「似ている」だけで決まる法案ではない

CREATOR Actは、特定の視覚アーティストの作風を狙って再現したAI生成物を「stylistic impersonation」と定義しています。法案本文では、プロンプトや設定、サービスの宣伝、生成物の紹介などで作家名や作品を明示したことが、特定の作家を意図的に狙ったと判断する材料の一つに挙げられています。

作風の特徴が一部似ているだけでは足りません。その作家の表現に見られる複数の特徴がまとまって再現され、その作家が制作した、制作に関わった、または承認した作品だと誤解される可能性があることも条件です。その作家の作品が売買される市場への影響も判断材料に含まれます。

米国著作権局の公式動画は、AIと既存の著作権の関係を理解するための背景資料です。CREATOR Actは、具体的な作品の複製とは別に、特定作家の作風を狙ったAI生成物の利用を扱おうとしています。

動画:U.S. Copyright Office 公式チャンネルより引用

CREATOR Actの対象を説明する米国議員の公式発表

画像:イベット・クラーク議員公式サイトをAIGC TIMES編集部より引用。

法案の条件を5点に整理

法案本文の複数の規定を、内容が分かりやすい順番で5点に整理しました。

  1. 特定の視覚アーティストを意図的に対象にしている
  2. AIを使って全体または重要な部分を生成した静止画である
  3. その作家の表現に見られる複数の特徴を組み合わせて再現している
  4. その作家が制作した、制作に関わった、または承認した作品だと誤解される可能性がある。または、その作家の作品が売買される市場に影響を及ぼす可能性がある
  5. 米国の州際通商に関わる形で無許可の販売、ライセンス提供、公衆への配布などを行い、対象となる生成物だと知っていた、または確認を意図的に避けていた

これは法案本文の複数の規定を編集部が整理したものであり、法案が同じ5項目を列挙しているわけではありません。また、成立済みの法律や裁判基準でもありません。

法案が責任の対象として挙げているのは、無許可の販売、ライセンス提供、公衆への配布などです。非公開の試作だけで、直ちに責任を問う内容ではありません。

対象は静止画。映像や音声は含まれない

法案が定義する「visual work」は、イラスト、写真、グラフィックデザイン、絵画、ドローイングなど、画像ファイルや印刷物に記録された静止画です。映画、映像作品、音声は含まれません。

また、一般的なアイデア、ジャンル、芸術運動、広く使われている表現方法に独占権を与える内容でもありません。プロンプトや設定、宣伝などから特定作家の作風をまねる意図が認められ、その作家の表現に見られる複数の特徴を再現した静止画に限られます。

一般用途のAIサービスまで一律に対象にしない

一般用途のAIサービスは、提供しただけで責任を負う構成ではありません。ただし、特定作家の作風をまねる目的で設計・設定され、その機能を持つサービスとして明示して販売された場合は例外です。利用者が独自に作った画像については、サービス提供者の責任と分けて扱います。

オンラインサービスには、法案で定める要件を満たした通知や裁判所命令を受けた後、該当コンテンツへのアクセスを速やかに止めることなどを条件とした免責の仕組みが提案されています。

批評、研究、報道などは除外される

法案本文は、批評、研究、教育、報道、一定のパロディや風刺、歴史・伝記・ドキュメンタリー作品を対象外としています。元の作家の作品との共通点がごく一部に限られる場合や、広く使われている表現やジャンルから影響を受けた場合も対象外です。特定作家の作風を狙わずに人が独自に制作した作品や、AIの利用が作品全体に対して重要な部分を占めない作品も除外されます。

ただし、批評や報道などに当たる場合でも、作品の出所やスポンサー、本人の承認について誤解させる意図がある商業利用は、除外の対象になりません。

法案に書かれた差し止め・損害賠償

米国著作権局はCREATOR Actを、第119議会へ提出された法案として掲載しています。成立済み法の一覧には入っていません。

米国著作権局の法案一覧に掲載されたCREATOR Act

画像:米国著作権局公式サイトをAIGC TIMES編集部より引用。

提出された法案には、権利者が民事訴訟を起こせること、差し止め、実際に生じた損害と侵害者の利益、または法定損害賠償を求められることが書かれています。故意だったか、公開の規模と期間、市場にどのような影響があったかなどを、賠償額の判断材料にする案も含まれます。

一方、法案が現在の文面のまま成立するか、成立後に裁判所が各条件をどう判断するかは未確定です。執筆時点では、米国下院へ法案が提出された段階であり、対象行為がすでに禁止されたわけではありません。

企業が制作を依頼するときに確認したいこと

企業がAIを使った制作を依頼する場合は、特定の作家名を挙げるだけでなく、必要な表現を自社の言葉で具体的に伝えることが大切です。自社で権利を管理する制作資料を使い、必要な構図、情報の優先順位、掲載場所を共有します。第三者の作品を資料として使う場合は、目的と利用できる範囲を事前に確認します。

プロンプトに特定の作家名を入れなかったという理由だけで、問題がないとは判断できません。実際の出力を見て、既存作品の具体的な表現を取り込んでいないか、社外へ公開できる内容かを確認します。

外部の制作会社へ依頼する場合は、入力素材、利用したサービスとモデル、生成物の確認担当、公開前の修正方法を記録します。法案の内容をそのまま社内規定へ写すのではなく、自社の制作と公開の流れに合わせて確認点を決めます。

CREATOR Actの公式情報


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