前提:ClaudeとRunway MCPの役割分担
Model Context Protocol(MCP)は、AIアプリケーション本体を「ホスト」、ホストから外部機能への接続を張るのが「クライアント」、外部機能を提供する側が「サーバー」と定義する三層構造の規格である。Claude Desktop・Claude Code・Claude Webは、この定義でいえば「ホスト兼クライアント」の側にあたる。Runway MCP Serverは「サーバー」であり、Runwayが自社および提携先を通じて提供する画像生成、動画生成、動画編集、Web用画像生成といった機能を、標準化されたツール定義としてクライアントに公開する。
Runwayは2026年5月27日、Runway MCPを一般公開した。公式発表によれば、Claude、ChatGPT、Cursorといった MCP対応ツールから、カスタム接続を通じてRunwayの生成機能を呼び出せる。認証はRunwayアカウントで完結し、別途のAPIキーは不要で、生成量は既存のRunwayプランに紐付く。
Anthropicは2026年7月28日にMCP仕様の新版「2026-07-28」を発表し、双方向ステートフルなプロトコルからリクエスト/レスポンス型のステートレス構造へ移行した。同発表の中でAnthropicは、コネクタディレクトリに登録されたMCPサーバーが950を超えると述べており、Runway MCPはその代表的な映像側の一つに位置付けられる。
Claude側から見ると、Runway MCPは「同じ会話文脈のまま、自然言語の指示だけでGen-4系の動画、Aleph 2.0の部分編集、Web用画像などを扱える外部ツール」として現れる。ユーザーが「この商品写真から一〇秒の縦動画を三本作って」と書くと、Claudeはツールカタログから該当機能を選び、パラメータを組み立て、Runwayに実行を依頼する。生成結果はチャットに戻り、次の指示でそのまま反復に入れる。
なぜブランド制作にClaude起点でRunwayを組む価値があるか
RunwayのWebアプリを直接使う運用と、Claudeから呼び出す運用は、生成できる出力そのものは変わらない。違いは、前工程と後工程を同じ会話の中に束ねられる点にある。
Claudeは、リサーチ、コピー、絵コンテ、シーン割り、レビュー観点の設計、社内共有用のサマリ作成といったテキスト側の工程を得意とする。一方、Runwayは、それらの工程で生まれた指示を、実際の映像素材や編集済みショットに落とす。両者を別々のツールとして往復させる運用では、指示の要約や貼り直しでコンテキストが失われ、反復のたびに人が介在する。ClaudeがMCPでRunwayを直接呼び出せると、企画から生成、レビュー、Aleph編集、確定までを一つの会話の中に束ねられる。
ブランド運用の観点では、この束ね方が三点で効く。第一に、ブランドガイドライン、過去アセット、承認履歴といったコンテキストを、生成の直前までClaudeが保持する。第二に、Claude Code側であれば、生成結果のファイル名、保存先、命名規則、フォルダ構造をコード側で担保でき、大量生成時の管理コストが下がる。第三に、Claude Fable 5などの上位モデルが企画・演出を担い、Runway側は実行と編集に専念する分業を、モデル切り替えなしで組める。
Claude Desktopでの接続手順
Claude Desktopでは、GUI上のコネクタ設定からRunway MCPを追加する。手順はRunway公式のMCP紹介ページに沿えば数分で完了する。
まず、Claude DesktopのSettingsを開き、Connectorsを選ぶ。「Add custom connector」または「Add remote MCP」から新規追加を開始し、名称欄にRunway、URL欄にRunway公式MCPページ(runway.com/mcp)に記載のサーバーURLを入力して保存する。保存後の一覧に表示されたRunway項目で「Connect」を押すと、ブラウザが起動しRunwayのログイン画面に遷移する。既存アカウントで認証すると、Claude DesktopとRunwayの間に接続セッションが張られる。
以降は新規チャットで「Runwayで一〇秒の商品紹介動画を三本作って」といった短い指示を送ると、Claudeがツール呼び出しの許可プロンプトを提示する。個別に許可するか、以後の呼び出しを一括許可するAlways Allowを選ぶかを、案件やアカウント方針に応じて決める。共有アカウントや管理下の組織アカウントでは、承認履歴を残す目的で、案件初期は都度承認を残すのが素直である。
Anthropicの管理下にある組織プランでMCPを使う場合、管理者側でMCP URLの許可リスト登録が必要になる。Runway側の管理者制限、接続元IP、SSOポリシーとあわせて、組織展開を始める前にAnthropic側の管理コンソールで許可済みかを確認しておく。
Claude Codeでの接続手順
