Recraftのベクター イラストとは

Recraftはブラウザで動く画像生成・編集サービスで、Recraft Studioという1つの画面から複数の生成モデルを呼び出せます。そのなかで「ベクター イラスト」を担うのが、Recraft V4.1 VectorとRecraft V4.1 Vector PROの2つのモデルです。出力はPNGやJPGではなく、拡大や縮小しても輪郭がぼやけないSVG形式で返ります。

SVGは、線と図形の座標情報でできたテキスト形式のデータです。Webサイトのアイコン、印刷物の図版、パッケージのシンボル、店頭サインなど、サイズ変更や再着色が前提の素材で使われます。以前はPNGでラフを生成してからIllustratorやFigmaでトレースする流れが一般的でしたが、Recraftは最初からベクターの図形として結果を返します。

Recraftは、写真のような画像を作るためのツールではなく、後から編集する前提の図案を、生成と編集を同じ画面でつなぐデザインツールです。位置付けの全体像はRecraftとは何か:モデル系譜と主要機能の全体像にまとめています。

Recraft V4.1 VectorとVector PROの違い

Recraft V4.1 Vectorは、標準的なベクター イラスト向けのモデルです。線画、フラットイラスト、アイコン、シンボル、簡単な装飾図案を生成します。1回の生成で複数案を並べて比較しやすく、まずV4.1 Vectorで方向性を探る使い方が向いています。

Recraft V4.1 Vector PROは、複雑な構成や多数の図形要素を含むベクター イラスト向けのモデルです。キャラクターの全身、複数のオブジェクトが並ぶシーン、装飾的な模様、細部までパスが分かれたグラフィックで結果が安定します。消費クレジットもV4.1 Vectorより多いため、方向性が決まってから使うのが実務的です。

モデルの選択はRecraft Studio上のモデル選択欄で行います。同じ画面にはラスター向けのRecraft V4.1やV4.1 PRO、他社モデルも並ぶため、SVGで書き出したい場合はモデル名に「Vector」が含まれているかを必ず確認してから生成します。

Vector Editorで完結する「生成後」の編集

Recraftは2026年7月9日、Recraft Studio内でベクター画像を直接修正できるVector Editorを公開しました。これまではSVGを書き出してからFigmaやIllustratorで修正する運用でしたが、Vector Editorの登場で、生成、修正、再生成、書き出しがRecraftの1画面で完結するようになりました。

Vector Editorで扱えるのは、公式発表に沿って整理すると次の5点です。図形の点(アンカーポイント)を動かして輪郭を整える、曲線の形を調整する、図形ごとに色を変える、図形を複製する、SVGまたはPDFで書き出す。生成した図形は個別の要素として扱われるため、キャラクターの目だけ色を変える、装飾の花びらを1枚追加する、といった部分ごとの修正が別ソフトを開かずに完結します。

Recraft公式ブログはVector Editorを「生成は始点であって最終判定ではない」と説明しています。生成AIの出力をそのまま採用するか捨てるかの二択にせず、生成後に意図へ寄せる編集を前提とした設計です。

Recraftでベクター イラストを作る手順

Recraft V4.1 Vectorでイラストを作る流れは、次の6ステップに整理できます。

1. Recraft Studioで新規プロジェクトを開く

Recraft公式サイトからRecraft Studioに入り、新規プロジェクトを作ります。イラストは複数案を並べて比較することが多いため、用途別にプロジェクトを分けておくと後から見返しやすくなります。無料プランでも操作は試せますが、生成物は公開されて商用利用できないため、仕事で使う画像を作る場合は有料プランへ切り替えてから作業を始めます。

2. モデル選択でVector系を指定する

生成画面のモデル選択欄で、Recraft V4.1 VectorまたはRecraft V4.1 Vector PROを選びます。ラスター向けのV4.1やV4.1 PROを選ぶと結果はPNGで返り、Vector Editorでの点編集ができません。方向性が定まっていない初期段階はV4.1 Vector、キャラクターや装飾など複雑な図柄はV4.1 Vector PROが目安になります。

3. スタイルと色数を先に決める

Recraft V4.1 Vectorには、線画、フラットカラー、二色イラスト、幾何学的なグラフィック、切り絵風、印刷版画風など複数のスタイル系統があります。プロンプト本文で描き分けるより、生成前にスタイルを1つ決めておくと、後から同じシリーズで揃えたときの一貫性が保てます。色数も「二色」「三色」「単色+アクセント」のように上限を先に指定すると、Vector Editorで扱う図形の数が抑えられます。詳しくはRecraft スタイル指定と再現のガイドを参照してください。

