Claude Agent SDK は何か、旧 Claude Code SDK からの改称

Claude Agent SDK は、以前は Claude Code SDK の名称で公開されていた開発者向けライブラリの現行名です。公式ドキュメントの位置付けを引くと「Claude Code と同じツール、エージェントループ、コンテキスト管理を、Python と TypeScript から呼び出せるライブラリ」です。

Claude Code は CLI として日々の対話で使うことを想定した製品、Agent SDK は自社のプロダクトや業務プロセスに埋め込むエージェントを組むためのライブラリ、という位置分けになっています。同じ内部の仕組みを土台に、対話端末として使うか、コードから呼び出すかを選べます。

制作の現場で意味を持つのは、後者の使い方です。ブリーフから納品までの一連の工程を、案件ごとに人が Claude Code を立ち上げて回す代わりに、自社の管理画面や Slack、フォームの背後に Agent SDK 製のエージェントを常駐させ、案件が入るたびに走らせる形が組めます。

なぜクリエイティブブリーフの工程がエージェント SDK に向いているのか

クリエイティブブリーフの工程は、生成AIツール単体では自動化しづらい部分が残ります。ブリーフを読む、案件の資料を集める、ブランドの規約に照らす、複数の生成ツールを順に呼ぶ、生成物を並べて命名する。この一連の段取りは、単発の指示で終わる仕事ではなく、判断と実行が交互に入る作業です。

Anthropic の公式ドキュメントは、エージェントの中核として「コンテキストを集める、行動する、成果を検証する、反復する」という四段階のループを挙げています。ブリーフを起点にした制作の工程は、この四段階にそのまま当てはまります。案件フォルダとブリーフから情報を集め、制作指示に書き換え、出力をブランド基準に照合し、外れた箇所を直す。人が案件ごとに繰り返している段取りを、そのままエージェントの仕事として書き出せます。

CLI の Claude Code でも同じことはできますが、業務プロセスに組み込むには、コードから呼べる形の方が扱いやすい。Agent SDK は、この橋渡しの役割を担います。

インストールと最初のエージェント

Agent SDK は Python と TypeScript の二つの言語でライブラリが提供されています。TypeScript の場合は npm から入ります。

npm install @anthropic-ai/claude-agent-sdk

Python の場合は pip から入ります。認証は ANTHROPIC_API_KEY の環境変数を通します。公式ドキュメントに書かれている通り、Claude.ai のログイン認証は第三者製品には解放されていないので、API キー認証で組みます。

最も小さいエージェントは、TypeScript ならこの形です。

import { query } from "@anthropic-ai/claude-agent-sdk";

for await (const message of query({
  prompt: "案件フォルダのブリーフを読み、要点を三行で返して",
  options: { maxTurns: 3 }
})) {
  console.log(message);
}

query 関数に指示と選択肢を渡すと、Agent SDK は Claude Code と同じエージェントループを回し、必要ならファイルを読み、コマンドを実行し、途中経過をメッセージとして返します。ここに、次の節で扱う Skills、MCP、Hooks、サブエージェントの設定を足していく形で、エージェントを厚くしていきます。

ブリーフを受け取る、フォームと Slack を束ねる

エージェントに最初に担わせる仕事は、ブリーフの受け取りです。実務では、Google フォームや Slack、メール、Google Drive の資料など、入口が複数に散っています。Agent SDK は Model Context Protocol(MCP)のクライアントとして動くので、公式に用意されている MCP サーバーを登録するだけで、これらの入口を一つのエージェントから触れるようになります。

query の選択肢のうち mcpServers に MCP サーバー設定を渡すと、Slack のチャンネル、Google Drive のフォルダ、社内の課題管理ツールを、エージェントが自分で呼び出せる状態になります。ブリーフが Slack で降ってきても、Drive のフォームに書き込まれても、同じエージェントが同じ流れで拾えます。

ここまでで、案件の入口が一箇所に集まります。担当者は「案件が入りました、拾ってください」と一声かければ、エージェントが該当のチャンネルとフォルダを探しに行き、ブリーフの本文と添付を集めてきます。

