「Paris' Famous Starwash」とは

「Paris' Famous Starwash」は、Carl's Jr.が約20年前に公開したパリス・ヒルトン出演CMを、新たな表現で作り直した企画です。元のCMで知られる洗車場の設定を引き継ぎながら、複数のパリス・ヒルトンが現れる場面や、実写だけでは作りにくい映像を加えています。

CKE Restaurantsの公式LinkedIn投稿は、この企画をパリス・ヒルトン本人と先端技術を組み合わせたAI広告と説明しています。Native Foreignの公式事例ページも、Carl's Jr.の大胆で遊び心のあるブランドイメージに合わせた作品として紹介しています。過去のCMをそのまま再現するのではなく、本人の出演と生成映像を組み合わせ、約20年後の広告として作り直しました。

Native Foreignが公開したParis' Famous Starwashの事例ページ

作品の概要を掲載する公式事例。出典:Native Foreign(引用)

パリス・ヒルトン本人を撮影した理由

制作側の舞台裏動画では、パリス・ヒルトン本人を撮影したことが明かされています。本人が登場する場面まで生成で済ませた広告ではありません。

Kleverov氏は、パリス・ヒルトン本人の存在感を作品の中心に据えるため、本人を撮影したと説明しています。そのうえで、洗車を担う複数の分身や、実写だけでは作りにくい場面を生成映像で加えました。著名人の起用と生成AIを二者択一にせず、本人と分身の役割を分けた点が、この企画の特徴です。

本人撮影を残す判断は、単に「AIを最大限使う」ことを目的にしなかったという編成上の意思決定でもあります。ブランドが持つ資産の中で、本人の存在感そのものが最大の資産であるとき、本人の実写を残す設計は、生成AI時代でも変わりません。生成AIは本人の代替ではなく、本人の映像を軸にした表現を広げる補助として組み込まれました。

AIの分身が担った場面

作品には、パリス・ヒルトンの姿をもとにした複数の分身が登場し、本人に代わって洗車を進めます。生成AIは本人を広告から外すためではなく、複数の分身を同時に登場させ、実写だけでは難しい演出を加えるために使われました。

ただし、公式情報からは、どのカットが実写で、どの部分が生成なのかを一場面ずつ判定できません。映像を見ただけで制作方法を決めつけず、制作側が明かした範囲にとどめる必要があります。

編集側で確認できる範囲では、次の3点が「AI分身が担った領域」と読み取れます。第一に、同一人物が複数同時に登場する場面。第二に、視覚的な誇張(現実の物理法則を外れた動きや背景)。第三に、本人のスケジュール上、追加撮影が難しい部分の補完です。いずれも、公式の言及と映像から推定できる範囲であり、断定はできません。

100人超が参加した制作体制

Kleverov氏は公式の舞台裏動画で、100人を超える人が制作に参加したと説明しています。配役、衣装、カットごとの試作、何度も行った修正など、多くの人の判断を重ねた企画でした。

また、Kleverov氏の公式LinkedIn投稿では、独自の制作工程にFreepik、Luma AI、ElevenLabsを組み込んだと説明しています。ツール名は公開されていますが、どのサービスがどのカットを担当したのか、すべての工程が詳しく開示されているわけではありません。

この事例から分かるのは、生成AIを使った広告でも、企画、撮影、演出、案の選定、修正、仕上げに人の仕事が残ることです。100人超という数字は制作側の説明であり、第三者が監査した人数ではありません。

自社で類似の企画を組む担当者にとって、この規模感は参考になります。生成AIを使えば工数が一桁減るという説明を鵜呑みにせず、制作会社との対話の中で、実際の関与人員、撮影日数、試作サイクル数、承認回数を具体的に確認することが望まれます。

Nik Kleverov氏が公開した制作舞台裏動画

監督本人が公開した制作舞台裏動画のページ。出典:Nik Kleverov/YouTube(引用)

使用ツール(Freepik/Luma AI/ElevenLabs)の役割

公式LinkedIn投稿でKleverov氏が挙げた3つのツールは、生成AI領域で異なる役割を担う代表格です。それぞれの位置づけを、公式情報の範囲で整理します。

  • Freepikは、画像・動画生成モデルの提供と、素材ライブラリを組み合わせたクリエイティブ制作基盤として位置づけられています(2026年4月にMagnificを統合してリブランド)
  • Luma AIは、動画生成モデルRayシリーズを核に、ブランドキャンペーン制作での採用実績を積んできたスタジオです
  • ElevenLabsは、ボイス生成・音声合成の代表的なサービスで、多言語ローカライズや吹替でも採用が進んでいます

