AI技術と生成AIの違い
AI技術には、画像に写っているものを判別する画像認識、過去のデータから傾向を予測する予測モデル、入力された指示から新しい文章や画像を作る生成技術などがあります。このうち、新たなコンテンツを作るものが生成 AIです。
ブランド制作では、画像生成や動画生成が注目されやすい一方、実際の運用では以下も同じくらい使われます。
- 既存画像の一部だけを書き換える生成編集
- 小さな素材を拡大しながら細部を整える高画質化
- 映像の不要な要素を除くインペインティング
- ブランド固有の色や構図を再現するモデル追加学習(LoRA など)
「AI を使いたい」から始まる導入は、成果にたどり着きません。制作のどの作業を変えたいのか、そこから逆算して必要な技術を選びます。
ブランドのクリエイティブで使う 6 つの技術
ブランド企業が扱う主な技術は、次のように分けられます。1 つのツールですべてを済ませる必要はありません。試作、編集、仕上げで別の技術を組み合わせて使うのが一般的です。
1. 画像生成
指示文や参照画像から、新しい画像案を作る技術です。企画段階のラフ、キャンペーンのビジュアル候補、SNS 投稿の背景など、ゼロから絵を起こす場面で使います。
ブランド制作で確認するのは、商品名やロゴが正しく再現できるか、商品の形が元の資料と一致しているか、ブランドカラーが保たれているかの 3 点です。生成モデルは既存の学習データから絵を組み立てるため、商品特有の詳細や、ブランド固有の色調は追加の指示や参照素材で補います。
2. 動画生成
文章や静止画から、数秒から数十秒の映像を作る技術です。SNS 向けの短尺、キャンペーンの背景動画、店舗サイネージ用の環境映像などに使われます。
映像特有の確認項目は、カットの途中で商品名やロゴが変わっていないか、人物の姿や服装が一貫しているか、背景の要素が場面をまたいで矛盾していないかです。生成した映像は静止画より確認工数が増えるため、採用前に前後のフレームを見比べる工程を必ず入れます。
3. 生成編集
既存の画像や映像の一部を、書き換える、消す、置き換える技術です。背景を差し替える、写り込んだ不要物を消す、季節に合わせて要素を追加する、といった用途があります。
ブランド制作で使うときの確認は、修正対象ではない商品やロゴまで意図せず変わっていないか、周囲の光源や影が自然に見えるかです。特に商品画像の背景差し替えでは、商品側のハイライトや影を新しい背景に合わせて調整する必要があります。
4. 背景生成・商品画像展開
1 枚の商品写真から、掲載媒体ごとに縦横比の異なる画像を作る技術です。EC の商品ページ、公式サイト、Instagram の各フォーマット、店頭サイネージなど、同じ商品を複数媒体へ展開する制作で使います。
確認するのは、商品の形と表示内容が元写真と一致していること、媒体ごとに商品が中心に配置されていること、パッケージの文字が読める解像度で残っていることです。展開後の画像を掲載サイズで実表示し、商品名やスペック表示が視認できるかまで確認します。
5. 高画質化
小さな画像や粗い素材を拡大し、細部を整える技術です。過去に制作した低解像度素材、SNS 向けに縮小した画像の再利用、映像の一部フレームの拡大などに使われます。
高画質化で気をつけるのは、元画像にない情報が付け加わっていないかです。拡大処理では、AI が「それらしい細部」を補完します。ブランド商品の場合、実物にない模様や質感が生成される可能性があるため、拡大後の画像は必ず元素材と比べて差異を確認します。
6. AI を使った VFX・CGI 制作
映像や画像の一部を生成・変換したり、AI で作った素材と実写を合成する制作技法です。実写では表現しにくい場面、大規模な CGI コストがかかる演出、複数バリエーションを短期間で作る必要があるキャンペーンで採用されます。
VFX・CGI 制作で残すのは、どの部分に AI を使い、どの部分を人が作ったかを後から説明できる制作記録です。生成部分と実写部分を混在させる場合、権利、承認、修正差し戻しの単位が変わるため、制作工程を工程別に分けて記録します。
以上の 6 分類は、ブランドの実装現場で判断しやすくするための整理です。実際の制作では、これらを組み合わせて使います。同じ「画像を作る」でも、企画段階の画像生成、既存資料の生成編集、公開直前の高画質化を別々のツールで進めることは珍しくありません。
モデル、ツール、サービスを混同しない
