Skill と MCP の役割分担 — なぜ Runway を Skill でくるむのか

Runway MCP は、Claude から Runway の Gen-4 動画生成、Aleph 2.0 の部分編集、Frames の画像生成、音声モデルを呼び出す「接続」の層である。接続だけでは、誰がどの場面でどのモデルを呼び、どの入力を渡し、どうレビューするかが担当者に委ねられる。同じ Runway を使っても、成果物の一貫性と再現性は担当者ごとに散る。

Skill は、その「判断の基準」の側を Claude に持たせる仕組みである。Anthropic の Claude Code ドキュメントは Skill を「同じ指示や手順を繰り返し貼っている場面、あるいは CLAUDE.md の一節が事実ではなく手順に育っている場面で作るもの」と定義している。SKILL.md 本体は必要な場面でのみ読み込まれる設計で、読み込まれないあいだは会話の枠を占めない。

Runway の運用に当てはめると、Skill の役割は四点に整理できる。第一に、どのモデル(Gen-4 / Aleph 2.0 / Frames / 音声)をどの順で呼ぶかを手順として書き下ろす。第二に、ブランドガイドラインの禁止表現、必須色、被写体の扱い、命名規則を SKILL.md 内に埋め込む。第三に、動画の長さ、縦横比、フレームレート、書き出し形式の既定値を明記する。第四に、Aleph 2.0 で部分編集に回すか、Gen-4 で再生成するかの選択規則を書く。

MCP が「Claude に何ができるか」を広げる層だとすれば、Skill は「Claude が特定の場面で何をどう行うか」を狭めて統制する層である。両者は代替関係ではなく、下敷きとして MCP が動いた上に Skill が乗る構造で運用する。

SKILL.md の設計 — Runway MCP を呼び出すパッケージの中身

Custom Skill の最小構成は、フォルダ入口に置く SKILL.md 一枚である。frontmatter に namedescription、本文に発動条件、対象業務、想定入力、想定出力、呼び出す MCP ツール、レビュー観点、保存先を記述する。Anthropic の Agent Skills ドキュメントは、この description が「Claude が発動するかを決める最重要行」と明記している。動画生成は実行時間が長く書き直しの負担も大きいため、発動判断の精度が効く。

Runway を扱う Skill の本文には、MCP ツールを Runway: 名前空間で参照する。Anthropic の Enterprise ドキュメントは、この参照形式を ServerName:tool_name と明記しており、たとえば Gen-4 の動画生成は Runway:generate_video の形で書き込む。呼び出すツールを最小限に絞り、想定入力と想定出力を列挙する運用が基本である。

Runway 特有の項目として、生成後の分岐条件を SKILL.md に埋め込む。動画の一部だけ差し替える場合は Aleph 2.0 の部分編集に回し、被写体ごと差し替える場合は Gen-4 で再生成する、といった判断規則を Claude 側で走らせる材料である。絵コンテのフォーマット、ブランドガイドの動画用抜粋、書き出し設定表を同じフォルダに置くと、発動時のみ読み込まれる。

SKILL.md には認証情報を書かない。Runway MCP はブラウザ経由の OAuth で接続する設計で、API キーの入力は不要である。ハードコードは Anthropic の Enterprise ガイドでも高リスクとして明記されている。Runway Dev の API キーを併用する場合も、実行環境の環境変数から Claude Code 側が受け取る構成にする。

Custom Skill を Claude Code で配布する

Claude Code では、リポジトリ直下の .claude/skills/<skill-name>/SKILL.md を置くだけで Skill が読み込まれる。ブランド運用チームは、Runway を扱う Skill をリポジトリの一部としてバージョン管理し、git のブランチ運用で改訂を回せる。Claude Code のドキュメントは、この配布経路を Skill 導入の最も軽い入り口として案内している。

社内の複数リポジトリで同じ Runway Skill を使いたい場合は、.claude/skills/ を git submodule で共有する方法と、Claude Code のプラグインとして plugin install で配る方法の二つがある。プラグイン化は、Skill 単体だけでなく、関連する MCP 設定やコマンドを同梱できる点で、制作会社を含む複数組織に配る場面で扱いやすい。

