囲を限って試します。生成した結果だけでなく、指示(プロンプト)、採用した案、不採用にした案、人が直した箇所を記録します。

制作物の見栄えだけでなく、同じ手順をもう一度行えるかも確認します。同じ結果を再現できないと、担当者が変わった瞬間に社内知として消えてしまうためです。

3か月目:使える範囲を社内で共有する

検証結果をまとめ、社内で進められる仕事、追加確認が必要な仕事、外部へ依頼する仕事を分けます。初期導入レポート、掲載先ごとの展開方法、外部制作会社へ渡す情報を整理します。

3か月目の終了時には、AI編集を続けるかどうかだけでなく、どの仕事なら続けられるのかを説明できる状態を目指します。

6か月導入で行うこと

6か月導入では、3か月目までに確認した利用範囲をもとに、社内で継続して扱うための手順を整えます。試験段階から運用段階へ橋を渡す期間です。

1〜2か月目:導入設計

対象素材、導入部署、利用するツール、確認者、利用範囲を決めます。素材を入力する際のルール、社外へ出す前に必ず通す確認項目も用意します。

3〜4か月目:実際の素材で検証

商品やサービスの素材を使い、修正案、掲載先ごとの展開、社内確認用の素材を継続して作ります。生成結果、修正指示、確認結果を同じ形式で記録します。記録の粒度はAI生成コンテンツの制作記録にも記載しています。

5か月目:承認と素材管理を整える

誰が何を確認するのか、どの素材を社内確認に留めるのか、外部制作会社へ何を共有できるのかを決めます。完成データだけでなく、元素材、生成結果、判断理由、再編集に必要なデータの保存方法も整えます。

このタイミングで、公開前の承認手順が実務に耐えるかも点検します。承認の6段階についてはAI編集の承認フローを参照してください。

6か月目:運用を続ける条件を決める

検証結果をまとめ、続ける仕事、見直す仕事、外部支援が必要な仕事を決めます。社内向けの運用ガイドと、次に試す検証テーマや研修の候補も整理します。

3か月と6か月の違い(比較表)

3か月導入は、自社で使える範囲を見つけるための計画です。6か月導入は、見つけた範囲を複数の担当者が同じ手順で扱えるようにする計画です。

比較項目 3か月導入 6か月導入
主な目的 利用範囲を確かめる 継続運用の手順を整える
対象 限定した素材と仕事 実際の制作と複数の担当者
主な成果物 初期ルール、検証記録、導入レポート 素材管理、承認手順、運用ガイド
判断の焦点 どの仕事で使えるか 誰がどの手順で続けるか
外部制作会社との関係 依頼範囲の輪郭を引く 共有と受け渡しの手順を固める
終了時の姿 自社で扱える仕事の一覧 会社として説明できる運用体制

3か月導入で「使える範囲」を見つけたあと、6か月導入で「使える手順」を整える、と続けて設計する会社もあります。同じ論点を二度なぞらないよう、3か月導入の記録を6か月導入の設計材料として引き継ぐことが要点です。

3か月導入が合う会社

3か月導入は、社内でAI編集をほとんど試していない場合や、最初に一つの部署と素材で可能性を確かめたい場合に向いています。

導入前から細かな運用ルールを作り込むのではなく、実際の結果を見て、自社に必要な確認項目を見つけたい会社にも合います。予算や承認の兼ね合いで「まず小さく試してから広げたい」という意思決定パターンとも相性が良い設計です。

6か月導入が合う会社

6か月導入は、すでに一部の担当者がAI編集を試しており、複数の担当者や部署へ広げたい場合に向いています。

また、公開物への利用、外部制作会社との共有、素材の保存まで含めて、会社として説明できる手順を作りたい場合も6か月の設計が必要です。監査や情報開示、代理店との契約更新のタイミングと重なる場合、6か月の設計が現場と経営の両方に耐えます。

導入診断の観点はブランド企業の生成AI導入診断に整理しています。

導入後に社内へ残すもの

AI編集を社内へ入れるときは、完成した画像や動画だけを残しません。AIGC TIMESのロードマップでは、次の記録を社内へ残す考え方を示しています。

  • 元の素材
  • 生成した結果
  • 修正の指示
  • 採用した案と理由
  • 不採用にした案と理由
  • 掲載先ごとのデータ
  • 再編集に必要な元データ

これらが揃えば、担当者が変わっても前回の判断を確認できます。AI編集を個人の試行で終わらせず、次の制作へ使える情報として残せます。制作記録の残し方はAI生成コンテンツの制作記録に別途まとめています。

つまずきやすい判断ポイント

3か月と6か月のどちらを選んでも、途中で判断を迷いやすい場面があります。

  • ツールの決定を先に走らせない。 対象素材と利用範囲を先に決めないと、途中でツールを乗り換える手戻りが発生します。
  • 中心素材から始めない。 キービジュアルや広告本編は最初に扱わず、社内確認用のラフや掲載先ごとの展開素材から始めます。
  • 記録の形式を後から変えない。 検証記録の形式を途中で変えると、同じ論点を二度検証することになります。1か月目に決めた形式を6か月目まで通します。
  • 外部制作会社との共有範囲を曖昧にしない。 どの素材とデータを共有できるかを、素材ごとに書き分けます。曖昧なまま進めると、公開前の差し戻しが増えます。

よくある質問

Q1. 3か月と6か月、どちらから始めるべきですか? A. 社内でAI編集をほとんど試していない場合は3か月から始めます。すでに一部の担当者が試しており、複数の担当者や部署へ広げたい場合は、6か月の設計で承認・素材管理・外部共有までを整えます。

Q2. 3か月で終わらせて、そのまま6か月に接続できますか? A. 接続できます。3か月導入で得た対象素材の一覧、初期ルール、検証記録を、6か月導入の1〜2か月目の設計材料として引き継ぎます。同じ論点を二度検証しないための引き継ぎ形式を、3か月目の終了時に整えます。

Q3. ツールは最初に決めた方が良いですか? A. 対象素材と利用範囲を決める前にツールを確定させないことをおすすめします。素材によって向くツールが変わるためです。ツールの比較観点はAI画像編集ツールの選び方に整理しています。

Q4. 社内のどの部署から始めるのが良いですか? A. 承認済み素材のサイズ調整、背景の修正、社内確認用のラフなど、元の素材と結果を比べやすい仕事を持つ部署から始めます。ブランドの中心となるキービジュアルや、権利関係が複雑な素材を扱う部署は、導入初期の検証から外す判断が現実的です。

Q5. 外部制作会社との関係はどう整理しますか? A. 社内で判断する仕事と、外部の専門性を使う仕事を最初に分けます。3か月導入では依頼範囲の輪郭を引き、6か月導入で共有できる素材とデータの範囲、受け渡し手順を固めます。「AI編集で全部内製する」という設計にはしません。

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