AIクリエイティブとは

AI クリエイティブに含まれるのは、画像生成 AI で作ったビジュアル、動画生成 AI で作った映像、生成 AI で作成した文章などです。AI だけで完成させたものには限りません。人が企画し、AI で素材を作ったあと、編集や修正を加えた制作物も含みます。

広告やデザインの分野では、画像や映像、文章などの制作物を「クリエイティブ」と呼びます。本記事でいう「AI クリエイティブ」は制作物の名称です。企画、試作、編集、確認、公開までの一連の仕事を指すときは、「AI クリエイティブ制作」または「AI を活用したクリエイティブ制作」と書き分けます。

この区別は、社内で AI 導入を進めるうえでも欠かせません。AI クリエイティブ(制作物)だけを見て採否を判断するのではなく、その制作物がどのような工程で作られ、どこに人の判断が入っているかまで把握します。

AIGC、生成AI、AI技術との違い

混同しやすい言葉ですが、それぞれ指しているものが異なります。

言葉 何を指すか
生成 AI 指示に応じて文章、画像、動画などを新しく作る技術
AIGC 生成 AI を使って作られたコンテンツ
AI 技術(クリエイティブ制作向け) 画像・映像・文章の生成に加え、既存素材の修正や高画質化などに使われる技術
AI クリエイティブ 本記事では、AI 技術を使って制作した画像、映像、文章などの制作物

AIGC は「AI-Generated Content」の略で、一般に生成 AI を使って作られたコンテンツを指します。AI クリエイティブは AIGC を含みますが、AIGC よりも広い概念です。AI で生成した素材に人が編集を加えたもの、生成 AI ではなく既存素材の修正・高画質化・背景生成などで作られた制作物も、AI クリエイティブに含まれます。

AI 技術という言葉は、認識や予測なども含む広い意味で使われますが、本記事で扱うのはそのうちクリエイティブ制作に使われる技術です。詳しくは基幹記事「AI 技術とは?ブランドのクリエイティブで使う 6 つの技術と導入前の確認事項」で整理しています。

AIクリエイティブの主な種類

制作物として AI クリエイティブは、大きく次の 4 種に分けられます。

画像系
広告バナー、商品画像、キャンペーンビジュアル、企画用のラフ画像、店舗サイネージ用素材など。AI で生成した画像、既存写真を編集した画像、複数素材を合成した画像を含みます。

映像系
SNS 向けの短尺動画、商品紹介動画、店舗環境動画、キャンペーンティザーなど。生成 AI で作った映像、実写と生成素材を合成した映像、既存映像を編集・拡張した映像を含みます。

文章系
広告コピー案、SNS 投稿案、商品説明文、社内向けのブランドガイドライン草案、プレゼン資料など。AI で生成した文章、既存文章を編集した文章、複数案を組み合わせた文章を含みます。

インタラクティブ系
Web サイトのパーソナライズ表示、動的商品画像、対話型キャンペーンなど。AI が入力や状況に応じて生成・変化する制作物です。まだ実装例は限定的ですが、ブランド体験の設計で注目されています。

企業で最も活用が進んでいるのは画像系、次いで映像系です。文章系は既存の校閲プロセスとの統合が課題として残ります。既存素材の修正や差し替えを中心に扱う編集領域については、姉妹記事「AI 編集とは?画像・動画・文章の編集で AI を使う仕事の全体像」で整理しています。

企業での主な活用場面

ブランド企業における主な活用場面は、次の通りです。

  • 撮影や本制作を始める前に、複数の方向性を画像で確認する
  • 商品写真の背景や余白を変え、掲載場所に合わせた素材を作る
  • 一つの企画から、縦長・横長・正方形の各比率に合わせた画像を用意する
  • 静止画をもとに短い動画を試作する
  • 既存の写真や動画の一部を修正する(不要物の削除、色補正、背景差し替え)
  • 社内で方向性を確認するための素材を作り、その内容を外部制作会社へ具体的に伝える
  • 過去のブランド素材を高画質化し、新しい掲載場所で再利用する

すべてを AI だけで完成させる必要はありません。企画初期の試作、修正案の共有、公開しない社内確認用の画像など、利用範囲を絞って試すこともできます。

AIクリエイティブ制作の基本的な流れ

企業ごとに工程は異なりますが、代表的な進め方を 5 段階で説明します。

1. 企画

誰に何を伝え、どこに掲載するのかを決めます。商品名、ロゴ、パッケージの形など、変えてはいけない要素もこの段階で確認します。企画段階で採用基準を決めておかないと、生成後の判断が個人の感覚に依存するため、ここが最も重要です。