Claude Codeでは、GUIではなくCLIコマンドまたは設定ファイルでMCPサーバーを登録する。Claude Code公式ドキュメントによれば、リモートMCPサーバーの追加コマンドは次の形になる。
claude mcp add --transport http runway <Runway公式MCP URL>
--transport httpは、Streamable HTTPトランスポートを使うことを示す。同ドキュメントはHTTPを「クラウド提供のリモートMCPで最も広くサポートされる方式」と説明しており、Runway MCPの公開エンドポイントもこの形式に一致する。追加後、Claude Code内で/mcpを実行すると、サーバー一覧、認証状態、公開ツール数、キャッシュ状態が一画面で確認できる。認証が必要な場合は/mcpのパネルからOAuthサインインに進み、ブラウザでRunwayにログインする。
スコープには三種がある。localは現在のセッションのみで有効、userは同ユーザーの全プロジェクトで有効、projectはプロジェクト直下の.mcp.jsonにコミットしてチームで共有する。ブランド案件で複数の担当者がRunway MCPを共用する場合は--scope projectを選び、.mcp.jsonに接続情報を残しておく。承認済みかどうかはclaude mcp listとclaude mcp get runwayの出力で追える。
Runway MCPの利用そのものにAPIキーは不要である。Runway公式発表が明記しているとおり、認証はブラウザ経由のRunwayアカウントログインで完結し、生成にかかるクレジットは通常のRunwayプランから消費される。APIキーを~/.claude.jsonや環境変数に埋め込む必要はなく、鍵ローテーションの運用も生じない。
Claude Fable 5とRunway MCPの分業設計
Anthropicの公式紹介動画では、Claude Fable 5がツール呼び出しやマルチステップの計画をどのように扱うかが解説されている。ブランド映像の制作では、この上位モデルに「絵コンテとカット割の設計」までを任せ、Runway MCPには「実際の生成と編集」を任せる分業が組みやすい。
下の公式動画では、Claudeがどのようにレイヤーを分けて思考し、外部ツールへの呼び出しを選ぶかが、Anthropic自身の解説として示されている。Runway MCPを叩く際に、Claude側で何が起きているかを把握するのに役立つ。
動画:Anthropic 公式チャンネルより引用
この視点で分業を組むと、Claude Fable 5が担うのは、ブランドの与件から演出方針、ショット構成、参照素材の指定、Aleph 2.0で何を編集するかまでの計画層である。Runway MCPが担うのは、Gen-4系による新規動画生成、Aleph 2.0による部分編集、Web用画像生成といった実行層である。両者の境界を会話の中で行き来しながら、確定した仕様だけを生成に落とす運用に近い。
Claude Codeから呼び出せる主な制作タスク
Runway MCP紹介ページと関連する公式発表の記述に沿うと、Claude Code側から扱える主要な制作タスクは次のように整理できる。いずれもClaude側で自然言語の指示に変換され、対応するツールがサーバー側で選ばれる。
- 動画生成:Runwayの現行世代動画モデルを用いた新規映像の生成
- 動画編集:Aleph 2.0による、最大30秒・1080pの部分編集。背景差し替え、商品の入れ替え、照明調整、不要物削除、映像全体の雰囲気変更を、変更箇所以外を保ちながら反映
- 画像生成:Runway上で提供される画像モデルを用いた、商品画像・Web用画像・広告用ビジュアルの生成
- Recipes連携:Runway Devで定義された定型処理をRunwayアカウント経由で呼び出せる範囲で活用
- マーケティング素材:商品ページのURL、参考画像、文章による指示から、商品画像、マーケティング動画、Webサイト用画像を同一会話内で生成
Runway公式ブログ「Introducing Runway MCP」(2026年5月27日公開)では、商品ページのURLと参考画像をClaudeに渡すだけで、商品広告動画とWebサイト用画像を一つの会話の中で並行して作る流れが示されている。個別モデルの選定はClaudeが担い、Runway MCPが実行に回るという分業が公式事例として提示されている。
Aleph 2.0を「編集の中心」に据える実務ワークフロー
Runwayは2026年5月21日、動画編集モデル「Aleph 2.0」と、同モデルを操作する編集画面「Edit Studio」を公開した。Aleph 2.0は、最大30秒・1080pの動画を読み込み、指定した対象だけを変え、ほかの部分を元映像に近い状態で保つ編集を特徴としている。