配布時の注意点として、Claude Code の Skill は同時に読み込む本数が多いほど発動判断の精度が落ちる。Anthropic のドキュメントも「同時に読み込む Skill が多すぎると Claude が発動対象を選び間違える」と案内している。Runway 用の Skill を機能ごとに細かく分けるより、対象業務ごとに一本にまとめ、ブランド運用チーム全員が同じ Skill を呼ぶ形が現実的である。

claude.ai と Enterprise でチームに配布する

claude.ai の Team および Enterprise プランでは、管理者機能から Custom Skill を組織全体に配布できる。管理者が有効にした Skill は、その組織のメンバー全員で初期状態が有効になり、個々のメンバーは自分の判断で無効化できる。組織側で「使わせる下地」を作り、個人側の柔軟さは残す二段構えの設計である。

Runway を扱う Skill を Enterprise で配布する手順は次の通りである。Skill 作者が SKILL.md と参照資料を含むフォルダを zip でまとめ、claude.ai の Organization settings の Skills からアップロードする。Enterprise で Skill and plugin security scanning を有効にしていれば、ヒドゥンなコード実行、外部への送信、Claude の安全策を書き換える指示などの兆候を自動検査する。検査が通らない Skill は組織内で利用不可になる。

Runway MCP を呼ぶ Skill は「高リスク要素」に該当する。動画は入力素材が未発表商品、人物、撮影現場を含む場面が多く、自動スキャンだけに頼らず、後述のレビューを人手で通す運用が前提である。Aleph 2.0 の部分編集を含む Skill は、生成元と書き出し先が Runway 側に残るため、データ保持設定と揃えてから配布する。

Skills API でワークスペース全体に配る

API 経由で Claude を動かしている運用では、Skills API /v1/skills を使って Skill をワークスペースにアップロードする。アップロード済みの Skill は、ワークスペースのメンバー全員から呼び出せる。API リクエスト単位では、同時に指定できる Skill は最大 20 本である。

Runway を扱う Skill を API で配布する場合、注意点は三つある。一つ目は、API 側のアップロードは Enterprise の自動セキュリティスキャンの対象外である点である。人手レビューとバージョン固定でリスクを抑える。二つ目は、Skills API と claude.ai と Claude Code のあいだで Skill は自動同期しない点である。同じ Skill を各サーフェスに配る場合、Git 上の正本から個別に配布する運用が必要になる。三つ目は、認証情報を Skill 内に埋め込まないことである。Runway MCP は OAuth 認証で、Runway Dev の API キーも実行環境側で保持する。

サーフェス横断の管理 — 同期しない前提の運用

Anthropic の Enterprise ガイドは、Custom Skill が Claude.ai・Claude Code・API のあいだで自動同期しないことを警告として明示している。API にアップロードした Skill は claude.ai や Claude Code から見えず、逆方向も同じである。ブランドチームが複数の入口で同じ Runway Skill を運用する場合、この非同期を前提にした設計が必要である。

現実的な運用は次の形になる。Skill の正本は Git のリポジトリで一つに保つ。リポジトリの直下は Claude Code の .claude/skills/ にそのままマップする。claude.ai には管理者アップロードで同じフォルダを zip 化して上げる。API には SDK 経由の CI で自動アップロードする。三つの入口に配る作業は分岐するが、正本は一つに閉じる。

この非同期を放置すると、Claude Code は最新版だが claude.ai は旧版のまま、といったずれが起きる。Runway 側は Gen-4 や Aleph 2.0 の更新が短い周期で入るため、旧版が残ると存在しない引数を呼びに行く事故になる。バージョン番号を SKILL.md の frontmatter に持たせ、配布時にログとして残す運用が最低限の防波堤である。

セキュリティレビューと自動スキャン

Anthropic は Skill を「本番システムにソフトウェアをインストールするのと同等の厳しさで扱う」と Enterprise ガイドに明記している。第三者や内部の別チームが書いた Skill を配る前に、次の八項目のレビューを通す。SKILL.md と参照資料と同梱スクリプトを全て読み下す。スクリプトの実挙動が説明文と一致することを隔離環境で確認する。Claude の安全策を書き換えたり動作を隠したりする指示がないかを確認する。外部 URL への fetch や curl の呼び出しを走査する。API キーやトークンのハードコードがないことを確認する。Claude に対して bash やファイル操作を指示する行を洗い出す。遷移先ドメインが想定通りかを確認する。機密データを読んで外に送る二段構えのパターンがないかを確認する。

