Voice Swap(Change Voice)とは

Voice Swapは、Higgsfield Audioの三つの機能のうち、既存音声を別の声に差し替える機能である。Higgsfield公式ブログでは「Change Voice」として紹介され、ユーザーがアップロードした動画や音声に対して、プリセット音声か自分で登録したカスタム音声を上乗せする形で音声トラックを置き換える。

Voiceover(テキスト読み上げ)が「文章から音声を作る」機能なのに対し、Voice Swapは「音声から音声を作り直す」機能である。台本の書き起こしを別途用意する必要はなく、元の会話の言葉、間、抑揚のタイミングを維持したまま、声のトーンだけを変えられる。ブランド動画の初稿ナレーションを差し替えたい場面、社員が仮録りした案内音声をブランドボイスに寄せたい場面、キャラクター動画の粗い音声を映像の世界観に合わせたい場面に向く機能である。

Higgsfield Audioは2026年8月10日のChangelogで再設計が告知され、感情、出力形式、ピッチの詳細設定と18言語の動画翻訳+リップシンクが追加されている。Voice Swapもこの再設計以降のUIに統合されており、単体のツールというよりは、Voiceover・Translate・Voice Cloningと同じ画面から呼び出すモジュールとして扱う。

対応言語

Higgsfield公式ブログとAI Voice Changerサービスページに掲載されている対応言語は次のとおりである。

  • Voice Swap / Change Voice:74言語以上
  • Voiceover(TTS):70言語以上
  • Translate(動画翻訳+リップシンク):18言語(2026年8月10日Changelog更新以降)

Voice Swapが74言語以上に対応している一方、Translateは18言語止まりである点は運用上の分岐点になる。同じ言語の話者どうしで声だけを差し替えたい場合はVoice Swap、日本語の動画をそのまま英語版へ吹き替えたい場合はTranslateという使い分けが基本である。

選べる音声モデル

Voice SwapとVoiceoverでは、単一のモデルで生成するのではなく、複数の外部モデルを画面上で選び直せる構造になっている。公式のAI Voice Changerページに掲載されているモデル群は次のとおりである。

  • ElevenLabs v3:自然なトーンとテンポ、感情表現に優れた音声差し替え向け
  • Seed Speech(ByteDance系):多言語・ネイティブに近い発音の差し替え向け
  • MiniMax(Speech系):長尺プロジェクトや音声クローン向け
  • VibeVoice:複数話者の会話・ポッドキャスト向け

Voiceover側の案内モデルにはEleven v3MiniMax Speech 2.8 HDVibeVoiceの三つが並び、2026年8月10日のHiggsfield Audio再設計時にはQwenが追加されている。同じ台本でも、モデルによって声の厚み、無音の残し方、母音の粘りが変わる。企業案件では、同一素材を三モデル程度で試作し、耳で聞き比べてから本番モデルを選ぶ手順を推奨する。

声質の選び方

プリセット音声

Higgsfieldブログは、Voice Swap用途のプリセットを男性・女性合わせて21種以上、Higgsfield Audio全体では40種以上を用意していると案内している。プリセット名は「Roman」「Vesper」などキャラクター名で並んでおり、ナレーション向けの落ち着いた声質、キャラクター向けの誇張のある声質、明るい語り口の声質など、用途別に分かれている。

社内用途では、プリセット名を独自の呼び名(例:「コーポレート男性A」)に対応付けた社内ドキュメントを用意しておくと、案件横断で音の印象を揃えやすい。

カスタム音声(Voice ID)

自社ブランドやタレントの声質を登録するには、Higgsfield Voice Cloningの画面からVoice IDを作成する。Voice Cloningページに掲載されている条件は次のとおりである。

  • 対応形式:MP3またはWAV
  • 音声の長さ:最大2分
  • サンプル取得方法:アップロード、またはブラウザ上で直接録音
  • 保存できるカスタム音声:最大3件

サンプル音源は、背景ノイズを抑えたクリアな環境で録音することが公式で推奨されている。実務では、単一話者、単一マイク、40〜60秒程度の連続した読み上げをテンプレート化しておくと、Voice IDの再現性が安定する。同じ話者でも録音環境が変わるとVoice IDの品質が揺れるため、初回登録時の環境をなるべく再現する運用が確実である。

他者の声を扱う際の同意

Higgsfieldの利用規約は、顔や声を含む素材をサービスへ入力する場合、本人からの同意や許諾を得ることを利用者側の責任として明記している。AI Voice Changerページにも「同意を得た音声にのみ利用し、なりすまし目的では利用しないこと」という趣旨の記載がある。

社員、俳優、外部ナレーターの声をVoice IDに登録する場合は、生成範囲、利用媒体、保存期間、契約終了後の停止手順を事前に書面で取り交わす必要がある。Voice IDに登録した音声を削除する権利、生成物のアーカイブから外す義務、退任時にVoice IDそのものを破棄する運用ルールまで含めて設計しておくと、後日のトラブルを避けやすい。