Claude MCP経由でRunwayを使う場合、Aleph 2.0の直接呼び出し範囲は、Runway側の提供状況に依存する。公式発表では、Aleph 2.0とEdit Studioは全有料プランのデスクトップWebアプリで提供されると明記されており、無料プラン、モバイルアプリ、APIで同じ機能を使えるとは公式発表に記載されていない。Claude MCP側からAlephの編集がフルで呼べるかは、契約プランと接続時点のRunway側の提供範囲によって変わるため、Claudeが返すツール一覧で該当機能の有無を都度確認する運用にしておく。
会話設計としては、Claudeに「元映像のどの要素を、どこまで、何色・何構図に変えるか」を先に確定させ、必要ならEdit Studio側で静止画プレビューを挟んでから、Aleph 2.0の実行に進む。Edit Studioは動画全体を生成する前に、変更後の見た目を1枚の画像として確認する機能を持っており、この事前確認をClaude側の会話にも取り込むと、無駄な動画生成の回数を減らせる。
Runway Devとの使い分け
Runwayは2026年7月23日、開発者・企業向けのAIメディア基盤「Runway Dev」を公開した。個別モデルを直接呼び出すAPIに加え、定型処理を組み合わせた「Recipes」と、複数のモデル・入力形式・処理を束ねた企業ごとの制作手順を組む「Workflows」を提供する。完成したWorkflowsには専用のAPI接続先が発行され、外部システムから繰り返し呼び出せる。
Claude MCPとRunway Devは、対象読者と接続層が異なる。Claude MCPは、Claude Desktop・Claude Codeの利用者が自然言語で単発〜数十本規模の生成を回すための接続層である。Runway Devは、Runwayの生成機能を自社プロダクトや社内システムに恒常的に組み込むための開発者向け基盤である。
ブランド制作の現場では、この二つを分けて設計するのが実務的である。企画・少ロット・レビュー往復はClaude MCP経由で回し、月間数千枚規模の商品画像生成、多言語展開、放送・小売の定型フローはRunway Dev側のWorkflowsに落として、社内システムから呼び出す構成にする。Runway公式発表では、放送会社が年間800〜1,000本の広告を50以上のスタジオレーベル向けに制作する例や、小売企業が月1,000枚以上の商品画像を生成する例、フードデリバリー企業が商品動画を27言語へ展開する例が、Runway Dev利用の代表例として挙げられている。
Higgsfield MCPとの比較
Runway MCPとHiggsfield MCPは、いずれもClaude Desktop・Claude CodeからMCP経由で呼び出せる映像側の代表格である。設計思想は近いが、扱える範囲と組み方に差がある。
第一に、モデルの内包範囲が違う。Runway MCPは、RunwayのGen-4系・Aleph 2.0・Frames系・自社および提携先モデルを、Runwayが選定した組み合わせで開放する構造に近い。Higgsfield MCPは、Runway上のモデルを含むSoul、Cinema Studio、Kling、Seedance、Veoなど三十以上の外部モデルを、Higgsfield側のスキル群と一緒に開放する構造である。
第二に、編集の強みが違う。Runway MCPは、Aleph 2.0という「変更箇所以外を保つ部分編集」を軸に据えており、既存映像の修正・差し替え・雰囲気変更を反復する制作に向く。Higgsfield MCPは、生成モデルの網羅性と、キャラクター学習・カメラ動作制御・モーション制御などの生成側スキルを軸に据えており、新規映像を大量に作る制作に向く。
第三に、企業向け基盤との接続が違う。RunwayはRunway Devという開発者向け基盤を持ち、Claude MCPと役割を分けやすい。Higgsfieldは同社Supercomputer側で企画・実行を束ねる設計に近い。
どちらか一方に絞る必然性はなく、Claude Code側の.mcp.jsonに両者を並べ、案件ごとにClaudeへ「今回はRunwayを使う/Higgsfieldを使う」と明示して分ける運用も現実的である。
Runway Enterprise契約時の対応
Runwayは企業向けの条件として、顧客データをモデル学習へ使わない契約上の約束と、データを保持しない設定への対応を案内している。Claude MCP経由の生成でも、この条件はRunway側のアカウント種別に紐付く。
MCP接続そのものが標準プランの利用条件下にあるのか、Enterprise契約下にあるのかは、認証時に使うRunwayアカウントで決まる。ブランド案件で未発表商品、顧客素材、人物写真を扱う場合は、Enterprise契約下のアカウントでMCP認証を通し、Runway側のデータセキュリティ文書に沿った設定(学習利用の無効化、データ保持ポリシー、SSO、監査ログ)が有効になっていることを事前に確認する。
