前提:ClaudeとRecraft MCPの役割分担

Model Context Protocol(MCP)は、AIアプリケーション本体を「ホスト」、ホストから外部機能への接続を張るのが「クライアント」、外部機能を提供する側が「サーバー」と定義する三層構造の規格である。Claude Desktop・Claude Code・Claude Webは、この定義でいえば「ホスト兼クライアント」の側にあたる。Recraft MCP Serverは「サーバー」であり、Recraftが自社モデルとRecraft Studio上の機能として提供する画像生成、ベクター化、背景除去、背景差し替え、アップスケール、カスタムスタイル作成といった機能を、標準化されたツール定義としてクライアントに公開する。

Recraft公式ドキュメントの「MCP Reference」には、リモートMCPサーバーとしてhttps://mcp.recraft.ai/mcpが明記されており、認証はRecraftアカウントによるOAuthで完結する。生成に伴う消費はRecraft Studioと同じサブスクリプションクレジットから引かれ、API側のユニット残高とは別建てで管理される。ローカルインストールは不要で、Streamable HTTPトランスポートとOAuthに対応したMCPクライアントであればそのまま接続できる。

Anthropicは2026年7月28日、MCP仕様の新版「2026-07-28」を発表し、双方向ステートフルなプロトコルからリクエスト/レスポンス型のステートレス構造へ移行した。同発表の中で、コネクタディレクトリに登録されたMCPサーバーが950を超えていることが示されている。Recraft MCPはこの流れの中で、デザインAIの側からMCPを公式に開放した先行事例に位置付けられる。

Claude側から見ると、Recraft MCPは「同じ会話文脈のまま、自然言語の指示だけでベクター生成、スタイル作成、モックアップ、背景処理、アップスケールを扱える外部ツール」として現れる。ユーザーが「このロゴを取り込んでブランドスタイルを作り、アイコンを八枚同じ調子で描いて」と書くと、Claudeはツールカタログから該当機能を選び、パラメータを組み立て、Recraftに実行を依頼する。生成結果はチャットに戻り、次の指示でそのまま反復に入れる。

なぜブランド素材にClaude起点で組む価値があるか

Recraft Studioを直接使う運用と、Claudeから呼び出す運用は、生成できる素材そのものは大きく変わらない。違いは、リサーチ、要件整理、命名規則、レビュー観点といった前後工程を、同じ会話の中に束ねられる点にある。

Claudeは、ブリーフの解釈、コピー、参照事例の整理、レビュー観点の設計、社内共有用のサマリ作成といったテキスト側の工程を得意とする。一方、Recraftは、それらの工程で生まれた指示を、実際のベクター、アイコン、モックアップ、背景差し替え済みビジュアルに落とす。両者を別々のツールとして往復させる運用では、指示の要約や貼り直しでコンテキストが失われ、反復のたびに人が介在する。ClaudeがMCPでRecraftを直接呼び出せると、ブリーフ整理から素材生成、レビュー、修正、確定までを一つの会話の中に束ねられる。

ブランド運用の観点では、この束ね方が三点で効く。第一に、ブランドガイドライン、過去アセット、命名規則といったコンテキストを、生成の直前までClaudeが保持する。第二に、Claude Code側であれば、生成物のファイル名、保存先、フォルダ構造、SVGの検品ルールをコード側で担保でき、量産時の管理コストが下がる。第三に、Recraft側のcreate_styleが返すカスタムスタイルIDを、Claudeが会話の中で参照しつづけられるため、同一ブランド内でスタイルの取り違えが起きにくい。

Claude Desktopでの接続手順

Claude Desktopでは、設定ファイルclaude_desktop_config.jsonにRecraft MCPを追加する。Recraft公式のMCPリモートサーバードキュメントの手順に沿えば数分で完了する。

claude_desktop_config.jsonmcpServersセクションに、以下の一節を追記する。既存の他サーバー定義があれば同じ階層に並べる。

{
  "mcpServers": {
    "recraft": {
      "command": "npx",
      "args": [
        "-y",
        "mcp-remote",
        "https://mcp.recraft.ai/mcp"
      ]
    }
  }
}

Claude Desktopを再起動し、新規チャットで「Recraft MCPでこのロゴをベクター化して」といった短い指示を送ると、Claudeがツール呼び出しの許可プロンプトを提示する。初回はブラウザが起動し、RecraftのOAuth認証画面に遷移する。既存のRecraftアカウントで承認すると、Claude DesktopとRecraftの間に接続セッションが張られ、以後のツール呼び出しは同じトークンで再認証なしに走る。

