まず三つの論点を分ける
| 論点 | 確認すること | 主な制度例 |
|---|---|---|
| 表示・透明性 | AI生成・加工だと、誰がどのように知らせるか | EU AI Act、韓国AI基本法 |
| 作風・本人との関係 | 特定作家の作風や、実在人物の関与を誤認させないか | 米CREATOR Act法案 |
| 著作権 | 入力・生成・公開で既存作品の権利を侵害しないか | 各国の著作権法、日本の文化庁資料 |
表示を付けても、著作権上の問題が解決するわけではありません。反対に、権利処理をしていても、公開地域によってはAI生成・加工であることを知らせる対応が別に必要です。
EUは「誰が表示するか」を分ける
EU AI Act第50条は、AIシステムの提供者による機械判読可能な識別と、ディープフェイクなどを公開する側の表示を分けています。芸術・創作・風刺作品には、鑑賞を妨げない表示方法への配慮もあります。
したがって、「EUではAIを使ったら作品へ必ず同じ透かしを入れる」という理解では足りません。ツール、公開物、編集責任、公開地域を確認します。
米国のCREATOR Actは未成立の法案
CREATOR Actは、特定の視覚アーティストを意図的に対象としてAIで静止画を生成し、作家本人の制作・承認だと誤認させるおそれがある、または作家の商業市場へ影響する「stylistic impersonation」を、無許可で商業利用・公開配布する行為に新しい連邦上の権利を設けようとする法案です。
執筆時点では成立済み法ではありません。米国で作風に著作権が認められた、すべての作風模倣が禁止された、という意味ではありません。
韓国は表示実務の確認が必要
韓国ではAI基本法が2026年1月に施行され、生成AIを使う製品・サービスの事前告知や生成結果の表示、現実と区別しにくい音声・画像・映像等への明確な表示が定められました。韓国政府は少なくとも1年間の規制猶予も案内しているため、施行日と実際の制裁運用を分けて追う必要があります。広告や著名人の表現では、AI基本法以外の制度も確認します。
日本は制作過程を説明できるようにする
日本では、学習・入力と、生成・公開を分け、既存作品との類似性や依拠性、人の創作的な寄与などを個別に検討します。一般的なAI表示の有無だけで著作権の判断は決まりません。
企業制作では、入力素材の権限、使用ツール、人が編集した箇所、類似確認、公開先を記録しておくことが、地域を越えて共通する基礎になります。
一枚の共通ルールより、地域別の公開カード
実務では、すべての国を一つの社内規定へ詰め込むより、公開案件ごとに次のカードを作る方が運用しやすくなります。
- 公開国・配信地域
- 公開物の種類
- AIで生成・加工した範囲
- 実在人物、既存作品、特定作家との関係
- 見える表示、メタデータ、制作記録
- 最終確認者
制度は更新されます。表示文言のテンプレートだけを保存せず、参照した公式ページと確認日を一緒に残します。
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