Dove(ダブ)の宣言 3つの要点

Dove(ダブ)の 2024 年 4 月 9 日の発表には、次の 3 つの要点が含まれます。

  1. 広告における女性の表現に AI を使わない: Dove の広告制作で、女性を代替する目的での AI 生成画像を今後一切使用しない
  2. リアルな女性の写真を継続使用: 従来通り、多様な年齢・体型・背景の実在女性の写真を広告で用い続ける
  3. Real Beauty Prompt Playbook の無料公開: AI 画像生成を使う他者向けに、多様な女性像を得るためのプロンプト例をまとめた資料を無償提供

Dove の CMO であるアレッサンドロ・マンフレディ(Alessandro Manfredi)氏は、「Dove では、女性が『リアル・ビューティとは何か』を自ら決め、宣言できる未来を目指しています。アルゴリズムが決めるのではありません」と述べています。この立場は、AI を否定するのではなく、AI に女性の美の定義を委ねないという位置取りです。

なぜ「大手美容ブランド初」なのか

大手美容ブランドで、AI 生成の女性像を広告から排除すると明示的に宣言した企業は、Dove(ダブ)が最初とされています。多くのブランドが AI 生成コンテンツを制作の一部に取り入れる中、Dove は逆方向に踏み込みました。これは、20 年間続けてきた Real Beauty キャンペーンの一貫性を保つための決定であり、ブランドの中核メッセージと制作手段を整合させる動きです。

発表の背景:AI生成コンテンツが2025年までに9割へ

Dove の発表の背景には、「オンラインコンテンツの 90 パーセントが 2025 年までに AI 生成になる」という業界予測があります。Dove はこの予測を発表資料に引用し、AI 生成の理想化された女性像が消費者、とくに若年層の自己認識に与える影響を懸念しています。

Dove は 2004 年から Real Beauty キャンペーンを展開し、Dove Self-Esteem Project を通じて 150 カ国以上、1 億人以上の若者に自己肯定感の教育プログラムを届けてきました。2030 年までに 2.5 億人へ到達することを目標としています。AI 生成の女性像を広告から排除する宣言は、この 20 年間の Self-Esteem Project 活動と一貫した立場です。

Real Beauty Prompt Playbook(プロンプト・プレイブック)とは

Real Beauty Prompt Playbook(プロンプト・プレイブック)は、Dove が無償公開している資料で、生成 AI で画像を作る際に 多様な女性像を得るためのプロンプト例と指針をまとめています。公式には「Real Beauty Prompt Guidelines」と表記され、次の要素で構成されています。

  • 一般的な生成 AI ツールに入力するプロンプト(指示文)の書き方
  • 年齢・体型・肌の色・背景の多様性を確保するための語彙集
  • 現行の生成 AI が持つ偏りの傾向と、それを避けるための工夫
  • 実際にプロンプトを試した出力例の比較

Playbook は Dove 自身が広告で AI を使わない立場と矛盾しません。「Dove の広告では使わない。ただし社会全体で AI 画像生成が進む以上、多様な女性像が生まれやすい形で使ってほしい」という位置取りです。

ブランド企業と広告制作会社が学べる5点

Dove の宣言と Real Beauty Prompt Playbook から、日本のブランド企業と広告制作会社が学べる論点は次の 5 点です。

  1. 中核メッセージと制作手段の整合: ブランドの中核が「多様性」「本物」「自己肯定」なら、制作手段も同じ思想と整合させる必要がある
  2. 「使わない」を明確に宣言する価値: AI 導入で先行する競合に対し、「使わない」立場も差別化になる
  3. 消費者との対話としての制作方針: 消費者は制作背景を知り始めている。制作方針そのものが対外メッセージになる
  4. 業界全体への貢献という選択肢: 自社で使わないだけでなく、他者向けにガイドラインを公開する立場もありうる
  5. 20 年の一貫性が宣言に力を与える: Dove の宣言が信頼を得ているのは、20 年間の Real Beauty 活動の蓄積があるため。宣言だけでは足りない

本メディア運営企業(AIGC TIMES)のポジション

本メディア運営企業(AIGC TIMES を運営する企業)は、Dove(ダブ)の立場と重なる方針を持っています。すなわち、ブランド企業のクリエイティブ支援において、AI による女性像や人物の代替生成を基本的に行わない方針です。AI クリエイティブに関する情報発信・調査・研修を提供しますが、運営企業自身が広告制作の主体として、AI 生成の人物像で人を置き換える制作は請け負いません

本メディア運営企業が推奨するのは、ブランドが行うべき正しいブランドコミュニケーションの設計と支援です。AI 生成の広告制作代行ではなく、ブランドの中核と整合した制作方針の書面化、判定基準の設計、記録運用、部門横断の合意形成を支援します。詳しくは有料調査「AI 技術活用 社内稟議決定版」(¥29,300 / 全 46 ページ)に、経営説明資料と稟議サンプルを収録しています。

AI生成女性像を排除する動きの業界への波及

Dove(ダブ)の宣言は、他の大手美容ブランドや消費財ブランドの制作方針にも影響を与えると見られます。「AI 生成画像 = 効率化」という単純な図式から、「AI をどう使い、どう使わないかがブランドの立場を示す」という認識への転換が進んでいます。

AI ブランド倫理ポジションが競合差別化になる時代の全体像は、姉妹記事「ブランドの AI 倫理ポジションが競合差別化になる時代|Dove の 20 周年宣言が示す新しい前線」で整理しています。

よくある質問

Dove は AI 技術そのものに反対しているのですか

反対はしていません。Dove は Real Beauty Prompt Playbook を公開しており、AI 画像生成技術を否定しているわけではなく、「AI に女性の美の定義を委ねない」立場です。自社広告での使用を排除するのと、業界向けにガイドラインを公開するのは矛盾しません。

他社は Dove(ダブ)の宣言に追随していますか

現時点で同等の宣言をした大手美容ブランドは Dove(ダブ)のみで、大手美容ブランドの中で先行事例となっています。ただし複数のブランドが AI 生成コンテンツの利用方針を見直す動きは広がっています。

日本のブランド企業も同様の宣言をすべきですか

一律に推奨されるものではありません。中核メッセージが多様性・本物性・自己肯定に関わるブランドでは、Dove(ダブ)と同じ立場が整合する可能性があります。一方、機能性や技術性が中核のブランドでは、別のポジション設計が必要です。ブランドの中核との整合が判断軸です。

Real Beauty Prompt Playbook はどこで入手できますか

Dove の Real Beauty 20 周年キャンペーンサイトと親会社ユニリーバの発表ページから、無償でアクセスできます。日本語版は公式には提供されておらず、英語のプロンプト例と語彙集を、日本の制作チームが自社のブリーフに合わせて翻案する使い方が現実的です。

「大手美容ブランド初」の定義はどこまで厳密ですか

Dove(ダブ)の 2024 年 4 月 9 日の発表資料と、複数の英語メディアの一次報道が、「広告における女性の表現に AI を使わないと明示的に宣言した大手美容ブランドとして初」と表現しています。個別ブランドの内部方針レベルでは同種の判断が先にあった可能性は残りますが、対外宣言としての先行事例は Dove(ダブ)と整理して差し支えありません。

ダブ AI 広告宣言を確認した情報源


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