案件初期は個別に許可を残し、レビューが済んでから一括許可の運用へ移すのが素直である。共有アカウントや管理下の組織アカウントでは、承認履歴を残す目的で、案件初期は都度承認を選ぶ設計にしておく。

Claude Codeでの接続手順

Claude Codeでは、GUIではなくCLIコマンドでMCPサーバーを登録する。Recraft公式ドキュメントによれば、リモートMCPサーバーの追加コマンドは次の一行で完結する。

claude mcp add --transport http recraft https://mcp.recraft.ai/mcp

--transport httpは、Streamable HTTPトランスポートを使うことを示す。追加後、Claude Code内で/mcpを実行すると、サーバー一覧、認証状態、公開ツール数、キャッシュ状態が一画面で確認できる。認証が必要な場合は/mcpのパネルからOAuthサインインに進み、ブラウザでRecraftにログインする。

スコープには三種がある。localは現在のセッションのみで有効、userは同ユーザーの全プロジェクトで有効、projectはプロジェクト直下の.mcp.jsonにコミットしてチームで共有する。ブランド案件で複数の担当者がRecraft MCPを共用する場合は--scope projectを選び、.mcp.jsonに接続情報を残しておく。承認済みかどうかはclaude mcp listclaude mcp get recraftの出力で追える。

Claude Codeをブラウザ経由のマネージド環境で使う場合、Recraft側の画像ホストへのアクセスが既定で制限される。Recraft公式ドキュメントは、環境設定のネットワーク欄をカスタムに切り替え、許可ドメインにimg.recraft.aiを追加し、パッケージマネージャの既定リストを併記する手順を案内している。ローカルのClaude Codeでは追加設定は必要ない。

Recraft MCPが公開する9つのツール

Recraft公式のMCPツール一覧には、以下の9つが列挙されている。いずれもClaude側で自然言語の指示に変換され、対応するツールがサーバー側で選ばれる。

  • generate_image:テキストからラスターまたはベクターの画像を生成する。プロンプト、スタイル、サイズ、モデル、生成枚数を受け取る。
  • create_style:参照画像の集合とベーススタイルからカスタムスタイルを作成する。以後の生成で同じスタイルIDを指定できる。
  • vectorize_image:ラスター画像をSVGに変換する。
  • image_to_image:既存の画像とテキスト指示から新規画像を生成する。類似度、スタイル、サイズ、モデル、枚数を受け取る。
  • remove_background:画像の背景を自動で除去する。
  • replace_background:画像の背景をテキスト指示で差し替える。スタイル、サイズ、モデル、枚数を受け取る。
  • crisp_upscale:元の描画を保ったまま解像度を上げる。
  • creative_upscale:拡大と同時に細部を再生成し、印刷や大判掲示に耐える密度に引き上げる。
  • get_user:アカウント情報とサブスクリプションクレジット残高を返す。

ベクター系モデルはSVGを、ラスター系モデルはPNG・WEBP・JPGを返す。既存のStyleはV2とV3のみで有効で、V4・V4.1では別の指定方法が使われる。create_styleで作成したカスタムスタイルは、作成時に指定したモデルとベーススタイルに紐付くため、モデル横断で流用する場合は同名のカスタムスタイルを別途作成する運用が現実的である。

Claude Codeから呼び出せる主な制作タスク

前記9ツールの組み合わせで、Claude Code側から扱える主要な制作タスクは次のように整理できる。

  • ブランドアイコンの一括生成:generate_imageにベクター版モデルを指定し、シリーズ全体を同じスタイルで八〜十六枚まとめて生成する。
  • ロゴのSVG化:vectorize_imageで既存のラスターロゴをSVGに変換し、Recraft Studioで細部を整えたのちClaudeで命名規則に沿って保存する。
  • パッケージモックアップ:image_to_imageまたはreplace_backgroundで、権利を持つロゴや商品写真を陳列イメージに合成する。
  • 印刷向けアップスケール:crisp_upscalecreative_upscaleを用途に応じて選び、Web用サムネから印刷解像度まで引き上げる。
  • 出稿バリエーション:remove_backgroundで切り抜き、replace_backgroundで複数の背景を一度に作る。
  • カスタムスタイル:create_styleで参照画像からブランド固有スタイルを作成し、以後のgenerate_imageで同じIDを継続利用する。