2. 試作

文章で指示を出したり、自社で利用できる画像を読み込ませたりして、複数の案を作ります。この段階では一つに決めず、企画に合う案を比較します。試作では、生成した案の枚数だけでなく、指示や設定も記録しておきます。後から同じ結果を再現したいときに役立ちます。

3. 編集

採用する案を決めたら、背景や画面内の配置、商品の細部を整えます。商品名、ロゴ、容器、画像内の文字などは、正式な商品情報やデータと照らし合わせて確認します。生成 AI は既存の学習データから絵を組み立てるため、商品固有の詳細や、ブランド固有の色調は追加の指示や参照素材で補います。

4. 確認

企画の目的に合っているか、商品情報に誤りがないか、素材の利用条件や契約上の範囲に問題がないかを確認します。AI で作った画像や映像も、他の制作物と同じように公開前の確認が必要です。特に商品名の表記ゆれ、ロゴのバージョン違い、パッケージの改定前後は間違えやすい箇所です。

5. 展開と記録

広告、公式サイト、商品ページなど、掲載先の仕様に合わせてサイズを調整します。使用したサービスやモデル、入力素材、修正内容、確認者を記録しておけば、後から制作の経緯を確認できます。半年後に同じ条件で作り直したいとき、外部から問い合わせを受けたとき、記録があれば説明できます。

ブランド企業で重要になる理由

生成 AI が広まり、画像や動画の試作は以前より始めやすくなりました。一方、整った画像を短時間で作れても、それだけで自社の広告や商品ページに合う表現になるとは限りません。

ブランド企業では、作る案の数を増やすことよりも、採用する案の基準を決めることが重要です。自社が何を伝えたいのか、なぜその表現を選ぶのか、商品情報やロゴ、広告表現に関する社内ルールをどう守るのかを決めたうえで、どの工程に AI を使うかを整理します。

また、ブランド企業は広告、公式サイト、商品ページ、店舗、イベントなど、さまざまな場所で画像や映像を使います。どの案を採用し、どこを修正したのかを記録しておけば、次回の制作でも同じ基準で確認しやすくなります。掲載場所ごとに担当者が異なっても、判断基準を共有できる状態を作ることが、ブランド表現の一貫性につながります。

サービス選定の考え方

AI クリエイティブに使うサービスは、それぞれ得意な作業が異なります。

  • 画像制作を中心にしたサービス: 静止画の生成・編集に最適化、商品画像展開の効率化に強い
  • 動画制作を中心にしたサービス: 短尺から長尺まで対応、実写と生成素材の合成機能を持つものもある
  • 複数の AI を一つの画面で扱えるサービス: 画像生成・動画生成・編集を一つのワークフローで管理できる
  • 特定領域特化のサービス: 3D 表現、ブランドスタイルの追加学習、リアルタイム生成など

サービス選定では、モデルの性能や機能一覧だけを見ません。各社が扱う制作領域、企業向け契約条件、日本語対応、料金体系、商用利用の範囲を横断で比較します。制作会社やパートナー選定を伴う場合は「AI クリエイティブ制作パートナー選定 方法論ガイド」と「AI クリエイティブ制作パートナー チェックリスト」を、社内選定と発注の両輪で使えます。

主要 17 サービスの横断比較は、有料調査「生成 AI クリエイティブ・プラットフォーム 17 社調査」(¥22,300 / 全 33 ページ)に整理しています。モデル単位で比較する場合は「2026 H2 画像生成 / 動画生成モデル カオスマップ」(¥19,800 / 全 50 ページ)で 26 モデルの位置づけを扱っています。

公開前に人が確認すること

AI クリエイティブを公開する前に、少なくとも次の点は人が確認します。

  • 企画が自社の発信目的に合っているか
  • 商品やサービスの事実が正しいか(商品名、価格、機能、仕様)
  • 商品やロゴの扱いが、既存の広告や社内ルールに合っているか
  • 他社の作品や広告表現に似すぎていないか
  • 人物、商品写真、ロゴなどを利用できるか(権利、利用条件、契約)
  • 使用したツール、入力素材、修正内容、確認者が記録されているか
  • 掲載媒体の仕様(サイズ、解像度、ファイル形式、審査基準)を満たしているか

