AI編集の内製化とは何か
AIGC TIMESでは、AI編集の内製化を「ブランド素材の修正、展開、確認、差し替えといった判断寄りの仕事の一部を、担当者が社内で試して結果を残せる状態にすること」と定義しています。制作の全工程を社内へ移す意味ではありません。
対象になるのは、承認済み素材の軽微な直し、掲載先ごとのサイズ違い、企画の方向を比べるためのラフ、外部発注の前段整理など、判断が短い時間で完結する仕事です。撮影、CG、VFX、音、権利処理を伴う仕上げは、専門チームが持つ設備と経験に依存するため、内製化の主対象から外します。
導入時に決めるのは、使うツールだけではありません。扱う素材、変更してよい範囲、確認する担当者、保存する記録の四つを揃えると、担当者個人の試行が社内の仕事に定着します。ツール選定はこの四点の後、対象素材と変更範囲に合うサービスを選ぶ順序が扱いやすいです。

AI編集の対象業務、準備、三か月・六か月の進め方をまとめたAIGC TIMESの無料メソッド。出典:AIGC TIMES「AI編集社内導入ロードマップ」
内製化を始める前に決める四つの前提
内製化の設計で最初に固めるのは、次の四点です。
一つ目は対象素材の範囲です。承認済みの完成品を触るのか、社内検討用のラフだけを扱うのかで、必要な確認手順もツールの選び方も変わります。二つ目は変更してよい範囲です。商品形状、ロゴ、人物の顔、色設計など、触ってはいけない要素を先にリスト化しておきます。
三つ目は担当者の役割です。試作を出す人、社内で確認する人、承認する人を分けます。四つ目は記録の残し方です。修正指示、生成結果、確認者、確認日、公開可否の判断を一つの表に残せば、後から振り返れます。ここまで決めてから、対象素材と変更範囲に合うツールを選びます。
1. 社内確認用の素材を作る
最初に取り組みやすいのは、外部へ公開する完成品ではなく、社内で方向を決めるための素材です。新商品の見せ方や企画の構成を、言葉だけでなく画像や短い動画のラフに落とし、複数案を並べて比べます。
確認用であっても、入力してよい素材と共有できる範囲は先に決めます。未発表の商品情報、契約中の人物写真、他社ブランド素材などを扱う場合、利用するサービスのデータ取り扱い設定と、社内の情報管理ルールを事前に確認します。試作の目的、使った素材、確認した担当者、判断結果を一枚の記録に残すと、次の企画で再利用できます。
2. 承認済み素材の軽い修正を試す
承認済み素材の余白を広げる、背景の一部を直す、不要な要素を消す、傾きを補正するといった修正を、AI編集ツールで試します。商品やロゴを作り直すのではなく、変更する範囲を狭く設定するのが導入初期の考え方です。
元画像と修正後を並べ、商品形状、文字、人物の顔、コーポレートカラーが変わっていないかを確認します。生成にかかった時間だけでなく、人が直した箇所と、確認に費やした時間も記録に残します。工数の内訳が見えると、AI編集で減った時間と、人の判断が増えた時間が分かれ、次の対象素材を選びやすくなります。
3. 掲載先に合わせて展開する
同じ素材でも、公式サイト、スマートフォン表示、店頭画面、SNS、動画広告では必要な縦横比が異なります。承認済みの元素材を起点に、掲載先に合わせた余白や構図を試します。
単なるサイズ変更で済むのか、被写体の位置を動かす再編集が必要なのかを、掲載先ごとに分けて考えます。商品や人物の位置を大きく動かす場合、元の承認範囲を超えていないかを担当者が判断します。掲載媒体の仕様書、既定の余白、文字の配置ルールを一枚の資料にまとめておくと、担当者が変わっても同じ判断ができます。
4. 表現の方向を比べる
企画の早い段階で、背景、光の当て方、構成、雰囲気の異なる案を短時間で複数作り、社内で比較します。完成品を作るためではなく、どの方向で本制作へ進むかを決めるための使い方です。
比較するときは、案の数だけを増やしません。今回の企画で伝えたいこと、守るべき商品情報、採用しない表現を先に決めておくと、判断が「なんとなく良さそう」で終わりにくくなります。採用案と不採用案の判断理由をひと言だけ残しておくと、次の企画で参照できます。
5. 外部制作会社へ渡す前に整理する
撮影や本格的な映像制作を依頼する前に、社内で方向確認用の素材を作ります。依頼時には、参考にしてほしい点と、専門チームに作り直してほしい点を分けて伝えます。
AIで作ったラフを完成見本として渡すのではなく、企画意図、商品の扱い、必要な掲載形式、避けたい表現を共有する資料として使います。外部パートナーとの役割が明確になれば、社内で無理に最終品質まで仕上げる必要はありません。発注前の資料が整うと、初回打ち合わせで方向がぶれず、リテイクの回数を減らせます。
