30 項目チェックリストの 6 カテゴリー

複数社の提案を並べて評価する際、視点をそろえないまま比較すると、担当者の印象で評点が動きます。まずは 6 つのカテゴリーへ質問を分割し、各 5 項目、合計 30 項目で採点します。

  • 技術対応力:目的に合う技術を選び、選定理由と限界を説明できるか
  • ブランド理解:資料を読み込み、確認手順に沿って進められるか
  • 権利・契約:入力素材、生成物、掲載先での権利を扱えるか
  • 記録運用:判断の経緯、使用サービス、素材を残せるか
  • 継続性:単発ではなく、次案件や社内定着まで支援できるか
  • 費用構造:見積の内訳、追加費用の発生条件を提示できるか

30 項目すべてを一社に求める必要はありません。自社内で担う範囲、外部専門家に委ねる範囲を先に決めておくと、パートナーへ求める項目を絞れます。

技術対応力の 5 項目

制作の途中でそのツールでは対応できないと分かる手戻りを避けるため、初回相談の段階で技術判断の質を測ります。

  1. 画像生成、動画生成、生成後の編集、実写合成の違いを説明できる
  2. 目的に応じてサービス、モデル、制作方法を選び、選定理由を言語化できる
  3. モデル更新や新機能の情報を継続的に確認し、社内へ共有している
  4. 出力の差が入力素材、指示、モデル、編集のどこから生じたかを分解できる
  5. AI に任せる工程と、人手や別の制作方法が必要な工程を分けられる

「何ができますか」ではなく、「今回の目的なら何を使い、なぜ別の方法を採らないのか」を尋ねると、技術理解の深さが見えます。回答へ特定のサービス名が出た場合は、公式情報で提供状態と利用条件を裏取りしているかも確認します。

ブランド理解の 5 項目

ブランド理解は、雰囲気の再現ではなく、資料を読み込み、確認手順に沿って進行できるかで測ります。

  1. ブランドガイドライン、商品資料、過去の制作物を読み込んで制作へ反映できる
  2. ブランド側の確認者、承認回数、外部パートナーの役割を整理できる
  3. 公開に使える案と、社内検討にとどめる案を分けられる
  4. ブランドの信用を損ねる表現を避ける基準を、事前に提示できる
  5. 短期の案件だけでなく、その後の発信計画へつなげる視点を持てる

初回提案の段階で、渡した資料のどこを参照して構成を組んだのか、根拠を尋ねます。回答が曖昧なら、案件開始後も同じ抽象度のまま進みます。

権利・契約の 5 項目

権利まわりは、契約書の一行で運用可否が変わる領域です。パートナー側の理解度を、初期の質問で確かめておきます。

  1. 入力素材の権利元、契約範囲、AI での利用可否を確認する手順がある
  2. 生成物の著作物性、類似判断について、公的資料をもとに説明できる
  3. 利用するサービスの規約、AI 生成表示の要否を掲載直前に再確認できる
  4. モデル契約、素材ライブラリ、写真素材の AI 学習条項を照合できる
  5. 契約終了後のデータ保管、削除、再利用範囲を書面へ明記できる

自社の法務担当者と条項を突き合わせる際、パートナー側が根拠資料を提示できるかまで見ておくと、社内稟議で止まりにくくなります。個別案件の判断は、必要に応じて弁護士や公的資料へも確認します。

記録運用の 5 項目

AI 制作は候補が増えやすく、判断の経緯が担当者の記憶にしか残らない事故が起こりがちです。

  1. 使用サービス、モデル、バージョンを制作記録として提出できる
  2. 入力素材、参照素材、主要な指示文を案件ごとに保管できる
  3. 採用、要修正、不採用の判断理由を第三者が読める形で残せる
  4. 完成物だけでなく、元データや中間ファイルを引き渡せる
  5. 案件終了後、社内担当者が同じ手順を再現できる資料を用意できる

記録運用は納品後に効いてきます。同じ検証を毎回繰り返さないためにも、契約時点で納品範囲へ含めておきます。

継続性の 5 項目

単発制作だけを頼む場合でも、次に同じ設計をどこまで再利用できるかを、選定時に見立てておきます。

  1. 単発制作、概念検証(PoC)、社内導入、継続運用のどこまで対応できるか説明できる
  2. 担当者が変わっても引き継げるよう、案件情報を体系化している
  3. 会社としての在籍年数、案件履歴、主要担当者の稼働率を開示できる
  4. 制作以外の学習会、社内研修、資料提供まで担える範囲を提示できる
  5. ブランド側の担当者へ、非専門家にも通じる言葉で技術を説明できる

支援範囲は広ければよいわけではありません。自社が必要としている領域と、パートナーが得意な領域を重ね合わせて選びます。

費用構造の 5 項目

見積の総額だけを比較すると、追加費用の発生条件を見落とします。内訳の粒度で、進行時の透明性が測れます。

  1. 試作回数、修正範囲、確認日程が見積書へ具体的に書かれている
  2. 使用サービスの利用料、素材購入費、外部発注費を分けて提示できる
  3. 追加費用が発生する条件(回数超過、素材追加、納品先追加)を明記できる
  4. 支払い条件、着手金、分割回数を柔軟に相談できる
  5. 継続案件の場合、月額と単発の比較を提示できる