Runway を扱う Skill は、Runway: 名前空間の MCP ツールを呼び出す指示を含む時点で、Enterprise の risk tier で高い側に該当する。動画は入力素材の分量が多く、被写体の権利、撮影地、未発表情報が付いて回るのが実務の常である。作者と査読者を分ける separation of duties を組織側で徹底し、Skill 単体の隔離テストと、既存 Skill と並べたときの共存テストを両方通す。

Enterprise の自動スキャンは、この人手レビューを補うが置き換えるものではない。Anthropic のドキュメントも「補完するが置き換えない」と明記している。API 経由の Skill、customer-managed encryption keys、zero data retention、HIPAA readiness の構成では自動スキャンが対象外になるため、レビュー体制の設計はいずれにせよ人手を前提に組む。

バージョン管理と評価

本番運用では、Skill をバージョン番号で固定する。Anthropic のドキュメントは、バージョン指定を省略すると最新版が呼び出されるため、ワークスペースの誰かが新版を上げた瞬間に本番の挙動が変わると警告している。Runway を扱う Skill のように、映像そのものが提出物となる運用は特に、本番はバージョン固定、検証環境で最新版、が既定である。

新版を本番に上げる前には、Skill 単体の隔離評価と、既存 Skill と組み合わせた共存評価を通す。Anthropic の best practices ドキュメントは、Skill 作者に代表的な三〜五本のテストクエリを求め、発動すべき場面、発動すべきでない場面、判断が割れる境界の三種を含めるよう案内している。Runway を扱う Skill では、たとえば「商品カットから一〇秒の縦動画を三本」「既存動画の背景だけ差し替え」「絵コンテ通りのショット順で再生成」といった代表ケースをテスト集として持ち、モデル(Haiku・Sonnet・Opus)ごとに挙動が揃うかを確認する。

Skill を消す判断も評価に紐づける。三ヶ月連続で発動しない、精度が落ち続ける、ガイドライン改訂で存在意義を失った Skill は迷わず廃止する。Skill を絞る姿勢が判断精度と混乱抑制の両方に効く。

関連する記事

FAQ

Q1. Claude Skills の公式パートナー Skill に Runway は含まれるか

現時点で、Anthropic の Skills Directory に Runway の公式パートナー Skill は掲載されていない。Canva、Notion、Box、Figma、Atlassian などがパートナー Skill として掲載されているが、Runway はここに含まれない。組織で Runway を Skills 経由で運用したい場合は、Runway MCP を呼び出す Custom Skill を自作する設計になる。

Q2. Custom Skill から Runway MCP を呼び出す書式は何か

SKILL.md の本文中で Runway:generate_video のように、サーバー名とツール名をコロンで区切って参照する。Anthropic の Enterprise ドキュメントは、この参照形式を「MCP server references」として risk tier の項目に列挙している。書き手は、呼び出すツールを最小限に絞り、想定入力と想定出力を SKILL.md 内に列挙する運用にする。

Q3. Skill を Claude.ai と Claude Code と API に同時配布できるか

自動同期はできない。Anthropic の Enterprise ガイドは、Custom Skill が三つのサーフェスのあいだで同期しないことを警告として明記している。Git 上に正本を一本持ち、Claude Code は .claude/skills/ に mapping、claude.ai は管理者アップロード、API は Skills API /v1/skills に CI から自動アップロード、という配布経路をそれぞれ組む必要がある。

Q4. Runway MCP の認証情報を SKILL.md に書く必要はあるか

必要ない。Runway MCP は Claude Desktop のコネクタ画面、または Claude Code の /mcp パネルから、ブラウザ経由で Runway アカウントにログインする OAuth 方式である。Skill 側に API キーを書くと、Enterprise ガイドの高リスク要素に該当する。Runway Dev の API キーを併用する場合も、Skill 本体ではなく実行環境の環境変数から Claude Code 側が受け取る構成にする。

Q5. Skill を何本まで同時に有効化できるか

API リクエスト単位では、同時指定できる Skill は最大 20 本である。claude.ai や Claude Code では明示的な上限はないが、Anthropic は「同時に読み込む Skill が多すぎると Claude が発動対象を選び間違える」とドキュメントで案内している。案件ごとに、必要最小限の Skill を有効化する運用が推奨される。

情報源