生成 AI を使えば複数の案を作れますが、公開する案を決めるのは担当者です。内容を確認し、採用した理由を説明できるようにしておく必要があります。

社内で始める前に決めること

最初から全社導入を目指す必要はありません。まずは、社内確認用の画像や撮影前の構図案など、外部へ公開しない仕事を一つ選びます。既存素材を修正する場合も、すぐには公開せず、社内で仕上がりを確かめます。

そのうえで、次の 5 点を決めます。

  1. 使用するサービスとプラン: 商用利用の範囲、生成物の権利、学習データの扱いを契約前に確認
  2. 入力してよい素材: 自社で権利を管理する素材、社外秘でないもの、契約上使用範囲が限定されないもの
  3. 公開前の確認者: 内容確認、権利確認、公開承認の各段階で誰が判断するか
  4. 制作記録の保存場所: サービスとモデル、入力素材、指示、修正、承認者を残す場所
  5. 採用と見送りの基準: どの水準まで達したら採用するか、何が該当したら見送るか

試した結果は「使えた・使えなかった」だけでなく、どこで修正が必要になったかまで残します。次の検証で改善点が明確になります。

AI クリエイティブの社内導入に必要な基礎は、無料資料「一般企業とブランド運営企業の生成 AI 活用の違い」で整理しています。段階的な導入手順は「AI 編集社内導入ロードマップ」を参照してください。

部門横断で運用するとき

個人が試すレベルと、部門で運用するレベル、複数部門で共通ルールを持つレベルは、必要な準備が違います。

複数部門で AI クリエイティブを運用するときは、ブランド担当・制作担当・法務・情報管理・経営が同じ判断基準を共有できる資料を用意します。個別の担当者が独自基準で運用すると、他部門の案件へ横展開したときに再度合意形成が必要になり、結果的に導入コストが増えます。

経営層への説明や稟議書の作成は、有料調査「AI 技術活用 社内稟議決定版」(¥29,300 / 全 46 ページ)に稟議サンプルと 4 段階導入ロードマップをまとめています。

よくある質問

AI クリエイティブと画像生成は同じですか?

同じではありません。画像生成は、AI クリエイティブを作るための技術の一つです。AI クリエイティブには画像だけでなく、映像や文章などの制作物も含まれます。

デザイナーがいなくても作れますか?

使用するサービスによっては、専門のデザイナーでなくても画像や文章を試作できます。ただし、公開する制作物として仕上げるには、情報の見せ方や文字の読みやすさ、商品やロゴの扱いが社内ルールに合っているかを判断する必要があります。社内で進める場合も、企画・制作・確認の担当をあらかじめ決めます。

生成 AI を使えば制作会社は不要になりますか?

社内で試作や軽い修正を行える範囲は増えます。一方、撮影素材と生成素材を組み合わせる仕事、長尺映像、掲載先ごとの素材制作、権利処理を伴う案件では、社内体制に応じて外部の専門家が必要になる場合があります。必要な技能と社内体制を踏まえて、仕事ごとに役割分担を決めます。

AI クリエイティブの権利は誰のものになりますか?

使用するサービスによって異なります。多くの主要サービスでは、有料プランで生成した制作物の使用権はユーザーに与えられます。ただし、著作権の帰属、商用利用の範囲、学習データへの取り込み可否、クレジット表記義務は各社の規約によって違います。契約プランごとに条件が変わることもあるため、公開前に必ず利用条件を確認します。

過去のブランド素材を AI に学習させることはできますか?

サービスによって対応が異なります。大手サービスの Enterprise プランや Business プランでは、ブランド固有のスタイルを追加学習させる機能を提供しています。ただし、学習させた素材の権利、学習後のモデルの利用範囲、契約終了時のデータ扱いなど、追加で確認する項目があります。ブランドガイドラインをどこまで再現するかは、追加学習の設計次第です。

参照した情報


AIGC TIMESとは

AIGC TIMES は、AI クリエイティブ業界の専門メディアです。本メディア運営企業が 10 都市・20 社以上のグローバルブランドへの実装を通じて蓄積したメソッド、独自調査に基づく業界動向、AI ツールのアップデート情報を、公式 note と連動して継続的に発信しています。

社内展開・複数部門利用をご検討の場合

AIGC TIMES の有料調査 5 商品を 社内共有可能な法人向けまとめプラン としても提供しています。部門横断で AI 導入を検討中の企業様は、下記フォームからご相談ください。

企業向けお問い合わせ

無料メソッド

AI クリエイティブの社内導入、研修、パートナー選定、ブランドコミュニケーションに関するメソッドを公開しています。

AIGC TIMES のメソッドを見る

公式リンク