2025年版は2本のAI映像を公開した
2025年11月3日、The Coca-Cola Companyは年末キャンペーン「Refresh Your Holidays(ホリデーを再び)」を発表しました。中心となる映像は3本です。
- 実写作品「A Holiday Memory」
- 60秒の「Holidays Are Coming(クラシック版)」
- 90秒の米国限定版「Holidays Are Coming, Fantastical(ファンタジー版)」
このうち後半の2本が、Secret LevelとSilverside AIによるAI映像です。コカ・コーラは2024年にも、両社とThe Wild Cardの3社で1995年CMを再制作していました。2025年のコカ・コーラ公式発表でAI映像の制作主体として挙げられたのは2社です。
2025年のキャンペーン全体が生成AI映像だけで構成されたわけではありません。実写の「A Holiday Memory」もあり、AI映像は2本です。
また、90秒の「Fantastical」は米国限定と明記されています。キャンペーン全体とAI映像、世界向けの映像と米国限定版は、分けて捉える必要があります。

画像:コカ・コーラ公式発表の公開画面(引用)。2025年版のAI映像をSecret LevelとSilverside AIが制作したことを確認できます。
改善点はカメラ、物理表現、物語の一貫性
コカ・コーラの公式発表は、2025年版で改善した点を具体的に挙げています。
- 画面に指示を書き込む操作で、カメラの向きや動きを調整する
- 映像内の動きが現実らしく見えるよう、物理表現を整える
- カットが変わっても物語の流れが途切れないようにする
- 動物などの姿を、カットが変わっても同じように保つ
- 地域や視聴者に合わせた複数版を作る
完成映像だけでなく、クラシック版とファンタジー版それぞれのメイキング動画も同じ公式ページで公開されています。AI広告を評価するときは、完成映像の一場面だけを見るよりも、生成したカットをどのように選び、つなぎ、修正したかを確認した方が、制作の実態をつかみやすくなります。同じ観点は、ブランド案件全般の見立てにも使えます(参考: ブランド生成AI事例の追い方)。
これらはコカ・コーラの生成AI部門責任者による公式説明です。個別の生成モデル名、生成指示、生成回数を公開した技術仕様ではありません。「改善した」という会社側の説明と、第三者による画質評価は分けて扱う必要があります。
Silverside AIは5人だけで作ったわけではない
Silverside AI(シルバーサイドAI)の公式事例によると、同社側の中核チームは5人でした。ただし、完成までには20人を超える各分野の専門家と協働しています。
「5人で制作」という数字だけを切り取ると、案件全体の人数と誤解します。5人はSilverside側の中核チームで、同社は20人を超える各分野の専門家と協働したと説明しています。コカ・コーラも、音楽は人が演奏・歌唱したと明記しています。
公開資料には、AIによる映像生成と地域別展開に加え、音楽を人が演奏・歌唱したことが記録されています。少なくとも、制作の全工程をAIへ置き換えた事例とは確認できません。
コカ・コーラは、企画の目標や方向性は人が決め、AIは制作を進める手段として使う方針も公式発表で述べています。ただし、これはブランド側の制作方針です。案件の全クレジットや、各カットの担当者一覧を示すものではありません。少人数チームがAI広告を回す仕組みそのものについては、別の事例分析としてBakersが公表したAI広告ワークフローも参照できます。

画像:Silverside AI公式事例の公開画面(引用)。同社は中核チーム5人と、20人を超える各分野の専門家が協働したと説明しています。
2024年版との違い
| 項目 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 制作会社 | Secret Level、The Wild Card、Silverside AI | Secret Level、Silverside AI |
| AI映像 | 「Silver Santa」「Secret Santa」「Unexpected Santa」 | 60秒のクラシック版、90秒の米国限定ファンタジー版 |
| 公式が強調した点 | 地域別要素を入れる展開 | カメラ、物理表現、カット間の物語と動物の姿のつながり |
| 公開資料 | キャンペーン説明 | 完成映像に加えて2本のメイキング |
2年分を並べると、コカ・コーラが定番CMという同じ題材を使い、生成映像の作り方を更新してきたことが分かります。
2024年の公式発表では、ボストン向け映像に「Welcome to Boston」の看板を入れる例を挙げ、地域に合わせて映像を作り分ける方法を説明していました。2025年は、地域別の作り分けに加えて、カメラの調整や物理表現、カットが変わっても物語が続くことを前面に出しています。比較できるのは、両年の公式発表が強調した点であり、同じ評価条件で測った性能差ではありません。
何が公開され、何が公開されていないか
公式資料から確認できる情報は、制作主体、作品尺、公開地域、会社が説明した改善点、Silverside側の協働体制、音楽を人が演奏・歌唱したこと、完成映像とメイキングです。
一方、次の情報は今回参照した公式ページでは確定できません。
- 使用した生成モデル名とバージョン
- 各モデルをどのカットへ使ったか
- 生成指示、入力画像、生成回数、採用率
- 制作費、従来制作との費用比較
- Secret Levelを含む案件全体の人数
- Silversideの中核5人以外の全員の担当範囲
- 学習データ、入力素材、契約上の権利処理の詳細