SVGの検品や色調の最終合わせは、Recraft StudioのVector Editorへ引き渡す前提で組むと後戻りが減る。

Recraft APIとRecraft MCPの使い分け

RecraftはREST APIも別建てで公開している。APIのベースURLはhttps://external.api.recraft.ai/v1で、認証はBearerトークン方式である。トークンはapp.recraft.ai/profile/apiから発行し、APIユニット残高に対して従量で消費される。MCPが引くサブスクリプションクレジットとは残高が別建てになる点は、社内で経理処理を切り分ける前に確認しておく。

MCPとAPIは、対象がClaudeなどのMCPクライアントか、独自のバックエンドや自社ワークフローかで役割が分かれる。ブランドチームがClaudeとの会話の中で反復するならMCP、社内システムに組み込んで大量に処理するならAPIという整理が実務に合う。同じ機能をどちらでも呼び出せるが、認証、残高、レート制限、監査ログの入り口が別になるため、案件横断で使う場合は一方に統一する運用が管理しやすい。

ブランドスタイルとカスタムスタイルの運用設計

Recraft MCPのcreate_styleは、参照画像の集合を渡してブランド固有のスタイルを作る仕組みである。追加学習と違い、比較的少ない素材から特徴を抽出して以後の生成に適用する形をとる。同じブランドでも、広告用、説明図用、モックアップ背景用でスタイルを分けて作成し、案件ごとにClaudeへ「今回は説明図用のスタイルで」と明示して呼び分ける運用に近い。

カスタムスタイルは作成時のモデルとベーススタイルに紐付くため、モデルを切り替える案件では同名の別スタイルを再作成する。ブランドガイドラインで許容する色域、線幅、モチーフ、禁止表現をClaude側のシステムプロンプトかSkill定義に書き込み、生成前の指示に自動で織り込むと、スタイル運用の粒度を保ちやすい。

権限・監査・データ扱いの確認事項

Recraft MCPの認証はOAuthで、トークンはローカルに保存される。Claude Codeでは~/.mcp-auth/配下に置かれる。認証が通らないときや別アカウントに切り替えるときは、この配下を削除して再度OAuthを走らせる案内が公式ドキュメントにある。

ブランド案件で未発表商品、顧客素材、人物写真を扱う場合は、Recraft側のアカウント種別と利用規約を事前に確認する。生成物の商用利用可否、権利帰属、参照画像の扱いはプランごとに条件が異なる。第三者ロゴや実在人物に似た要素の混入は、公開前に人が確認する運用が必須である。

Claude側の許可粒度も同時に締める。Claude Desktopの一括許可とClaude Codeの.mcp.json共有では、生成呼び出しが自動で走る前提になる。案件初期は都度承認を残すか、.mcp.jsonのスコープをuserに限定して個人単位で試す構成が安全である。Anthropicの管理下にある組織プランでは、管理者側のMCP許可リスト登録が上位で効くため、そちらも同時に確認する。

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FAQ

Q1. Claude MCPでRecraftを使うのに追加費用は必要か

不要である。Recraft MCPそのものの利用料は設定されておらず、生成にかかるクレジットはRecraft Studioと同じサブスクリプションクレジットから消費される。REST APIを別途利用する場合のみ、APIユニットが別建てで課金される。

Q2. APIキーを~/.claude.jsonや環境変数に書く必要はあるか

必要ない。認証はClaude Desktopの設定経由、またはClaude Codeの/mcpパネルからブラウザ経由でRecraftにOAuthログインする方式である。トークンはローカルに保存され、鍵の直接的な貼り付けや環境変数への書き込みは発生しない。

Q3. Claude MCP経由でカスタムスタイルは作れるか

作れる。create_styleツールが公開されており、参照画像の集合とベーススタイルを渡すと、以後のgenerate_imageで参照できるカスタムスタイルIDが返る。作成時に指定したモデルとベーススタイルに紐付くため、モデルを切り替える案件では別途作り直す。

Q4. Claude Codeをブラウザで使うとRecraftの画像が表示されない

Recraft公式ドキュメントは、Claude Codeのマネージド環境が既定でネットワークを制限すると案内している。環境設定のネットワーク欄をカスタムに切り替え、許可ドメインにimg.recraft.aiを追加し、パッケージマネージャの既定リストを併記すると解消する。ローカルのClaude Codeでは追加設定は不要である。

Q5. Recraft MCPとRecraft APIはどう使い分けるか

ClaudeなどのMCPクライアントから会話の中で反復する場合はMCP、独自のバックエンドや自社ワークフローに組み込んで大量に処理する場合はAPIを使う。認証、残高、レート制限、監査ログの入り口が別建てのため、案件横断で使う場合はどちらか一方に運用を寄せる方が管理しやすい。

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