制作指示に書き換える、ブランド Skill と Skills の役割

ブリーフを拾った次は、制作指示に書き換える段取りです。ここで効くのが Skills の仕組みです。Skills はプロジェクトの .claude/skills/ フォルダに置いたフォルダ群で、SKILL.md に手順を書き、必要なスクリプトや素材を並べておくと、Agent SDK は Claude Code と同じ規則で自動的に読み込みます。公式ドキュメントは「Skills、コマンド、メモリはプロジェクトの .claude/ とユーザーの ~/.claude/ から自動で読み込まれる」と記しています。

制作の現場で用意すべき Skill は、大きく三つです。ブランドの規約(色、書体、トーン、NG表現)を書いた Skill。案件の型(記事、SNS、動画、印刷物)ごとの制作指示のテンプレートを束ねた Skill。命名規則と納品フォーマットを書いた Skill。この三つを置いておくと、エージェントはブリーフを読み、案件の型を選び、ブランドの規約に沿った制作指示を書き出し、ファイルを規定の場所に置くところまでを自分でたどれるようになります。

Skills はチームで共有する資産として設計されているので、Git で管理し、案件を横断して使い回します。担当者が変わっても、同じ結果が出る状態を維持できます。

生成モデルを MCP 経由で呼ぶ、画像・動画・コピー

制作指示ができたら、生成モデルを呼ぶ段に入ります。Agent SDK は MCP を通じて外部のモデルを呼び出せるので、画像生成、動画生成、音声合成のツールを、エージェントの手駒として並べられます。制作物の型ごとに、どのモデルを呼ぶかを Skill 側に書いておけば、エージェントは案件に応じてモデルを選び、指示を渡し、出力を受け取ります。

たとえば、SNSの投稿画像の案件なら、画像生成モデルを MCP で登録しておき、Skill に「Instagram の正方形と縦長、訴求は三パターン、各二案」と書いておく。ブリーフを受けたエージェントは、この Skill を参照して、画像生成モデルを十二回呼び、命名規則に沿って書き出します。動画の案件なら、映像生成モデルと Remotion のような編集の枠組みを組み合わせ、テンプレートに中身を差し込む形で本数を積み上げます。

一つのエージェントに複数のモデルを持たせるのが要点です。案件ごとにツールを立ち上げ直す運用は、量が増えると持たない。Agent SDK は、生成モデルの選定と呼び出しを、エージェントの内部の判断として扱えます。

検証と承認、Hooks と Permissions で人の判断を残す

生成が終わった直後に効くのが、Hooks と Permissions の仕組みです。Hooks は、エージェントが何かをする前後に、任意のシェルコマンドやスクリプトを差し込む仕組みです。ファイル書き出しの直後にブランドの色と書体の照合を走らせる、指定の枚数と比率を満たしているかを検算する、といった検証を、人の目が入る前に自動で回せます。

Permissions は、エージェントが呼び出せるツールを、自動で通すものと承認が必要なものに分ける仕組みです。公式ドキュメントは「どのツールを自動で走らせ、どのツールに承認を求めるかを制御する」と説明しています。制作の現場で意味を持つのは、外部モデルの課金呼び出しや、クライアントに直接送るチャンネルへの投稿を、承認待ちに寄せられる点です。

この二つを組み合わせると、生成の速度は保ちつつ、人の判断が必要な工程だけを人に残せます。ブランドチームの確認は「エージェントが拾えなかった外れ」に絞れます。

検証が通った後の納品準備も、同じ枠組みで続けられます。命名規則を書いた Skill を参照してファイル名を整え、納品フォーマットの Skill を参照して書き出しの解像度と圧縮を揃え、Hooks で書き出しの直後に指定のフォルダへ移動させる。クライアントへの通知は、Slack やメールの MCP を通じてエージェントから直接投げる形が組めますが、Permissions で承認待ちに設定しておき、担当者が最後に一度目を通してから送る運用が安全です。生成の速さを、確認の粗さと引き換えにしない設計が要になります。

サブエージェントで案件を並列化する

案件が複数同時に走るときは、サブエージェントの仕組みが効きます。公式ドキュメントは「特化した子エージェントを立てて、絞った作業を任せる」と説明しています。Agent SDK では、リード役のエージェントが案件全体を管理し、素材ごとに子エージェントを立て、並行で処理させ、結果をリードが統合する構成が組めます。