Claude側の許可粒度も同時に締める。Claude DesktopのAlways AllowとClaude Codeの.mcp.json共有では、生成呼び出しが自動で走る前提になる。Enterprise案件では、都度承認を残すか、.mcp.jsonのスコープをuserに限定して個人単位で試す構成が安全である。Anthropic Managed Planでは、管理者側の許可リストが上位で効くため、そちらの登録も同時に確認する。
よくある質問
Claude MCPでRunwayを使うのに追加費用は必要か
不要である。Runway MCPそのものの利用料は設定されておらず、生成にかかるクレジットは通常のRunwayプランから消費される。Runway Devを併用する場合は、Runway Dev側の料金体系がモデル単価で別途課金される。
APIキーを~/.claude.jsonや環境変数に書く必要はあるか
必要ない。認証はClaude Desktopのコネクタ画面、またはClaude Codeの/mcpパネルからブラウザ経由でRunwayにログインする方式である。トークン管理と鍵ローテーションの運用は生じない。Runway Devを別途組み込む場合のみ、Runway Dev側の開発者向けAPIキー管理が別レイヤーで必要になる。
Claude Codeでclaude mcp addを実行する際に指定するトランスポートは何か
http(Streamable HTTP)である。Runway MCPの公開エンドポイントはHTTPで、Claude Code公式ドキュメントもリモートMCPに対してはHTTPを推奨している。SSEやWebSocketを指定する必要はない。
Aleph 2.0の部分編集はClaude MCP経由でどこまで呼べるか
Aleph 2.0とEdit Studioは、Runway公式発表では全有料プランのデスクトップWebアプリで提供されると明記されている。MCP経由でどのAleph機能がツールとして開かれているかは、接続時点のRunway側の提供範囲に依存する。Claudeが返すツール一覧、およびRunway公式MCPページの記載を都度確認する運用が安全である。
生成物の商用利用は可能か
Runwayの利用規約は、契約プランごとに商用利用可否と権利帰属の条件を定めている。入力素材、人物、ロゴ、商品、第三者権利について必要な許諾を得る責任は利用者にある。第三者モデルを介した生成物には、それぞれの提供元の利用条件も適用されるため、案件ごとに契約条項と当該モデルの規約をあわせて確認する。
まとめ
Claude Desktop・Claude CodeからRunway MCPを呼び出す運用は、Runway単体を使うより、企画から生成、Aleph 2.0による編集、レビュー、確定までを一つの会話に束ねられる点で差が出る。Claude Desktopはコネクタ画面から、Claude Codeはclaude mcp add --transport http runway <公式MCP URL>から追加でき、いずれも認証はブラウザ経由のRunwayログインで完結する。APIキーを扱う必要はない。
Anthropicが2026年7月28日にMCP仕様の新版を出し、Runwayも2026年5月にMCP、7月にRunway Devを公開したことで、Claude起点の会話とRunway側の実行・編集・恒常運用が三層に整理された。ブランド運用側は、Claude Fable 5などの上位モデルに企画・演出を任せ、Runway MCPに実行と部分編集を任せ、量産や社内システム組み込みはRunway Dev側のWorkflowsに逃がす分業を組めるようになった。
Claude側の許可設計、Runway側のアカウント種別と学習利用可否、Aleph編集の提供範囲、クレジット上限のいずれかひとつでも空欄のまま運用を広げると後工程で事故になりやすい。導入時にはこの四点をシステムプロンプトかSkill定義に書き込み、案件横断で共通化しておく。個々のモデル特性や運用テンプレは、当社の生成モデルマップと関連稿で扱う。
公式情報
- Runway MCP公式ページ
- Introducing Runway MCP(2026-05-27)
- Introducing Aleph 2 and Edit Studio(2026-05-21)
- Introducing Runway Dev(2026-07-23)
- Runway Devポータル
- Runway API料金(Runway Dev)
- Runwayのデータセキュリティ
- Runway利用規約
- Runway料金ページ
- Connect Claude Code to tools via MCP(Claude Code公式ドキュメント)
- Bringing MCP 2026-07-28 to Claude(Anthropic公式・2026-07-28)
- Model Context Protocol公式サイト
- Introducing the Model Context Protocol(Anthropic公式アナウンス)
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