Chad Nelson(チャド・ネルソン)とは何者か
OpenAIは2026年7月16日の公式記事で、Chad Nelson氏をCreative Specialistと紹介しています。本人も同年6月公開の公式動画で同じ役職を名乗っています。
本人は動画で、Codexがアートディレクターやクリエイティブディレクターのような協働相手になり得ると説明しています。「Creative Specialist」はOpenAIでの正式な役職名ですが、「アートディレクター」「クリエイティブディレクター」はCodexとの協働を説明するために使われた比喩です。日本語の記事や翻訳で「クリエイティブディレクター」と紹介される場合がありますが、公式記事と本人の自己紹介は一貫してCreative Specialistで書かれています。
Nelson氏は画像を作るだけでなく、登場人物や物語、企画の見せ方まで考えてきました。公式情報を時系列で見ると、AIを使う範囲が画像生成から物語づくり、さらにブランド企画へ広がったことが分かります。本人がAIに任せた作業と、人の側に残した判断を分けて読むと、Creative Specialistという役職が具体的に何をする仕事かが見えてきます。

画像:AIGC TIMES編集部(OpenAI公式情報をもとに作成)
2022年、DALL·E 2を「絵筆」と呼んだ
OpenAIは2022年7月14日、DALL·E 2を制作へ取り入れた作り手を紹介する公式記事を公開しました。Nelson氏は、性格や感情を持つ森の生き物を100体以上作った人物として掲載されています。
本人はDALL·E 2を高度な絵筆にたとえながら、絵筆と同じように作り手が導かなければならないと説明しました。技術がどれほど高性能でも、何を作るかを決め、作品の出発点を与えるのは人だという考え方です。
この時点での中心は、画像を大量に出すことではありません。出てきた生き物の中から、性格や感情が伝わるものを見つけ、物語の登場人物へ育てることでした。「たくさん出せる」ではなく「良いものを選び切れる」を作り手の仕事に置いた点は、後年の発言にも一貫して現れます。
2023年、1枚の画像から物語の世界を広げた
2023年11月15日にOpenAIが公開したDevDayの講演では、Nelson氏がChatGPTとDALL·E 3を使って発想を広げる工程を実演しています。
最初に使ったのは、自分で作った一体の登場人物の画像です。ChatGPTへ画像の説明を求めたところ、最初の回答は事実を並べたものになりました。そこで、名前と来歴を考えるよう頼み、気に入った案を選びます。
次に、登場人物が住む建物を考えさせます。最初の案が本人のイメージと違ったため、木造の小屋に近づけるよう方向を変え、室内、過去に関わった人物、周囲の登場人物へと質問を広げました。
さらに、同じ登場人物をぬいぐるみや本など、別の形で展開する案も試しています。1枚の画像から始め、登場人物、場所、関係者、商品展開へ進みながら、本人が必要な案を選んでいました。
講演の中でNelson氏は、AIの回答をそのまま採用せず、気に入らなければ別の方向を伝えるという姿勢を繰り返し示しています。作り手が「この方向は違う」と判断して質問を組み替えることで、1枚の画像が世界観を持つ物語に育っていく工程が確認できます。
次の動画は、OpenAI公式チャンネルが公開した7分19秒のDevDay講演です。Nelson氏が一つの出力を選び直しながら、登場人物の世界を広げる過程を確認できます。
動画:OpenAI 公式チャンネルより引用
公式講演で追う、発想の進め方
以下は逐語訳ではなく、7分19秒の公式講演をAIGC TIMES編集部が要約したものです。
Nelson氏は、まず画像の説明を求めました。回答は正確でしたが、性格までは見えなかったため、名前と来歴を考えさせ、気に入った案を選びました。
続いて、登場人物の住む場所を考えさせました。最初の建物がイメージと違ったため、木造の小屋へ方向を修正し、室内や周囲の人物まで発想を広げています。
講演では、一つの出力をそのまま採用せず、複数案から選び、違う場合は方向を変える工程が示されています。最初の回答を正解とせず、選ぶ、直す、次の質問を考えるという人の判断で発想を前へ進めていました。
「AIに考えさせる」と「AIの案から選ぶ」は同じではありません。Nelson氏の講演を追うと、AIの出力を叩き台として扱い、選択と修正を繰り返して物語を組み立てる進め方が中心にあることが分かります。
