なぜ「Claude Code で動画 一括」という組み方になるのか

動画生成モデルを単体で使い、Web UI から 10本を書き出す作業は、いまも十分に可能です。ただ、案件で回すとなると話が変わります。shot ごとのプロンプト管理、モデルの使い分け、失敗回の作り直し、クレジット上限、担当者間の引き継ぎ。この段取りが手作業のまま残ると、生成の速さの利点が消えます。

Claude Code は、この段取り側を担う道具です。公式ドキュメントの表現を借りれば、コードベースを読み、ファイルを編集し、コマンドを実行し、外部ツールと連携するエージェント型 CLI と説明されています。制作の現場から見ると、担当者に近い立ち位置です。shot 表を読み、Model Context Protocol(以下 MCP)で外部の動画モデルを呼びます。返ってきた動画をルールに沿って保存し、失敗があれば同じ入力から作り直す、という一連を担います。

全体設計は姉妹記事の Claude Code で映像制作の workflow を組む で扱っています。本稿はそのうち、shot 表からの一括生成にだけ絞って手順を書きます。

用意するもの|前提と接続の初期設定

必要な要素は四つです。Claude Code 本体、動画モデルを呼ぶための MCP サーバー、shot を並べる表、保存先のフォルダです。

Claude Code のインストールは、macOS と Linux の場合は公式が用意した一行のスクリプトで済みます。curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash を実行し、認証はログインか ANTHROPIC_API_KEY の環境変数で通します。Windows は PowerShell からの導入手順が別途案内されています。

動画モデル側は、Higgsfield(ヒッグスフィールド)が公式の MCP サーバーを公開しています。Runway(ランウェイ)は 2026 年 5 月に MCP を一般公開し、Claude Desktop と Claude Code から接続できる状態にしました。Higgsfield は Soul、Cinema Studio、Kling、Seedance、Veo など多数のモデルを内包し、Runway は Gen-4 系と Aleph 2.0 を軸に据えています。姉妹記事の Claude MCP から Higgsfield を呼び出す接続手順Claude MCP から Runway を呼び出す接続手順 に、認証と .mcp.json の書き方をまとめてあります。本稿ではその接続が済んでいる前提で進めます。

案件用のディレクトリを一つ切り、その下に shots/out/.claude/skills/scripts/ の四つを置きます。この形が、以降の説明の起点です。

shot 表を設計する|CSV か YAML で並べる

動画の一括生成の中心は、shot の表です。Claude Code に「表を読んで、一行ずつ動画モデルに投げて、返ってきた動画を保存して」と指示できる状態を作ります。

推奨の形式は二択です。CSV は Excel や Google スプレッドシートで編集しやすく、担当者と共有しやすい特徴があります。YAML はコメントを残せて、複数行のプロンプトや音声指示を扱いやすい利点があります。案件の性格で決めます。

最小の CSV は次の形です。

id,prompt,ratio,duration,model,seed
001,"モデル正面 商品を掲げる ソフトライト",9:16,5,higgsfield-soul,42
002,"モデル横顔 商品にゆっくり寄る 逆光",9:16,5,higgsfield-soul,42
003,"商品パッケージ 俯瞰 白背景 微回転",1:1,4,runway-gen4,7
004,"店内 引き カメラ固定 3秒",16:9,3,higgsfield-cinema,7

id は保存名と紐付ける識別子です。prompt は本文、ratio は書き出しの比率、duration は尺の秒数、model は呼び出す MCP 側のモデル名、seed は再現性のための固定値です。行を足していけば、そのまま一括処理の入力になります。

Claude Code からは、次のような自然言語で回せます。「shots/shot_list.csv を読み、各行のプロンプトを model 列に指定されたモデルに送って、out/<id>.mp4 として保存してください。既に同名のファイルがあればスキップしてください」。この指示だけで、Claude Code は CSV を読み、MCP を通じて動画モデルを呼び、返ってきた動画を保存し、既存分は避ける、という手順を組み立てます。

MCP を通じて Higgsfield と Runway を呼ぶ

MCP は、Claude Code から外部の道具を呼ぶための共通の口です。Anthropic が仕様を公開し、各社が対応サーバーを提供しています。Higgsfield と Runway はどちらも公式の MCP サーバーを持ち、Claude Code から会話の中でそのまま呼び出せます。

接続の実体は、案件ディレクトリに置く .mcp.json です。ここに Higgsfield と Runway のエンドポイントを書いておくと、Claude Code は起動時にサーバーの一覧を読み、そこに公開されているツール(generate_videoupscalealeph_edit など)を、自分の道具として認識します。Higgsfield 公式ブログによれば、認証はブラウザ経由のログインで完結し、API キーの発行と管理は不要です。Runway も同様に、Runway アカウントのログインで接続が張られます。