ただし、制作側が公表しているのはツール名までであり、具体的にどのカットのどの工程で使われたかは開示されていません。「Freepikで画像を生成、Luma AIで動画化、ElevenLabsで声を作った」という単線的な工程を勝手に補うと、事実誤認になります。

動画:Nik Kleverov 公式チャンネルより引用

公式動画で制作の舞台裏を見る

監督のNik Kleverov氏が、本人撮影と生成映像をどのように組み合わせたかを解説しています。2026年2月12日に公開された82秒の動画です(上部埋め込み参照)。動画では、撮影現場の様子、複数分身のカット構成、修正作業のカット割りが短時間で紹介されており、記事本文で確認できない映像領域を補うことができます。

著名人を起用するAI広告で確認したいこと

この事例をブランドの制作実務へ置き換えると、確認事項は、本人が撮影に参加する範囲、分身を作る許諾、声の扱い、公開する媒体と期間の4つに分かれます。

Carl's Jr.の事例では本人出演が明らかになっています。一方、契約条件や承認手順は公開されていません。自社で同様の企画を検討するときは、この非公開部分を制作前に定めることになります。

具体的には、以下の4項目を、制作会社との初回打ち合わせで文書化しておくと、後工程での差し戻しが減ります。

  • 本人撮影と生成表現の境界線(どのカットまで本人が入るか)
  • 分身生成の許諾範囲(表情、姿勢、露出、演出上の制限)
  • 声の扱い(合成音声を使うか、本人録音のみか、多言語展開時の合成の可否)
  • 公開媒体・地域・期間(SNS二次利用、地域別再編集、契約更新条件)

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公式情報で分からないこと

制作費、制作期間、実写と生成映像の比率、各サービスを使ったカット、肖像や声に関する契約条件、公開後の広告効果は公表されていません。また、100人超という数字は制作側が関わった人の総数として説明したもので、従来の撮影と比べて人数が増えたか減ったかは判断できません。

本記事で確認できるのは、パリス・ヒルトン本人を撮影したこと、AIの分身を併用したこと、100人超が関わったと制作側が説明していること、複数の生成AIサービスを使ったことです。

本人出演と生成映像を分けて考える

Carl's Jr.の「Paris' Famous Starwash」は、パリス・ヒルトン本人をAIに置き換えた広告ではありません。本人の出演を作品の中心に残し、生成AIの分身を使って、現実の撮影だけでは作りにくい場面を広げました。

制作には100人を超える人が関わったと説明されており、生成AI広告が必ずしも少人数の制作になるわけではありません。著名人とAIを組み合わせる場合は、生成した人物だけでなく、本人が出演した場面や、制作チームが撮影、試作、修正をどのように重ねたかも確認する必要があります。

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ブランドが生成AIを本番広告に採用する事例と、周辺の実務論点をあわせて確認できます。

FAQ

Q1. パリス・ヒルトンはこの広告に本人として出演していますか。 A. はい。Native ForeignのCCO Nik Kleverov氏は公式の舞台裏動画で、本人を実際に撮影したと説明しています。本人をAIに置き換えた広告ではありません。

Q2. 分身は完全にAIで作られていますか。実写と生成の比率は公表されていますか。 A. 複数の分身は生成AIで作られたと公式に説明されていますが、実写と生成映像の比率、各カットの制作方法は公表されていません。映像を見ただけで一場面ずつ判定することはできません。

Q3. 使用された生成AIサービスは何ですか。 A. Kleverov氏の公式LinkedIn投稿で、Freepik、Luma AI、ElevenLabsの3サービスが挙げられています。ただし、各サービスがどのカット・工程を担ったかは開示されていません。

Q4. 制作規模は本当に100人を超えるのですか。 A. 100人超という人数は、Kleverov氏本人の説明に基づく数字であり、第三者が監査した人数ではありません。ただし、公式舞台裏動画からも、企画、撮影、演出、試作、修正に多くの人が関わったことが確認できます。

Q5. 契約条件や広告効果は公開されていますか。 A. 契約条件(肖像権、音声権、公開媒体・期間)や、公開後の広告効果(視聴数、想起、売上への影響)は、本稿確認時点で公表されていません。自社で類似企画を検討する際は、これらは制作前に個別に定めることになります。

Carl's Jr.「Paris' Famous Starwash」を確認した公式情報


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