2026年、Codexは企画を一緒に考える相手になった
2026年の公式動画では、同じ考え方がブランド企画へ広がりました。Nelson氏は、新しいクライアントへ一日で幅広い案を見せるため、ブランドと商品、スタイルガイド、広告で伝えたい印象をCodexへ渡しています。
次の動画はOpenAI公式チャンネルが公開した1分7秒の紹介映像です。Creative Specialistという本人の自己紹介と、Codexをディレクターのような協働相手と説明する場面を確認できます。
動画:OpenAI 公式チャンネルより引用
Codexについて本人は、単なる道具ではなく、案を一緒に考える相手になると説明しています。ブランドブック、スタイルガイド、フォント、画面の組み方を踏まえ、キャンペーンの方向を検討できたと話しました。
2023年は、一体の登場人物から物語の世界を広げる使い方でした。2026年は、ブランド資料と商品の条件から、提案するキャンペーンの案を広げています。扱う対象は違っても、案を出し、選び、次の方向を与える進め方は共通しています。
同じ動画でOpenAIは、Codexを「creative teamの協働相手」として紹介しています。企画に必要な素材と条件を渡し、返ってきた案を作り手が読み、選び、次の指示に反映する。この往復の構造は、2023年の講演で示された発想の広げ方を、ブランドの案件へそのまま持ち込んだものと読めます。
技術が変わっても、人が担い続けた4つの仕事
Nelson氏の公式発言を時系列で見ると、人が担った仕事は次の4つに整理できます。

画像:AIGC TIMES編集部(OpenAI公式情報をもとに作成)
1. 出発点を決める
どの登場人物を扱うのか、どの商品を伝えるのか、何を見た人に感じてほしいのか。AIが案を出す前に、制作の出発点を人が決めています。DALL·E 2の記事では森の生き物という主題、2023年の講演では一体の登場人物、2026年の動画ではクライアントのブランドと商品が、それぞれ出発点になっています。
2. 残す案を選ぶ
Nelson氏は、複数の候補から気に入った名前、建物、人物を選びました。生成された数ではなく、作品に合うものを見つける判断が必要です。良い案が10個あっても、作品として残せるのは方向を一つに絞ったときだけです。
3. 違う方向へ修正する
建物がイメージと違えば、どこが違うかを伝え、別の方向へ進めます。ブランド企画でも、守る決まりと目指す印象を共有し、案を調整しています。修正の指示を出すには、出発点と目指す形を作り手の中で言葉にできている必要があります。
4. 選んだ理由を説明する
物語を作品として見せる場合も、広告案をクライアントへ提案する場合も、なぜその案を選んだかを説明しなければなりません。公式動画は、最終採否や公開責任をAIが担ったとは述べていません。責任と説明は、常に人の側に残されています。
DALL·E 2は画像を試す絵筆、ChatGPTとDALL·E 3は物語の世界を広げる相手、Codexはブランド企画を一緒に考える相手として登場しました。それでも、何を作るかを決め、案を選び、修正し、説明する仕事は人が担っています。
Nelson氏の実践を「AIに任せれば速い」とまとめるだけでは、公式事例に示された人の仕事を捉えられません。確認できるのは、AIが案を返し、Nelson氏が選択と修正を重ねて次の方向を決めた工程です。
役職の呼び方を混同しないために
Chad Nelson氏について検索すると、日本語の記事や翻訳で「OpenAIのクリエイティブディレクター」と紹介される例が見られます。しかし、OpenAI公式記事と本人の自己紹介では、役職は一貫してCreative Specialistです。
本人が動画で使った「アートディレクター」「クリエイティブディレクター」は、Codexが企画の相談相手になりうると伝えるための比喩でした。役職の話ではなく、Codexとの関係の話です。この二つを分けて読むと、公式情報の中で何が事実として述べられ、何が例え話として述べられているかが整理できます。
同じ違いは、他社の事例やAIツールの紹介記事にもよく現れます。役職として書かれているのか、AIとの関係を説明する比喩として書かれているのかを分ける読み方は、Chad Nelson氏の記事に限らず、AIクリエイティブの一次情報を読むときに役立ちます。役職の全体像はAIGC TIMESのAIクリエイティブディレクターという役割の整理も併せてご確認ください。