Voice Swap の基本ワークフロー

Higgsfield公式ブログとAI Voice Changerページに記載されている手順を、実務に落とし込むと次の流れになる。

手順1:素材のアップロード

差し替え対象となる動画または音声ファイルを画面にドロップする。Higgsfield Audioが自動で音声区間、話者の切れ目、言語を検出する。複数話者が含まれる場合、モデルによっては話者ごとに区別して差し替え先を割り当てられる。

手順2:音声の選択

差し替え先の声を選ぶ。プリセットのなかから選ぶか、Voice IDに登録済みのカスタム音声を選ぶ。声質を選んだ段階で、トーン、ピッチ、アクセントの調整項目がUI上に表示される。案件のブランドトーンに合わせて、事前に基準値を決めておくと迷いにくい。

手順3:微調整と書き出し

生成された音声を聞き、発音、抑揚、間を調整する。動画に対して実施している場合は、映像の口の動きと音声が同期しているかを確認する。書き出し形式はMP3やWAVの音声ファイル、または動画付きのファイルから選べる。書き出し前にプレビューで通し再生し、固有名詞、商品名、価格、法定表示の読み方が正しいかを人の耳で確認する工程を挟むことが前提である。

Voiceover・Translate との使い分け

Higgsfield Audioの三機能は、目的と入力によって使い分ける。

  • Voiceover:入力は文章。台本から新規の音声を作る。ゼロから作るナレーションや、まだ映像がない段階での音声先行の制作に向く
  • Voice Swap(Change Voice):入力は既存の動画または音声。言葉と尺は変えず、声質だけを差し替える。仮録音の置き換え、ブランドボイスへの統一、キャラクター動画の声質補正に向く
  • Translate:入力は既存の動画。言語を別言語へ吹き替え、リップシンクも同時に合わせる。多言語展開に向く

Voice Swapは「言葉はそのまま、声だけ変える」機能である点が肝で、翻訳を伴う吹き替えはTranslate側に切り分ける設計になっている。用途を取り違えると、意図した仕上がりから外れる。

Cinema Studio・Lipsync Studio との連携

Higgsfield AudioはCinema Studio 2の制作画面に統合されており、Voice Swapで差し替えた音声はそのままLipsync Studioへ渡せる。Lipsync Studioは、Speak 2.0、InfiniteTalk、Sync.so、Kling Lipsync、Kling AI Avatar、Veo 3などの複数モデルを使い分けて、映像内の話者の口の動きを差し替え後の音声に合わせる機能である。

推奨されるワークフローは次のとおりである。

  1. 元となる映像素材を用意する(Cinema Studioで生成、または既存素材をアップロード)
  2. Voice Swapで音声を差し替える
  3. 差し替え後の音声とオリジナル映像をLipsync Studioに渡す
  4. 唇、表情、視線の同期を確認する
  5. 齟齬がある区間だけ、Voice Swap側の設定を変えて再生成する

Voice Swap単体で使うと、映像の口の動きと差し替え音声のタイミングがずれる場面が出る。Lipsync Studioを組み合わせることで、口の開閉と発話タイミングを再構築できるため、企業のブランド動画で使う場合はセットで運用する前提で工程を組んでおくと安全である。

料金とクレジット

Higgsfieldはクレジット制で、Voice SwapもHiggsfield全体のクレジットプールから消費する。個人向けプランは公式料金ページで、Starter・Basic、Plus・Pro、Ultra・Maxの三段階が案内されている。

  • Starter / Basic:月額9ドルから、月120〜270クレジット
  • Plus / Pro:月額29ドルから、月600〜1,200クレジット
  • Ultra / Max:月額79ドルから、月1,800〜9,000クレジット

Voice Swap単独の従量料金は公式料金ページに個別項目としては掲載されておらず、プラン内のクレジット消費として扱われる。地域、キャンペーン、契約時点によってプラン名と価格が変わるため、実際の月額と付与クレジット、更新日はアカウント画面での確認が必要である。

消費クレジットは、選択するモデル、音声の長さ、素材のフォーマットで変わる。UI上に消費見込みが表示されるため、本番生成の前に見積もりを確認する運用が確実である。

商用範囲と権利

Higgsfieldの利用規約は、利用者がサービスへ入力した素材と生成結果について同社が所有権を主張せず、生成結果の商用利用も制限しないと定めている。この方針はVoice Swapで生成した音声にも及ぶ。ただし、次の責任は利用者側に残る。

  • 差し替え元の動画・音声そのものの権利処理
  • Voice IDに登録した本人からの同意取得
  • プリセット音声を使う場合の、公開媒体・地域での適合確認
  • 差し替え後の音声を配信する国・媒体ごとの表示義務や規制対応

2026年7月26日更新の利用規約では、通常契約の場合、入力素材と生成結果をHiggsfieldのモデル改善に使う場合がある旨が明記されている。Enterprise Agreementでは、顧客コンテンツを学習に使わず機密情報として扱うと定められている。未発表商品のCM音声や、顧客企業のブランドボイス、契約タレントの音声をVoice Swapで扱う場合は、契約形態と学習利用の可否を事前に確認する必要がある。