社内で行わないと決める仕事
内製化では、社内で扱う仕事と同時に、扱わない仕事も決めます。ブランドの中心となるキービジュアル、大規模な撮影、専門的なCGやVFX、権利関係が複雑な素材、放送・広告出稿を伴う映像などは、外部の専門チームへ依頼する選択肢を残します。
仕事は「社内」「外部」の二択でなくても構いません。社内でラフと判断基準を用意し、外部が仕上げと品質管理を担うなど、共同で進める範囲も設定できます。分担図を先に描き、案件ごとに当てはめる運用にすると、毎回一から議論せずに済みます。

社内で試す仕事、外部へ任せる仕事、共同で進める仕事を整理した図。出典:AIGC TIMES
三か月で導入する流れ
AIGC TIMESのロードマップでは、三か月の導入を次の順で整理しています。
一か月目:対象を決める
ブランド素材、掲載先、現在の制作手順、承認の流れを棚卸しし、AI編集を試す対象を選びます。対象素材リスト、扱ってよい範囲、候補ツール、初期ルールを一枚にまとめます。この段階ではツールの契約は最小限にとどめ、試用版で十分です。
二か月目:小さく試す
既存素材を使い、背景、サイズ、構図など変更する要素を限定して試します。修正指示、生成結果、比較した案、確認結果、確認者、確認日を、決まった様式で記録します。案件を絞ることで、記録の抜け漏れが減り、後から振り返りやすくなります。
三か月目:社内で共有する
検証結果を整理し、社内で扱える範囲、追加確認が必要な範囲、外部支援が必要な範囲を分けます。初期導入レポートと手順書を残し、担当者個人の試行から社内運用へ移せるかを判断します。三か月目の判断次第で、対象素材の拡大、担当者の追加、外部パートナーの再選定へ進みます。
三か月で終わらせる必要はありません。三か月目の時点で判断材料が揃わなければ、対象素材と変更範囲を絞り直し、もう一度小さく試す設計に戻します。担当者一人分の記録だけで拡大を判断すると、他の案件に当てはめたときに再現できないことがあります。二〜三案件を通した記録が揃った段階で、初めて社内運用としての標準化を検討します。
よくある質問
AI編集の内製化と、AI編集の社内導入は同じ意味ですか?
ほぼ同じ意味で使われますが、本記事では「内製化」を、社内で扱う仕事と外部へ任せる仕事を分ける分担設計の意味で使っています。「社内導入」はツール契約や研修を含む広い意味で使われることが多いため、対象範囲がやや異なります。
何人くらいの体制で始めるのが現実的ですか?
初期は一人から三人で構いません。試作を出す担当者、社内で確認する担当者、承認する立場の三役が最低限必要です。同じ人が兼務しても始められますが、確認と承認は別の人が担当した方が、後で振り返りやすくなります。
内製化を進めると外部の制作会社は不要になりますか?
不要にはなりません。撮影、CG、VFX、長尺映像、多媒体展開、権利処理が発生する案件は、専門チームの設備と経験が必要です。社内で試作と方向整理を担い、外部で仕上げと品質管理を担う分担にすると、双方の役割が明確になります。
どのツールから試すのが良いですか?
対象素材と変更範囲を決めてから選びます。承認済み画像の軽微な修正が主なら画像編集系、掲載先ごとの動画展開が主なら動画編集系、企画段階のラフ比較が主なら生成系が候補になります。ツールを先に決めると、対象素材と合わずに定着しないことがあります。
導入の判断は誰が行うのが良いですか?
対象素材を持っているブランド担当と、承認の権限を持つ責任者の二者で判断するのが扱いやすい形です。情報システム部門と法務部門は、データ取り扱いと権利処理の観点で早い段階から関わってもらうと、後で差し戻しが起きにくくなります。
参照した情報
- AIGC TIMES「AI編集社内導入ロードマップ」 — 対象業務、準備、三か月・六か月の進め方
- AIGC TIMESの無料メソッド一覧 — 社内導入、研修、パートナー選定、ブランドコミュニケーションの資料
- AI編集ガイド — AI編集の定義、対象範囲、既存編集との違い
- AI編集ツール選定 — 対象素材別のツール比較
- AI編集の承認フロー — 承認・記録・差し戻しの運用
- ブランド企業のAI品質ゲート — 公開前チェックの設計
- ブランド企業のAIチーム編成 — 社内担当と外部パートナーの役割
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