Chad Nelsonの実践を、自社のチームで読み替える視点
Nelson氏の事例は、OpenAI社内の一人のCreative Specialistの働き方です。そのまま自社のチームへ写せるわけではありません。ただし、4つの仕事の並び方は、AIをブランドの制作へ入れるチームにとって参考になります。
出発点、選択、修正、説明の4つは、AIを入れる前も担当者が担っていた仕事です。AIが案を大量に返すようになると、選択と修正の負担が増えます。誰がどこで判断するか、誰が案を組み替える指示を出すか、誰が最終案の理由を社外へ説明するかを、あらかじめ決めておく必要があります。
自社のワークフローへ落とし込む視点は、AIGC TIMESのAIクリエイティブ・ワークフロー再設計ガイド、AIクリエイティブディレクターという役割の整理、ブランド企業のAIクリエイティブ導入ガイド、OpenAI画像生成モデルの比較、AIクリエイティブ制作会社の選び方でも扱っています。Nelson氏の公式発言と併せて読むと、社内の役割設計に活かしやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. Chad Nelson氏のOpenAIでの正式な役職は何ですか
A. OpenAIが2026年7月16日に公開した公式記事と、同年6月公開の公式動画で、役職はCreative Specialistと明記されています。日本語の紹介記事で「クリエイティブディレクター」と書かれる場合がありますが、公式表記はCreative Specialistです。
Q2. Nelson氏がCodexを「クリエイティブディレクター」と呼んだのはなぜですか
A. 本人の役職ではなく、Codexとの協働関係を説明するための比喩です。ブランドブックやスタイルガイドを渡して企画の相談ができるという意味で、アートディレクターやクリエイティブディレクターのような相手になり得ると話しています。
Q3. Nelson氏はDALL·E 2をどのように使っていましたか
A. 2022年7月のOpenAI公式記事で、DALL·E 2を「作り手が導く絵筆」と表現し、性格や感情を持つ森の生き物を100体以上制作しました。技術は絵筆であり、何を作るかを決めるのは作り手だという考え方が示されています。
Q4. 2023年のDevDay講演では何を実演していましたか
A. 1枚の登場人物画像を出発点に、ChatGPTとDALL·E 3を使って名前、来歴、住む場所、周囲の人物、商品展開まで発想を広げる工程を実演しました。7分19秒の動画がOpenAI公式YouTubeで公開されています。
Q5. 2026年の公式動画では、Codexをどのように使っていますか
A. 新しいクライアントへ一日で幅広い案を見せるため、ブランドと商品、スタイルガイド、広告で伝えたい印象をCodexへ渡し、キャンペーンの方向を検討したと説明しています。1分7秒の紹介映像がOpenAI公式YouTubeで公開されています。
Chad Nelsonの考え方を確認した公式情報
- OpenAI公式YouTube「AI Frontiers: Chad Nelson」 — 2023年のDevDay講演。登場人物から世界を広げる実演
- OpenAI公式YouTube「Codex for Creatives: Riff, Design, Ship」 — Creative Specialistという自己紹介と、ブランド企画へCodexを使う例
- OpenAI「How Codex became a collaborator for OpenAI’s creative team」 — 2026年7月16日公開。役職と、人の判断を中心に置く制作工程
- OpenAI「DALL·E 2: Extending creativity」 — 2022年7月14日公開。100体以上の制作と、作り手が導く絵筆という本人の説明
- OpenAI DevDay 2023 公式イベントページ — Nelson氏が登壇したDevDayの公式概要
- OpenAI for Business公式LinkedIn — 2026年の公式動画トランスクリプトと投稿文
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