十本のショート動画を一つの案件で作るとき、十本を順に処理せず、十本ぶんの子エージェントを並行で走らせ、書き出しが終わったものから素材フォルダに並ぶ設計にできます。処理の待ち時間が案件全体の所要時間として積み重ならないのが利点です。ただし、モデルの呼び出しは課金と枠の制約があるので、並行度は Permissions と併せて調整します。

現場で組むときの判断基準

Agent SDK を制作の現場に入れる判断は、次の三つが揃うところで下すのが順当です。制作物の型がある程度決まっていて、量産の要件があること。ブランドの規約と制作の癖が、Skill として書き出せる状態にあること。案件の入口が Slack、フォーム、Drive のように、MCP から触れる場所に整理されていること。

逆に、案件ごとに完全な一点物を作る現場、ブランドの基準がまだ言語化されていない現場では、Agent SDK を入れる前に、その土台を整える工程が先に来ます。エージェントは、揃っている型を高速に展開するときに効きます。揃っていない型を、代わりに揃えてくれるわけではありません。

Claude Code の CLI から入り、対話で工程を確かめ、固まった部分から Agent SDK に移す順番が扱いやすいです。関連する制作の型については Claude Code をクリエイティブに使う実装ガイド を土台に、画像量産は Claude Code で画像バッチを回す運用、動画量産は Claude Code で動画バッチを回す運用、外部ツール連携は Claude と Recraft を MCP で接続するClaude と Canva を MCP でつなぐ運用 を参照してください。

Managed Agents との使い分け

Anthropic は、Agent SDK と別に Managed Agents というホスト型のサービスも提供しています。Managed Agents は、Anthropic 側でエージェントの実行環境とサンドボックスを管理し、REST API で呼び出す形の製品です。長時間走る非同期の処理や、自社でインフラを持たない場面での選択肢になります。

制作の現場から見ると、Agent SDK は自社のマシンやサーバーの中でエージェントを走らせるので、案件フォルダや社内のファイルに直接触れられる利点があります。Managed Agents はサンドボックスの中で走るので、社内のファイルへのアクセスは MCP や API 経由に限られます。案件の素材を手元で扱う現場は Agent SDK、遠隔で走らせたいバッチ処理は Managed Agents、という使い分けが順当です。

FAQ

Q1. claude agent sdk クリエイティブ用途で最初に着手すべき工程はどこですか

A. ブリーフの受け取りと制作指示への書き換えの二工程です。ここが自動化されると、案件の立ち上がりが速くなり、生成ツールの呼び出しに集中できるようになります。生成モデルの呼び出しから入ると、前後の段取りが残るため、体感の効果が薄くなります。

Q2. Claude Code の CLI と Agent SDK は、どちらから入るのが良いですか

A. Claude Code の CLI から入るのが順当です。対話で工程を確かめ、固まった手順を Skill として書き出し、業務プロセスに組み込む段階で Agent SDK に移す順番が、失敗のやり直しが少なく済みます。

Q3. TypeScript と Python のどちらを選ぶべきですか

A. 社内の他のエージェントや業務システムが動いている言語に合わせるのが順当です。両方の SDK は同じ機能を提供しているので、選択の基準は、既存のコードと運用の親和性に置きます。

Q4. 生成モデルを直接 API で呼ぶ構成と、MCP 経由で呼ぶ構成の違いは何ですか

A. MCP 経由は、モデルの追加と入れ替えが Skill と設定ファイルの変更で済む点が違いです。直接 API で呼ぶ構成は、コードの中にモデルの呼び出しが埋まるので、モデルを変える度にコードの書き換えが要ります。案件で扱うモデルが増えていく現場では、MCP 経由が扱いやすくなります。

Q5. Agent SDK で組んだエージェントの動作を、あとから追跡できますか

A. Agent SDK にはセッションの仕組みがあり、エージェントの対話履歴を保存し、後から再開したり、別のセッションとして枝分かれさせたりできます。運用の記録として、案件ごとにセッションを分ける形が扱いやすいです。

情報源