AI の記事や製品ページでは、「モデル」「ツール」「サービス」という言葉が並びます。これらは役割が異なります。
- モデル: 入力を処理し、分類結果、予測、生成物を返す AI の中核部分(例: FLUX、Veo、Nano Banana)
- ツール: 人が操作する画面や機能を含む製品
- サービス: アカウント管理、保存、料金、チーム利用まで含む提供全体(例: Krea、Runway、Higgsfield)
ツールとサービスは、同じ製品が両方の呼び方をされることもあります。大切なのは、同じサービスでも選んだモデルが違えば出力の傾向が変わることです。
制作記録には、サービス名だけでなく、使用したモデル名、機能、主な設定を残します。半年後に同じ結果を再現したいとき、モデル名が抜けていると再現できなくなります。
導入前に決める 5 つのこと
最初に決めたいのは、使用するツール名よりも次の 5 点です。
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最初に AI で試す作業
企画案づくり、商品写真の媒体別展開、既存素材の修正など、最初に試す作業を一つに絞ります。複数を同時に試すと、どの改善効果がどこから来たか分からなくなります。 -
入力できる素材
自社で権利を管理する商品写真、ブランド資料、社内データなど、利用できる範囲を決めます。他社の商品写真、契約関係で使用範囲が限定される素材、未発表の商品情報は入力対象から外します。 -
採用基準
商品名やロゴの再現、商品の形の正確性、事実関係、公開先の仕様など、採用前に必ず確かめる項目を決めます。基準を先に決めないと、生成後の判断が個人の感覚に依存します。 -
承認する人
試作の確認、権利確認、最終公開を誰が判断するかを分けます。1 人で全部見る運用は、修正のスピードが上がる代わりに、権利や公開判断の抜けが起きやすくなります。 -
残す記録
入力素材、利用したサービスとモデル、生成日、修正内容、承認者を記録します。次の案件で同じ条件で作り直すとき、外部から問い合わせを受けたとき、記録があれば説明できます。
ブランド制作で押さえる 4 つの実装原則
AI 技術をブランド制作へ組み込むとき、AIGC TIMES では次の 4 つを実装原則としています。
1. 出力は必ず人が確認する
どの案がブランドに合うか、商品を正しく見せているかは、生成結果だけでは判断できません。採用案の選定、商品情報との照合、修正内容の確認、公開承認は人が担います。
2. 商品情報と照合する
生成された画像・映像は、商品名、ロゴ、形状、色、パッケージ表示、価格、機能などが元の資料と一致しているかを 1 件ずつ照合します。特に商品名の表記ゆれ、ロゴのバージョン違い、パッケージの改定前後は間違えやすい箇所です。
3. ブランド表現の一貫性を保つ
複数の担当者が別々のツールで制作すると、ブランドカラー、書体、ロゴの余白、写真のトーンがバラつきます。AI で生成する素材にも、ブランドガイドラインの適用範囲を先に決めておきます。ブランドコード(色、書体、トーン、構図の禁則)の整理は、AI 導入前に済ませておくのが理想です。
4. 権利と利用条件を毎回確認する
利用するサービスによって、商用利用の範囲、生成物の権利帰属、学習データへの取り込み可否は異なります。契約プランを切り替えたときや、サービス側の規約が更新されたときは、公開前に必ず条件を再確認します。
ツール選定・比較の考え方
導入候補を比べるときは、モデルの性能や機能一覧だけを見ません。各社が扱う制作領域、クリエイター向け制度、企業向け契約条件、日本語対応、料金体系、商用利用の範囲を横断して見ます。
同じ「動画生成ができる」ツールでも、対象領域は次のように分かれます。
- 短尺 SNS 動画中心(Higgsfield、Pika など)
- 映像制作パイプライン統合(Runway、Luma など)
- 中国発モデルで多言語対応が課題(Kling、Hailuo など)
- 特定領域特化(Reve の 3D 表現、Krea の複合統合など)
これらの整理は、AIGC TIMES の有料調査「生成 AI クリエイティブ・プラットフォーム 17 社調査」(¥22,300 / 全 33 ページ)で 17 社を 7 つの観点から比較しています。
モデル単位で比較する場合は、「2026 H2 画像生成 / 動画生成モデル カオスマップ」(¥19,800 / 全 50 ページ)に 26 モデルの位置づけをまとめています。
小さく試すときの進め方
