ブランドコミュニケーションとは
ブランドコミュニケーションとは、広告、商品、店舗、Webサイト、映像などを使って、ブランドの考え方や商品の価値を顧客へ伝える活動です。制作物を作ることに加え、企画を立て、内容を確認し、公開後も一貫した表現を続ける仕事まで含みます。
この一連の仕事に生成AIを取り入れるときは、ツールの機能から考え始めるより、自社で時間がかかっている工程や、複数案を比べたい工程を探す方が導入範囲を決めやすくなります。ブランド全体の考え方を先に整理したい場合は、ブランドコミュニケーション3.0の考え方を参照してください。
生成AI活用を設計する5つの領域
1. 企画を画像や短い映像にする
会議で出た案を画像や短い映像にすると、文章だけで話し合うより、参加者が具体的な違いを比べやすくなります。新商品の発表であれば、商品の見せ方や背景、映像の流れを複数案にして検討できます。
この段階で必要なのは、公開できる完成品ではありません。企画の方向性を選ぶための試作です。細部を作り込む前に、企画の意図が伝わるかを確かめます。
2. 本制作の前に表現案を比べる
企画の方向性が決まったら、同じ条件で複数案を作り、どの表現がブランドや商品に合うかを比べます。生成AIを使えば、本制作に入る前の段階で、比較できる案を増やせます。
ただし、何を変えてよいかは先に決めておきます。商品の形や表示内容を正確に見せる必要がある場合は、商品写真をそのまま使い、背景だけを変える方法があります。商品そのものまで生成し直すと、実物とは異なる形や表示が混ざるおそれがあります。
案の数を増やすこと自体を目的にせず、「商品の情報が正しいか」「ブランドらしさを損なっていないか」「掲載先に合っているか」といった採用基準を決めてから比較します。採用基準を運用に落とす手順は、ブランド制作の品質ゲート設計に整理しています。
3. 画像や動画を制作・編集する
採用する方向性が決まった後は、画像や動画の生成、背景の変更、不要なものの削除、縦横比の調整などに生成AIを使えます。静止画をもとに短い映像を作ることもできます。
一方、生成した素材をそのまま公開できるとは限りません。人物や商品の形が場面ごとに変わる、文字が崩れる、映像の前後がつながらないといった問題が起こり得ます。使える素材を選び、必要な箇所を修正し、映像や音声を組み合わせる作業は残ります。
Coca-Colaは2025年11月、同年の年末キャンペーンで公開した新作映像3本のうち、2本に生成AIを使ったと発表しました。AI映像を制作したのはSecret LevelとSilverside AIです。同社は、カメラワークや物の動き、物語のつながり、登場する動物の姿を場面ごとにそろえるため、細かな調整を行ったと説明しています。

画像:Coca-Cola「Refresh Your Holidays」公式発表より引用。Secret LevelとSilverside AIが2本のAI映像を制作したことを確認できます。
4. 公開前に商品とブランドの情報を確認する
完成度が高く見える画像や動画でも、商品やブランドを正しく伝えているとは限りません。公開前には、商品の形や表示内容、価格や注意書き、第三者の権利、過去の発信との整合性を確認します。
確認内容に応じて担当者を分けることも必要です。制作担当者は画像や動画の不具合を見つけられても、商品情報や契約条件まで判断できるとは限りません。商品担当者、ブランド担当者、法務などが、それぞれの担当範囲を確認します。
使用したサービス、入力した素材、採用した案と不採用にした案、確認者を記録しておくと、公開後に問題が見つかった場合も制作過程を確認できます。次の制作で同じ確認を繰り返さないためにも役立ちます。承認記録の残し方は、ブランド制作のAI承認記録の取り方にまとめています。
5. 掲載先や対象地域に合わせて作り分ける
一つの完成素材を、Webサイト、店頭、縦型動画などへ展開する場面でも生成AIを使えます。単純に縦横比を変えるだけでは、商品が画面から切れたり、重要な情報が読みにくくなったりします。掲載先ごとに構図を調整し、それぞれの完成物を確認します。
Coca-Colaは2025年の年末キャンペーンに関する発表で、生成AIを使う利点の一つとして、視聴者や地域に合わせた複数版を素早く制作できることを挙げました。これは制作方法について同社が説明した内容であり、同キャンペーンで実際に何種類の地域別映像を公開したかを示す数字ではありません。1本の素材から掲載先ごとに展開する具体的な設計は、1素材複数用途の設計を参照してください。
Coca-Colaの公式事例で確認できること
年末映像では、人が企画と方向性を決めた
Coca-Colaは、2025年のAI映像でも、人が企画の目標と方向性を決めたと説明しています。映像に使われた音楽も、実際の演奏者と歌手が収録しました。生成AIだけで広告全体を完成させたのではなく、人が企画を主導し、AIを制作に使った事例です。
公式YouTubeでは、AI映像「Fantastical」の制作過程を公開しています。完成映像だけでは分からない、制作時の試行や調整を確認するための動画です。
動画:Coca-Cola 公式チャンネルより引用
Silverside AIは公式事例ページで、中核となる5人と、各分野の専門家20人超が複数版の制作に携わったと説明しています。この人数はSilverside側が公表した制作体制であり、キャンペーン全体の参加人数ではありません。

画像:Silverside AI「Coca-Cola Holidays 2025」公式事例より引用。
Project Fizzionでは、制作時の判断を別の制作物にも反映する
Coca-Colaは2025年5月、Adobeと共同開発したProject Fizzionを発表しました。発表時点ではパイロット段階です。
Fizzionは、IllustratorやPhotoshopなどでデザイナーがレイアウトや文字を調整した内容を「StyleID」として記録し、別のサイズや地域向けの制作にもブランドのルールを反映しやすくする仕組みです。Coca-Colaは、200を超えるブランドを200を超える国で展開する制作環境を背景に、ブランドごとの表現を保ちながら制作を増やすための仕組みとして説明しています。