メイキング映像に制作画面が出ても、画面からモデルや契約条件を推測して断定しません。「5人」「20人超」といった数字も、Silverside側が公開した体制の範囲で使います。同じ姿勢で他社事例を並べる場合の枠組みはAIクリエイティブ導入事例集にまとめています。
完成映像とメイキングを見る順番
最初に60秒のクラシック版を見て、トラック、商品、動物、雪景色がカットをまたいでつながるかを確認します。次に90秒のファンタジー版で、登場する動物や舞台が増えたときにも、同じ映像としてまとまって見えるかを確かめます。最後にメイキングを開き、完成映像だけでは見えない制作画面や2024年版との比較を確認します。
見る項目は次の4つで十分です。
- 商品、ロゴ、トラックの形がカット間で変わらないか
- 動物や背景の位置関係が次のカットへつながるか
- カメラ移動と物理表現が不自然に切れないか
- 音楽、編集、物語が生成映像を一つの広告へまとめているか
この4項目は公式の審査基準ではなく、完成映像と公式が説明した改善点を照合するための編集部の観察項目です。ブランド側で同種の観察軸を運用する場合は、ブランドAIの品質ゲート設計も併読すると、通過基準の言語化に踏み込めます。
ブランド案件で確認すべきは人数より承認工程
公式資料から確認できるのは、AIによる映像生成と地域別展開、音楽を人が演奏・歌唱したこと、Silverside側の協働体制です。企画、演出、編集、ブランド確認の担当者までは、今回参照した公開資料だけでは特定できません。そのため、以下は公式の制作クレジットではなく、編集部がブランド案件の導入時に確認すべき項目です。
- 商品、ロゴ、自社で権利を管理する表現要素を誰が確認するか
- 生成した素材を誰が選び、編集するか
- 音楽、出演、学習データの権利をどう処理するか
- 地域別の変更をどこまで許可するか
公開資料を読む限り、2025年版は生成AIだけで全工程を完結した事例ではありません。音楽は人が演奏・歌唱し、複数分野の専門家が協働しています。そのうえで複数版を作り分け、カット間のつながりや動きを調整した事例と編集部は捉えています。個人クリエイターがブランド案件で同種の役割を担う流れは、Chad NelsonのOpenAI協業ワークフローにも見られます。
公式動画と制作資料
コカ・コーラ公式のキャンペーンページでは、完成映像と制作過程を紹介する映像が案内されています。執筆時点で日本から確認したところ、公式YouTubeの90秒版とメイキングは2本とも再生できませんでした。公開地域や設定は変わる可能性がありますが、再生できる地域では、完成映像と制作過程を見比べられます。
以下の動画は、コカ・コーラ公式YouTubeが公開しているキャンペーン映像です。
動画:Coca-Cola 公式チャンネルより引用
動画:Coca-Cola 公式チャンネルより引用
一次資料リンク
- The Coca-Cola Company 2025年公式発表: Refresh Your Holidays
- The Coca-Cola Company 2024年公式発表: Holiday Heritage × Cutting-Edge Tech
- Silverside AI公式事例: Coca-Cola Holidays 2025
- Coca-Cola公式YouTube: Holidays Are Coming(クラシック版)
- Coca-Cola公式YouTube: Holidays Are Coming, Fantastical(米国限定版)
- Secret Level公式サイト
よくある質問(FAQ)
Q1. 2025年のコカ・コーラAI広告は、どの会社が制作したのですか。 A. 2025年版のAI映像2本は、Silverside AI(シルバーサイドAI)とSecret Levelが制作したと、The Coca-Cola Companyが公式発表で明示しています。2024年版に参加していたThe Wild Cardは、2025年の公式発表ではAI映像の制作主体として名前が挙がっていません。
Q2. 「5人で作った」という報道は本当ですか。 A. Silverside AI公式事例には、同社側の中核チームが5人で、完成までに20人を超える各分野の専門家と協働したと記されています。5人はSilverside側の内側の数で、案件全体の関与者数ではありません。Secret Level側の人数や、コカ・コーラ社内の担当者数は公表されていません。
Q3. 音楽もAIで生成したのですか。 A. コカ・コーラは公式発表で、音楽は人が演奏・歌唱したと明記しています。2025年版はAI映像と実写作品、人が担当した音楽を組み合わせたキャンペーンであり、全工程をAIに置き換えた事例ではありません。
Q4. 2024年版と2025年版で、公式が強調したポイントはどう違いますか。 A. 2024年版は地域別要素を入れる展開(例: ボストン向け映像の「Welcome to Boston」看板)を軸に説明していました。2025年版は、地域別展開に加えて、カメラや物理表現の調整、カットが変わっても物語と動物の姿がつながるようにした点を前面に出しています。ただし両年の説明は制作会社側の主張であり、同一条件で測った性能比較ではありません。
Q5. 使用した生成AIモデル名は公表されていますか。 A. 今回参照したコカ・コーラおよびSilverside AIの公式資料では、使用モデル名、バージョン、生成回数、採用率、制作費は公表されていません。メイキング映像に制作画面が映る場面はありますが、画面から特定モデルを断定することは避けています。
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