CREATOR Actとは

CREATOR Actは、「Creative Rights Ensuring Artists’ Technique and Originality Are Reserved Act」の略称です。法案の正式記録では、ベス・ヴァン・ダイン議員が提出者、イベット・クラーク議員とヴァレリー・フーシー議員が共同提案者として記載されています。

議員による公式発表では、視覚アーティストの特徴的な作風を生成AIで意図的に再現し、無断で商業利用する問題に対応する法案と説明されています。法案本文が提案しているのは、著作権や商標権とは別の連邦知的財産権です。作家本人、または権利を正式に引き継いだ個人・組織が、対象となるAI生成物の商業利用や公開を許可できる仕組みになっています。

CREATOR Actを発表した米国議員の公式ページ

画像:イベット・クラーク議員公式サイトをAIGC TIMES編集部より引用。## 法案が保護しようとしているもの

法案が権利の対象としているのは、特定の視覚アーティストの表現に見られる複数の特徴を組み合わせ、その作家の作風をまねたAI生成の静止画です。個々の特徴やアイデア、ジャンル、芸術運動、一般的な表現方法そのものに独占権を与える内容ではありません。

作風が似ているかどうかだけで判断するのではありません。プロンプトや設定、宣伝などから特定作家の作風をまねる意図が認められるか、複数の特徴を組み合わせて再現したか、無断で商業利用または公開したかなどが問われます。

法案が対象にする行為と主な条件

法案本文を、実際に判断する順番へ整理すると、主な条件は次の5つです。

  1. プロンプトや設定、宣伝などから、特定の視覚アーティストの作風をまねる意図が認められる
  2. AIで生成した静止画に、その作家の表現に見られる複数の特徴が再現されている
  3. その作家が制作した、制作に関わった、または承認した作品だと誤解される可能性がある。もしくは、その作家の受注や作品販売などの商業市場に影響を及ぼす可能性がある
  4. 権利者の書面による許可を得ず、米国の州際通商に関わる形で販売、ライセンス提供、公開配布などを行う
  5. 行為者が法案の対象となる生成物だと知っていた、または事実の確認を意図的に避けていた

ここでいう「公開配布」には、ウェブサイトやオンラインサービスへの掲載も含まれます。一方、公開されていない個人的な試作まで同じように扱う規定ではありません。

対象となる「視覚作品」は、イラスト、写真、グラフィックデザイン、絵画、ドローイングなど、画像ファイルや印刷物といった媒体に記録された静止画です。映画、映像作品、音声は定義から除かれています。

対象外とされる表現

広く使われている表現、ジャンルの慣習、芸術運動などは対象外です。特定作家の作風を狙わず、人が独自に制作した作品も対象にはなりません。AIを使っていても、AIが作った部分が作品全体の重要な部分に当たらない場合は除外されます。

一般用途のAIサービスは、提供しただけで責任を問う構成ではありません。ただし、特定作家の作風をまねる目的で設計・設定され、その機能を持つサービスとして明示して販売された場合は例外です。

批評、研究、教育、報道、パロディ、風刺なども除外規定に含まれます。元の作家との類似がごくわずかな場合も対象外です。ただし、作品の出所や本人の承認について誤解させる商業利用まで、無条件で認める規定ではありません。

CREATOR Actはまだ成立していない

CREATOR Actは提出段階の法案です。米国著作権局の「Legislative Developments」でも、成立済みの法律ではなく、2026年6月2日に提出された第119議会の法案として掲載されています。

米国著作権局の法案一覧。CREATOR Actは第119議会へ提出された法案として掲載されている

画像:米国著作権局公式サイトをAIGC TIMES編集部より引用。米国著作権局の公式動画では、AIと著作権の関係が議論されています。CREATOR Actは、既存の著作権とは別に、特定の視覚アーティストの作風を狙ったAI生成物へ新しい権利を設ける提案です。

動画:U.S. Copyright Office 公式チャンネルより引用

そのため、次のような理解は正確ではありません。

  • 米国では、AIによる作風の模倣がすべて違法になった
  • 特定の作家名をプロンプトに入れることが一律に禁止された
  • 日本企業にも同じルールがそのまま適用される
  • 法案に記載された損害賠償が、成立済みの制度として確定した

法案の提出と法律の成立は別です。今後の動きを追うときは、法案番号、修正の有無、採決状況、成立日を分けて確認する必要があります。

日本の企業やクリエイターはどう読めばよいか

CREATOR Actは米国の法案であり、日本での法的判断を直接示すものではありません。一方、生成AIを使った制作や発注をめぐり、著作権とは別に作風をどう扱うかが議論されていることは確認できます。

未成立の法案を、そのまま社内規定として採用する必要はありません。特定の作家名を安易に制作指示へ入れない、制作物が既存作品に似すぎていないか公開前に確認する、外部制作会社との契約で入力素材と生成物の扱いを決めるといった管理は、法案の成否と切り分けて検討できます。

ただし、「作風の模倣は禁止」とだけ決めても、担当者は判断できません。比較した作家と作品、似ていると判断した具体的な箇所、商用利用前に確認する担当者まで決めておく必要があります。

今後の審議で確認すること

今後は、司法委員会で審議が進むか、修正案や関連法案が提出されるか、下院・上院で採決されるかを確認します。法案の名称だけで追うと旧版や別の資料と混同する可能性があるため、H.R.9112という番号と第119議会の記録を基準にします。

CREATOR Actが提起しているのは、AI生成物の著作権そのものとは別に、作家の作風を商業的に模倣する行為へ新しい権利を設けるべきかという問題です。成立前の段階で結論を先取りせず、法案が何を保護し、どこを対象外としているのかを確認することが大切です。

生成AIを企業で扱う際の基礎項目は、無料の生成AI技術活用 理解度チェック15リストでも確認できます。

CREATOR Actの公式情報、ここにまとめました


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