費用の透明性は、契約後のトラブル抑止に直結します。「一式」表記が多い見積は、後段の要修正で追加請求の余地が広がります。

主要サービスへの理解を確認する

技術対応力の項目で「今回はこのサービスを使う」という提案が出た際、選定理由の質は、パートナー側が業界の主要サービスをどこまで把握しているかで決まります。

編集部では、生成 AI クリエイティブ領域で企業採用の多い 17 社を対象に、機能、価格、商用利用条件、日本語対応、公式サポート体制を横並びで比較した 生成 AI クリエイティブ・プラットフォーム 17 社調査(¥22,300 / 全 33 ページ)を公開しています。パートナー提案に含まれるサービスを社内で照合する際、判断の共通言語として利用できます。

提案依頼書(RFP)評価で使う

チェックリストは、提案依頼書(RFP)を各社へ送る際の評価票としても機能します。同じ質問へ回答してもらい、30 項目を「確認できた/追加確認が必要/今回の契約範囲外」の三区分で判定します。

評価票の設計、質問文の言い回し、社内合意の取り方は、AIGC TIMES 無料メソッド「AI クリエイティブパートナー選定ガイド」へ整理しています。無料で全項目を確認でき、提案依頼書のたたき台としても使えます。

6 カテゴリの重み付けは案件種別で変える

30 項目すべてに同じ重みを置くと、案件の性質に合わない評点が出ます。案件種別ごとに、重視するカテゴリーの配点を変えます。

  • 単発の SNS 素材制作:技術対応力、費用構造の重みを上げ、継続性は軽くする
  • ブランド刷新にともなう長期制作:ブランド理解、継続性を最重要に置く
  • 社内導入や研修も含む案件:継続性、記録運用の配点を厚くする
  • タレントや実写素材を扱う案件:権利・契約を最上位に置き、他を等分にする
  • 概念検証(PoC)で技術を試す案件:技術対応力、記録運用へ重心を寄せる

配点の変更理由も評価票へ書き込み、社内の別担当者が読んで納得できる状態にしておきます。

一発 NG の red-flag 項目 5 つ

30 項目のうち、以下の 5 つは、どれか一つでも欠けた時点で選定を止めます。

  • 生成物の権利帰属、二次利用範囲を書面へ落とせない
  • 使用サービスと利用規約の照合手順を提示できない
  • 素材の学習利用について、契約側の条項を確認しない
  • 制作記録、指示文、参照素材の引き渡しに応じない
  • 主要担当者の稼働率、体制変更の可能性を開示しない

いずれも、契約後に修正の効かない領域です。初回相談で口ごもった場合は、書面での再回答を求めます。

チェックリストを社内共有する 4 手順

  1. カテゴリー配点の合意:ブランド、制作、法務、情報管理の担当者間で、今回の案件で重視するカテゴリを合意します
  2. 質問文の統一:各社へ同一の質問文を送り、口頭ではなく書面での回答を求めます
  3. 判定基準の言語化:確認できた/追加確認が必要/範囲外の判定基準を、担当者間で先にすり合わせます
  4. 評価票の保管:採用・不採用のいずれの場合も、評価票を案件フォルダへ保存し、次回選定時の参照資料にします

30 項目の点数だけで一社に絞らず、社内担当者が同じ結論に至れる評価票を残すのが目的です。

よくある質問

すべてのカテゴリーで満点を取れる会社を選ぶべきですか

満点である必要はありません。自社側で担える領域と外部専門家へ委ねる領域を分け、パートナーへ求める項目を絞ります。30 項目のうち 20 項目でも、案件の重点領域を押さえていれば選定できます。

候補が 1 社しかない場合もチェックリストは使えますか

一社であっても、書面回答を求め、確認できた項目と追加確認が必要な項目を分ける運用は有効です。契約後の齟齬を減らし、稟議へ添付する根拠資料にもなります。

チェックリストの更新頻度はどのくらいが目安ですか

サービスの規約や利用可否は改定されます。案件終了ごとに評価票を振り返り、質問文と判定基準を更新すると、次回の選定精度が上がります。

6 カテゴリのうち最重要はどれですか

案件種別で変わります。タレントや実写素材を扱う案件は権利・契約を最上位に置き、ブランド刷新の長期案件はブランド理解と継続性を、単発の SNS 素材制作は技術対応力と費用構造を優先します。配点を決めた根拠も評価票へ書き込み、社内担当者間で共有します。

制作会社選びの記事と、このチェックリストはどう使い分けますか

姉妹記事の AI クリエイティブ制作会社の選び方 は、候補会社のタイプ別に得意領域を整理する視点で書かれています。本チェックリストは、候補が数社に絞れた後、同じ質問で書面回答を集めて比較する段階で使います。前段で候補を絞り、本記事で比較する順序が実務に合います。

参照した情報


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