呼び方は、コード側で意識しなくても構いません。Claude Code に「Higgsfield の Soul で 9:16 の 5 秒動画を作って」と伝えると、Claude 側が引数を組み立て、MCP 越しに実行し、返ってきた URL からダウンロードします。案件内で複数のモデルを混ぜる場面は、CSV の model 列に行ごとにモデル名を書き込めば、Claude Code は指定に沿って呼び出し先を切り替えます。SNS 用のリップシンクは Higgsfield Soul、シネマ調は Higgsfield Cinema Studio、既存映像の部分編集は Runway Aleph 2.0、といった分担です。個別モデルの一覧と接続の詳細は、姉妹記事の Higgsfield 接続手順Runway 接続手順 に整理しています。

Aleph 2.0 のような部分編集を使う場合は、CSV に source_video 列を追加し、案件フォルダの assets/ にある元素材のパスを書き込みます。Claude Code は新規生成の代わりに、元映像を Aleph 2.0 に渡し、指定した部分だけを差し替える処理を回します。新規生成と部分編集を、同じ CSV の中で行ごとに混ぜられます。

一つ注意点があります。MCP 越しの呼び出しは、実際に外部モデルを叩きます。クレジット消費、レート制限、生成待ちの時間がそのまま効きます。動画は画像と比べて 1 本あたりのクレジットが大きく、生成時間も 30 秒から 2 分の水準です。表の行数が多い場合は、後述のクレジット上限とサブエージェントの項で扱う手当てを先に済ませます。

命名規則と保存場所を先に決める

一括生成で崩れやすいのは、ファイル名です。50 本を書き出したあとに「どれがどの shot の分か」を追えなくなると、そこから先の差し戻しが全て手作業に戻ります。

規則は先に決めて、Skills に書きます。案件のディレクトリに .claude/skills/naming/SKILL.md を作り、命名の規則を平文で書きます。例を挙げます。

- 出力先: out/<案件id>/<日付>/<shotid>_<モデル>_<尺>s_<seed>.mp4
- 案件id はディレクトリ名から自動で取る
- 日付は YYYY-MM-DD、生成の実行日
- 上書き禁止、既存があれば末尾に _r2, _r3 を付ける
- サムネイル: 同名.jpg を書き出しと同時に生成

Skills に置くと、Claude Code は生成の前に自分でこのファイルを読み、規則に沿って保存名を組み立てます。担当者が変わっても、命名は同じ形で保たれます。案件が終わったら Skill ごと Git で残すと、次の案件の初期設定として使い回せます。

サムネイルを同時に書き出す設定は、動画の一括生成で効きます。50 本の MP4 を一覧で確認する場面で、動画プレイヤーを開かずに済みます。書き出しは、ffmpeg -ss 0 -i <mp4> -frames:v 1 <jpg> を Hooks から呼ぶ形で仕組み化できます。

失敗時の再開とリトライ|途中から続ける

50 行の CSV を回す途中で、モデル側のエラー、通信の切断、生成タイムアウトといった中断は起こります。この時、最初からやり直すのではなく、失敗した行だけを作り直せる状態を先に用意します。

実現の仕方は二段です。第一に、各行の結果を out/<案件id>/log.jsonl に追記します。成功したか、失敗の理由は何か、実際に呼んだモデルとパラメータを一行ずつ記録します。Claude Code に「行ごとに log.jsonl へ追記してください」と伝えるだけで、この記録は残せます。

第二に、次回の実行時に「log.jsonl を読み、成功済みの id はスキップし、失敗の id だけ再生成してください」と指示します。表の入力は変えず、記録側で差分を作る形です。これで、途中で止まっても、続きから走らせられます。

同じ考え方は、生成物の微修正にも使えます。「id 007 と 012 だけ、prompt 末尾に『カメラをゆっくり寄せる』を足して再生成してください」と伝えれば、Claude Code は該当の 2 行だけ log.jsonl の指示を上書きし、差分だけを回します。動画は生成コストと時間が大きいため、この差分再生成の設計が実務では特に効きます。

クレジット上限を Hooks で守る

動画の一括生成でこわいのは、意図せぬ大量呼び出しです。表を差し替えたつもりが尺の桁を間違え、一晩で数千クレジットを消費した、という事故は避けたいものです。この予防に、Claude Code の Hooks が使えます。

Hooks は、Claude Code の各工程の前後に処理を差し込める仕組みです。ツール呼び出しの前に走る PreToolUse を設定しておくと、実行しようとしている呼び出しの回数と、モデル別の見積もりを、実行前に確認する形が作れます。案件ディレクトリの .claude/settings.json に、次のようなブロックを足します。

{
  "hooks": {
    "PreToolUse": [
      {
        "matcher": "mcp__higgsfield__.*|mcp__runway__.*",
        "hooks": [
          { "type": "command", "command": "scripts/check_budget.sh" }
        ]
      }
    ]
  }
}

scripts/check_budget.sh の中では、今日の呼び出し回数と累計の見積もりクレジットを数え、上限を超えていれば非零で終了して呼び出しを止める形が組めます。上限の管理を人の記憶に頼らず、仕組み側に持たせる考え方です。