なりすまし目的での音声差し替えはAI Voice Changerページで明確に禁止されている。実在人物の声を、本人の同意なしに別の発話へ差し替える用途は、利用規約と社会的責任の両面で認められない。この線引きは、社内ガイドラインにも書き写しておくのが確実である。

ブランド企業での実務ユースケース

Voice Swapを企業案件で使う場面は、大きく四つに整理できる。

仮録音の差し替え

制作の初期段階で、ディレクターや担当者が仮で吹き込んだ音声をブランドボイスに差し替える用途である。台本を書き直したり、ナレーターを再手配したりする前に、映像と音の相性を素早く判定できる。

ブランドボイスの統一

シリーズ動画、SNSショート、店頭サイネージなど、複数チャネルに展開するコンテンツで、同じ声質に統一する用途である。Voice IDに登録した代表音声を使い、案件ごとに再収録せずに音の印象を揃えられる。ブランドとしての一貫性を保ちながら、制作サイクルを短縮できる。

キャラクター動画の声質補正

Cinema StudioやSoul、Popcornで生成したキャラクター動画に、後からキャラクターに合った声を乗せ直す用途である。粗い仮音声で映像を先に固め、最終的な声質はVoice Swap側で調整する制作順序に切り替えられる。

社内動画・研修コンテンツの更新

一度収録した社内向け動画のナレーションを、Voice Swapで差し替えて再利用する用途である。担当者の交代、話者の退職、ブランドリニューアルによる音の印象変更に、収録し直さずに追随できる。ただし、差し替え元の音声と映像の権利者、登場人物の許諾範囲は、更新のたびに確認する運用が前提となる。

いずれの用途でも、Voice Swapは最終工程の万能ツールではなく、映像とナレーションの整合を組み直すための一段である。書き出したあとに、固有名詞の読み、間、抑揚、音量バランスを人の耳で確認する工程は、必ず制作フローに残しておく必要がある。

画像生成・動画生成モデルの全体像を見る

Higgsfield Voice Swap のよくある質問

Voice Swap は何言語の音声に対応しているのか

Higgsfield AI Voice Changerページには、74言語以上に対応と記載されている。ただし、Higgsfield Audioの動画翻訳を伴う吹き替え(Translate)は18言語止まりであるため、翻訳を含む場合はTranslate、同一言語のまま声だけ差し替える場合はVoice Swap、という使い分けになる。

Voice Swap でどのモデルを選べばよいのか

用途によって推奨が変わる。ブランド動画の主音声にはElevenLabs v3、多言語ネイティブ発音にはSeed Speech、長尺プロジェクトや音声クローン中心の運用にはMiniMax、複数話者の会話にはVibeVoiceが公式ページで案内されている。同じ素材を複数モデルで試作し、耳で聞き比べてから本番を選ぶのが安全である。

自分の声を Voice ID に登録できるのか

Higgsfield Voice Cloning画面から、MP3またはWAV形式、最大2分の音源で登録できる。カスタム音声は最大3件まで保存可能である。他者の声を登録する場合は、本人の同意取得が利用者側の責任として利用規約に明記されているため、書面での合意取得が前提となる。

Voice Swap の音声は商用利用できるのか

Higgsfieldの利用規約上、生成結果の商用利用は制限されない。ただし、差し替え元素材の権利、Voice IDに登録した声の同意、公開媒体・地域での規制適合は利用者側の責任として残る。2026年7月26日更新の規約では、通常契約時にモデル改善への利用がある旨が明記されているため、機密案件はEnterprise Agreementでの契約形態を確認する必要がある。

Voice Swap と Lipsync Studio は同時に使うべきか

企業のブランド動画で使う場合は、セット運用を推奨する。Voice Swap単体では、差し替え音声と映像の口の動きにずれが出る場面がある。Lipsync Studioを組み合わせることで、唇、表情、視線を差し替え後の音声に合わせて再構築できるため、公開品質での書き出しに近づけられる。

Voice Swap は「映像はそのまま、声だけ変える」ための機能

Voice Swap(Change Voice)は、Higgsfield Audioに組み込まれた音声差し替え機能である。74言語以上に対応し、ElevenLabs v3、Seed Speech、MiniMax、VibeVoiceといった複数モデルから選び、プリセット音声または最大3件までのVoice IDに置き換えられる。Cinema StudioやLipsync Studioと同じ画面から呼び出せるため、映像制作の後工程に組み込む前提で設計されている。

企業案件で導入する場合は、モデルの試作比較、Voice IDの合意取得、Lipsync Studioとの併用、書き出し後の人による確認の四つを工程に組み込むことが前提になる。仮録音の差し替え、ブランドボイスの統一、キャラクター動画の声質補正、社内動画の更新など、用途を絞ってから運用ルールを固めていくのが確実である。

Higgsfield Audioの他機能や、TTS・Translateとの使い分けは、次の関連記事で整理している。

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