4. 描く対象と用途を具体的に伝える

プロンプトには「何を描くか」だけでなく「どこで使うか」「サイズをどう変えるか」を含めるとぶれにくくなります。たとえば「スキンケアブランドの成分ページに載せる、葉と水滴を組み合わせた二色の線画。最小60ピクセルまで縮小するため、細部は省いてシルエットで意味が伝わる形」といった伝え方です。実在する他社ロゴや既存キャラクターに寄せる指示は避け、自社の権利範囲に限定します。

5. 候補から1点を選び、Vector Editorに送る

生成された候補から用途に近い1点を選び、Vector Editorに切り替えます。図形をダブルクリックすると輪郭の点が表示され、点を動かすことで輪郭を整えられます。曲線ハンドルを引くと、点と点の間の曲がり具合を調整できます。色は図形単位で変更でき、目や口、装飾など部位ごとに色を分けたいときに使います。

形を大きく変えたいときは、点をひとつずつ動かすよりプロンプトを書き直して再生成する方が速いことが多いです。全体の輪郭は生成でやり直し、細部と配色はVector Editorで整えると作業の切り分けがしやすくなります。

6. SVGまたはPDFで書き出す

編集が終わったら、SVGまたはPDFで書き出します。WebサイトやアプリのUIで使う場合はSVG、印刷物や外部ソフトへの入稿はPDFが扱いやすいです。書き出したSVGは、FigmaやIllustrator、Affinity Designer、Inkscapeなど別のソフトでも開き、線の欠け、図形の重なり、透明部分、色ずれがないかを目視で確認します。

イラスト向けのプロンプト設計

ベクター イラストは、写真的な画像と違って線と色の情報だけで意味を伝える表現です。プロンプトで写真的な描写語(光、反射、質感、被写界深度など)を積むと、生成結果に不要な陰影が入り、SVGの図形数が跳ね上がります。次の3点を意識するとプロンプトが安定します。

1点目は、被写体の輪郭を先に、細部を後に書くことです。「何が中央にあるか」「その周囲に何が並ぶか」「装飾はどこか」の順で伝えると、生成結果の主従が整理されます。

2点目は、色数を数値で示すことです。「二色」「三色」「単色+アクセント色1色」のように色数の上限を先に指定すると、Vector Editorで扱う図形の数が減り、後の修正が軽くなります。

3点目は、線の太さと種類を明示することです。「均一な太さの線」「ペン画のように強弱のある線」「線なしのフラットカラー」など、線の表現をひとつ選ぶだけで、シリーズの一貫性が大きく変わります。

既存画像をベクターへ変換する(Vectorize)

Recraftには、PNGやJPGとして手元にある画像をSVGへ変換するVectorize機能があります。手描きスケッチをスキャンした線画、過去に納品されたビットマップのイラスト、紙媒体からの流用素材などを、後からベクターとして扱いたいときに使えます。

Vectorizeは、Recraft Studioのキャンバスへ画像を置き、対象を選択してVectorizeを実行するだけで、SVGへ変換された結果が返ります。変換後は、色数を減らしたり特定の色を別の色へ置き換えたりできます。ただし、写真や細かい模様を含む画像は多数の図形に分割され、Vector Editorでの修正が現実的でなくなるため、まずは輪郭がはっきりした線画やフラットな塗りの図案から試すのが安全です。

変換元の画像に第三者の権利が残っている場合、SVGへ形式を変えても利用条件は元の権利関係のまま引き継がれる点を確認しておく必要があります。

用途別のベクター イラスト活用パターン

Recraftで生成するベクター イラストは、次の4カテゴリーで実務適性が高いです。

アイコンやシンボルは、Webサイトのナビゲーション、アプリのUI、資料のピクトグラム、店頭サインなど、小さなサイズで意味を伝える用途に向きます。単色または二色のシンプルな図案が機能します。アイコン単体の作り方はRecraft アイコン生成の手順で詳しく整理しています。

キャラクターやマスコットは、パッケージ、SNSアイコン、店内POP、キャンペーンLPと掲載先ごとにサイズや配色を変える必要があります。SVGで生成しておけば、Vector Editorで表情差分や色違いを1ファイル内で分岐管理できます。

装飾やパターンは、商品パッケージや化粧箱、シーズンビジュアルの背景に使う繰り返し模様として便利です。Recraft V4.1 Vector PROで基本ユニットを生成し、Vector Editorで複製と回転を組み合わせて全体を作り込みます。