サブエージェントで並列に分ける

50 行を一本の直列で回すと、待ち時間が積み上がります。動画は 1 本あたり 30 秒から 2 分かかるため、直列だと 1 時間を軽く超えます。Claude Code のサブエージェントは、この分担を担う仕組みです。親エージェントが表を五つに分割し、それぞれを別のサブエージェントに預け、並列で生成を進める組み方ができます。

親側の指示は、次のような日本語で通ります。「shot_list.csv を 10 行ずつに分けて、五つのサブエージェントに割り振ってください。各サブエージェントは、自分の担当範囲だけを MCP 経由で生成し、共通の log.jsonl に追記してください。全員が終わったら、失敗行だけをまとめて報告してください」。

並列化の効果は、モデル側のレート制限までです。Higgsfield と Runway はそれぞれ 1 分あたりのリクエスト上限を公開しているため、その範囲に収まる分割数を選びます。動画は生成キューがモデル側で待たされる場合もあり、並列数を上げすぎると効果が頭打ちになります。案件の入りで一度、10 行を並列 2、並列 5、並列 10 で試し、担当モデルに合う分割数を掴んでおくのが順当です。

書き出し後の QC を Skills に持たせる

書き出した動画を、そのまま納品には出しません。尺、比率、解像度、フレームレート、色温度、NG 素材の混入、音量の水準。この照合を Skills に持たせておくと、Claude Code は生成の直後に自分で確認し、外れた分だけ差し戻しの表に回します。

代表的な Skill 構成は三つです。第一は基準の一覧を書いた qc-spec/SKILL.md。案件ごとに、尺・比率・解像度・フレームレートの許容範囲を平文で並べます。第二は ffmpeg を呼ぶ av-audit/SKILL.md。書き出しファイルのメタデータと、平均色温度、音量の水準を確認します。第三は差し戻し表を作る retry-list/SKILL.md。三つを組み合わせると、生成、審査、差し戻し表への集約、が同じ会話の中で完結します。全体像は姉妹記事の Claude Code をクリエイティブに使う実装ガイド で扱っています。

実際の制作パイプラインの流れ

以上の要素を一つの流れに並べると、次の形になります。担当者が shot_list.csv を編集し、案件ディレクトリに保存します。Claude Code を起動し、「shot_list.csv を回してください」と伝えます。Claude Code は naming Skill を読み、保存名を組み立て、クレジット上限の Hook を通過し、Higgsfield と Runway を MCP 経由で呼び、書き出した動画を out/ に保存し、log.jsonl に結果を記録します。サブエージェント側は担当範囲を並列で処理します。書き出しが終わると av-audit Skill が全動画を照合し、外れた分を retry-list Skill が表に集約します。手作業の残りは、prompt の修正と最終の目視だけです。

この形の利点は、量ではなく、再現性です。同じ CSV と同じ Skills を、翌月の案件でもそのまま使えます。担当者が変わっても、生成される動画の性格が保たれます。

FAQ

Q1. claude code 動画 一括の指示は、日本語で通りますか

A. 通ります。Claude Code は日本語での指示を扱えます。CSV の列名、Skills の記述、Hooks のスクリプトのコメントも日本語で書けます。ただ、.mcp.json などの設定ファイルのキー名は英語のまま扱うのが安全です。

Q2. Higgsfield と Runway のどちらを主軸にすべきですか

A. 用途で分けます。SNS ショート動画の量産や、複数モデルを跨いだ生成は Higgsfield が扱いやすく、既存映像の部分編集や Gen-4 系の質感を求めるカットは Runway が向きます。案件の性格に合わせて、CSV の model 列で行ごとに切り替える形が使いやすいです。

Q3. 50 本の一括生成に、どのくらい時間がかかりますか

A. モデルの生成時間と、サブエージェントの分割数で変わります。Higgsfield Soul の 5 秒動画を 1 本 40 秒として、直列で 33 分、五つのサブエージェントで並列にして 7〜10 分が目安です。実測は案件ごとに変わるため、最初の一回は 5 本で試すのが安全です。

Q4. 生成した動画の商用利用は可能ですか

A. 各モデルの利用規約に従います。Higgsfield は 2026 年 7 月更新の利用規約で商用利用を制限しない旨を明示し、Runway は契約プランごとに条件を定めています。第三者モデルを介した生成物には、それぞれ提供元の利用条件も適用されるため、案件の入り口で公式規約を確認します。

Q5. Claude Desktop ではなく Claude Code を選ぶ理由は

A. 一括生成は、ファイルの読み書きとスクリプトの実行が中心の作業です。Claude Desktop はチャット中心の設計で、CSV の走査、ffmpeg の呼び出し、log.jsonl の追記といった、ファイル操作を伴う自動化に不向きです。CLI 側の Claude Code は、この用途で設計されています。

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