ただし、200を超えるすべてのブランドや国でFizzionが使われているという意味ではありません。一般提供の開始時期や、現在の導入範囲も、今回確認した公式発表では分かりません。
5領域ごとの確認項目
生成AIを使った結果は、見た目の完成度だけで評価しません。領域ごとに、次の点を確認します。
- 企画:案の違いが伝わり、企画の方向性を決められたか
- 比較:同じ条件で案を比べ、採用理由を説明できるか
- 制作:商品や人物、文字、映像のつながりに誤りがないか
- 確認:商品情報、ブランド表現、第三者の権利、契約条件を担当者ごとに確認できるか
- 展開:掲載先ごとに必要な情報と構図を保てたか
品質、確認時間、修正回数も記録します。生成AIを使う前より案が増えても、確認や修正に時間がかかりすぎれば、業務として続けるのは難しくなります。
生成AIだけでは決められないこと
生成AIは、企画の目的や採用基準を決められません。商品を正確に見せる必要があるのか、どこまで表現を変えてよいのか、誰が公開を承認するのかは、ブランド側で決めます。
サービスやモデルが更新されると、同じ入力でも結果や利用条件が変わる場合があります。一度よい結果が出ても、別の商品や掲載先で同じ品質になるとは限りません。継続して使う場合は、使用したサービス、モデル、設定、入力素材、修正内容を記録し、更新後に再確認します。
権利と運用で確認できること、できないこと
Coca-Colaの公式発表から確認できるのは、同社が公表した映像の本数、制作会社、人とAIの役割、Fizzionの仕組みや発表時の提供段階です。一方、使用したモデル名、生成回数、制作費、入力素材ごとの権利処理は公表されていません。
自社で生成AIを使う場合は、入力素材を利用できるか、契約プランで生成物を予定した用途に使えるか、第三者の権利を侵害していないかを、案件ごとに確認します。公式事例があることだけで、自社の制作物にも同じ利用条件が適用されるわけではありません。
最初に決める3つのこと
初めて導入する場合は、ブランドコミュニケーション全体を一度に変えず、次の3点を決めます。
- どの制作物で試すか
- 生成AIを使う作業はどこまでか
- 誰が何を確認し、公開を決めるか
最初の対象には、同じ作業が繰り返し発生し、元の素材と結果を比べやすい仕事が向いています。たとえば、既存の商品写真を使った背景案の比較や、同じ素材から縦型と横型の案を作る作業です。
一方、商品そのものを実物の代わりに生成する、重要なブランド表現を全面的に変える、権利を確認できない素材を使うといった仕事は、初回の検証には向きません。変更する範囲を絞り、品質、確認時間、修正回数を記録したうえで、次の制作へ広げるかを判断します。
公式情報
- Coca-Cola 2025年年末キャンペーンの公式発表 — 映像の構成、制作会社、人とAIの役割を確認できます。
- The Coca-Cola Company Introduces Fizzion — Fizzionの仕組み、Adobeとの共同開発、発表時の提供段階を確認できます。
- Silverside AI「Coca-Cola Holidays 2025」 — Silverside側が公表した制作体制を確認できます。
- Secret Level公式サイト — Coca-Cola公式発表で名前が挙がった、もう一方のAI映像制作会社です。
- Coca-Cola公式YouTube「Holidays are Coming, Behind the Scenes, Fantastical」 — AI映像「Fantastical」の制作過程を確認できます。
- Adobe「Coca-Cola Fizzion」共同発表 — StyleIDの仕組みをAdobe側からも確認できます。
- Coca-Cola 「Refresh Your Holidays」ブランドページ — 2025年年末キャンペーンの公開先を確認できます。
よくある質問
Q1. 生成AIをブランドコミュニケーションのどこから使い始めればよいですか。 既存の商品写真を使った背景案の比較や、同じ素材から縦型と横型を作る作業のように、繰り返し発生し、元素材と結果を比べやすい仕事から試すのが向いています。商品そのものを生成し直す作業は、初回の検証には含めません。
Q2. Coca-Colaは2025年の年末キャンペーンで、生成AIをどこまで使いましたか。 公開した3本の映像のうち、2本にSecret LevelとSilverside AIによる生成AIが使われました。企画の目標と方向性は人が決め、音楽は実際の演奏者と歌手が収録したと発表されています。
Q3. Project Fizzionはすでに使えますか。 発表時点ではパイロット段階です。一般提供の開始時期や、現在の導入範囲は、今回確認した公式発表では分かりません。200を超えるブランドや国のすべてで使われているという意味でもありません。
Q4. 生成AIを使った制作物は、そのまま公開できますか。 そのまま公開できるとは限りません。人物や商品の形が場面ごとに変わる、文字が崩れる、映像の前後がつながらないといった問題が起こり得ます。制作担当者に加え、商品担当者、ブランド担当者、法務が担当範囲を分けて確認する運用が必要です。
Q5. 生成AIの結果は、何を基準に評価しますか。 見た目の完成度だけでは判断しません。企画で案の違いが伝わったか、比較で採用理由を説明できるか、制作で商品や文字にずれがないか、確認で担当者ごとに項目を確認できたか、展開で掲載先ごとに情報と構図を保てたかを、領域別に見ます。品質、確認時間、修正回数も併せて記録します。
ブランドのどこで生成AIを使うか整理する
企画、制作、確認、展開のどこから始めるかを自社で整理したい場合は、AIGC TIMESの無料メソッド「ブランドコミュニケーション3.0 活用大全」を利用できます。14の実装領域と100を超える活用箇所から、検討する範囲を確認できます。
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