インフォグラフィックや図解は、線画のイラストと図形の組み合わせで成立します。V4.1 Vectorで各パーツを生成し、Vector Editorで線の太さと色を揃えると、資料全体でトーンが整います。

IllustratorやFigmaとの違い

ベクター イラストを扱う環境として、AdobeのIllustratorやFigmaは長らく標準の位置にあります。Recraftのベクター イラストは、これらを置き換えるものではなく、役割の分担で捉えると実務に合います。

Illustratorはベクター描画と印刷入稿までのフルワークフローを1本で担えます。Recraftは、生成と初期修正のレイヤーとして位置付き、Illustratorは入稿設計、書体設定、色分版、CMYK変換のような印刷工程の最後まで担う関係です。

Figmaは、UIデザインとチーム編集に強く、SVGを取り込んで共同編集する場面で使いやすいツールです。Recraftで生成したSVGをFigmaに取り込み、UI画面に配置して他のパーツと並べる組み合わせが自然になります。

Vector Editor自体は、Illustratorの全機能に比肩する編集環境ではありません。ブラシツール、複雑なパス演算、書体組版、印刷用のカラー管理は含まれず、あくまで「生成結果を意図に寄せるための編集」に絞られています。この割り切りが、生成と編集を同じ場所で回す体験を軽くしています。モデル世代ごとの違いはRecraft V3のガイドを参照してください。

商用利用で確認する項目

Recraftで生成したベクター イラストを商用で使う場合は、次の3点を必ず確認します。1点目は、その画像を生成した時点で契約していたプランが有料プランであることです。無料プランで生成した画像はRecraftが所有し、公開されて商用利用できません。有料プランへ切り替えた後も、無料プラン時代に生成した画像は商用素材に転用できません。

2点目は、生成に使った入力素材の権利です。Vectorizeでベクター化する元画像、参考として渡した画像、リファレンスとして貼った他社の作品には、それぞれ権利関係があります。SVGへ形式を変えても、元素材の権利は変わりません。

3点目は、学習利用の設定です。Recraft公式FAQによれば、Web版では入力と生成結果がRecraftのモデル改善に使われる設定が初期状態で有効で、Proはアカウント設定から停止でき、Teamsは初期状態で学習対象外となります。未公開の商品画像や取引先から預かった素材を扱う場合は、契約プランと合わせて、この学習利用の設定も生成前に確認しておきます。商用条件の詳細はRecraft 商用利用と権利の整理にまとめています。

FAQ

Q1. Recraftのベクター イラストは日本語プロンプトで作れますか

作れます。ただし、複雑な構図や色数指定など細かい条件を伝えるときは、日本語より簡潔な英語のほうが結果が安定することが多いです。日本語で方向性を出してから同じ内容を短い英文でも試し、良かったほうを採用する運用が扱いやすいです。

Q2. Vector EditorはIllustratorの代わりになりますか

生成の直後に必要な点の移動、曲線の調整、図形単位の色変更、複製の範囲であれば、別ソフトを開かずに完結できます。ただし、印刷入稿用のカラー分版、書体組版、複雑なパス演算まで担うわけではないため、最終工程はIllustratorや同等の入稿対応ソフトを併用するのが現実的です。

Q3. 生成したSVGをそのままロゴとして使ってよいですか

編集可能なSVGとして出力されても、そのまま正式なロゴとして採用できるとは限りません。既存商標との類似確認、書体の指定書体への差し替え、色の指定Pantoneへの合わせ込みが済んでいない状態では、あくまでラフ案として扱うのが安全です。

Q4. Vector EditorとVectorizeは同じ機能ですか

別の機能です。Vector Editorは、生成したSVGや取り込んだSVGを点や曲線、色の単位で修正する編集機能で、Vectorizeは、PNGやJPGなどのラスター画像をSVGへ変換する機能です。両方を組み合わせると、手元のビットマップ素材をベクター化し、Vector Editorで整える運用ができます。

Q5. Recraft V4.1 VectorとVector PROは、どちらを選べばよいですか

方向性を探る初期段階はV4.1 Vector、キャラクター全身や複数要素の装飾、細部までパスを分けたい仕上げの段階はV4.1 Vector PROが目安です。1回目からVector PROを回すと消費クレジットが大きいため、まずV4.1 Vectorで案出しをし、採用方向が決まってからVector PROで仕上げに回すのが経済的です。

情報源