最初の検証では、複数の目的を一度に試しません。「1 枚の商品画像から掲載先に合わせた候補を作る」など、結果を比べやすい仕事を選びます。
次に、これまでの制作方法と AI を使った方法を同じ条件で比べます。制作時間だけでなく、修正回数、採用できた案の数、公開前に見つかった問題も記録します。速く作れても、修正が増えれば導入効果は小さくなります。
検証後は、継続する作業、条件を変えて再検証する作業、AI を使わない作業に分けます。すべてを AI へ置き換えず、制作時間、修正回数、採用できた案の数を比べて改善が確認できた作業だけを次の検証へ進めます。
社内で導入判断を進める場合は、無料の「生成 AI 技術活用 理解度チェック 15 リスト」で、企業が生成 AI を扱う前に確認したい項目を整理できます。稟議書を書く段階では、「AI 技術活用 社内稟議決定版」(¥29,300 / 全 46 ページ)に 4 段階導入ロードマップと稟議サンプルをまとめています。
AI技術活用を組織で進める
個人が試すレベルと、部門で運用するレベル、複数部門で共通ルールを持つレベルは、必要な準備が違います。AI技術の導入は、ツール選びから始めるより、社内で誰が何を判断するか、素材と記録をどう管理するかを先に決めた方が定着します。
複数部門で運用するときは、ブランド担当、制作担当、法務、情報管理、経営が同じ判断基準を共有できる資料を用意します。個別の担当者が独自基準で運用すると、他部門の案件へ横展開したときに再度合意形成が必要になります。
よくある質問
Q1. AI技術とは何ですか。生成AIとどう違いますか。
AI技術は、人の知的な判断や行動の一部をコンピューターで再現する技術の総称です。画像認識や予測モデルも含みます。生成AIはその中で、文章・画像・映像・音声を新しく作る領域を指します。ブランド制作で使う技術の大半は生成AIに属します。
Q2. ブランドの画像・映像制作で使うAI技術は何種類ありますか。
本記事では、画像生成、動画生成、生成編集、背景生成・商品画像展開、高画質化、AIを使ったVFX・CGI制作の6つに整理しています。これはAI技術全体の公式区分ではなく、ブランド企業の判断がしやすいよう編集部でまとめた実装向けの分類です。
Q3. AI技術を導入する前に、社内で何を決めておくべきですか。
最初に試す作業、入力できる素材、採用基準、承認する人、残す記録の5点を先に決めます。ツール名の選定はその後です。判断基準を決めずに導入すると、生成物の採否が個人の感覚に依存し、部門横展開のたびに合意形成が必要になります。
Q4. モデル、ツール、サービスの違いは何ですか。
モデルは入力を処理して出力を返す中核部分で、FLUX・Veo・Nano Bananaなどが該当します。ツールは人が操作する画面や機能を含む製品、サービスはアカウント管理・保存・料金・チーム利用まで含む提供全体です。同じサービスでも選ぶモデルが変われば出力は変わるため、制作記録にはサービス名とモデル名を必ず両方残します。
Q5. AI技術は制作物の権利や商用利用にどう関わりますか。
契約プランや利用サービスによって、商用利用の範囲、生成物の権利帰属、学習データへの取り込み可否は異なります。プランを切り替えたとき、規約が更新されたときは、公開前に条件を必ず再確認します。承認記録には、使用したサービス、モデル、生成日、入力素材の出所を残します。
AI技術活用を検討するときの確認先
- 生成 AI 技術活用 理解度チェック 15 リスト — 社内導入前に確認したい基礎項目
- AI 編集社内導入ロードマップ — 試作、編集、承認、素材管理の導入順序
- 一般企業とブランド運営企業の生成 AI 活用の違い — ブランド企業で必要になる判断の違い
- 生成 AI クリエイティブ・プラットフォーム 17 社調査 — 17 社を 7 観点で横断整理した有料調査
- 2026 H2 画像生成 / 動画生成モデル カオスマップ — 26 モデルの位置づけと選定条件
- AI 技術活用 社内稟議決定版 — 稟議サンプルと 4 段階導入ロードマップ
- NEDO「人工知能(AI)技術分野」 — AI と生成 AI の関係を確認できる日本語資料
- NIST「Artificial intelligence」 / NIST「Generative artificial intelligence」 — 用語の一次確認
AIGC TIMESとは
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