社内の判断基準で最初に決めること

判断基準を作る前に、次の 4 点を先に決めます。

  1. 対象業務: 生成 AI を使う工程(例:商品画像の背景生成、企画段階の試作、SNS 素材の展開)
  2. 入力できる素材: 自社で権利を管理する素材、公開済み素材、社外秘でないもの
  3. 確認者: 制作担当、ブランド担当、法務、情報管理のうち、どの段階で誰が判断するか
  4. 公開条件: 社内資料のみ/社内会議で使用/社外公開の 3 段階のうち、どこまで進めるか

社内だけで見る初期案と、顧客が目にする商品画像では、必要な確認が異なります。すべての案件へ同じ基準を当てず、共通項目と案件固有の項目を分けるのが原則です。

生成AI出力の7つの確認項目

1. 企画との一致

誰に何を伝える制作物か、生成結果が企画の目的に合っているかを最初に確認します。画面全体が整っていても、主役の商品が伝わらなければ、企画の目的から外れています。

判定の目安として、「この 1 枚を見て、企画で決めた伝達内容を第三者に説明できるか」を確認します。担当者が説明を補足しないと伝わらない場合は、要修正または不採用へ回します。

2. 商品情報の正確さ

形、色、素材、部品、ロゴの位置を、実物や公式の商品写真と照合します。生成結果だけを見て判断せず、必ず承認済みの参照素材と横並びで比較します。

商品ごとに参照素材(承認済みの正面・側面・詳細カット)を用意しておくと、担当者が同じ判定を下せます。参照素材がない商品は、生成 AI を使う前に社内で撮影・確定するのが先です。

3. 文字と事実

商品名、価格、日付、注意書き、固有名詞を確認します。画像内の文字も拡大して 1 文字ずつ読みます。生成 AI は文字を絵として描くため、正しい商品名やコピーが崩れることがあります。

数字は、実物と一致するだけでなく、表示ルール(例:¥ を先に置くか、税込表記を必須にするか)まで社内基準と合わせます。文字を扱う制作物は、印刷サイズや掲載画面での読みやすさも合わせて確認します。

4. 人物

人物を含む場合は、手指の本数、顔立ち、髪型、衣服の形に不自然な箇所がないかを確認します。生成物では、拡大しないと分かりにくい歪みが残ることがあります。

あわせて、元の写真や映像を契約で定めた範囲内で使っているかを確かめます。モデル契約に「AI での学習・生成に使わない」条項がある場合、既存素材を入力に使えません。契約書と入力素材を照合してから確認へ進みます。

5. 権利と利用条件

入力に使った素材、生成物、利用したサービス、掲載先を記録します。素材の利用許諾、サービスの利用規約、掲載時に必要な表示(クレジット、AI 生成表示など)がそろっているかを確認します。

サービスの利用規約は改定されることがあります。稟議通過時と公開時で条件が変わっていないか、掲載直前にもう一度確認する運用にしておくと安全です。

6. 掲載仕様

縦横比、解像度、文字の大きさ、必要な余白を確認します。実際に掲載する画面や印刷サイズでも読みます。SNS では縦長、Web バナーでは横長、店頭では正方形など、掲載先ごとに別カットが必要な場合があります。

同じ生成物を複数媒体で使い回すと、いずれかで文字が切れる、商品が端に寄る、といった事故が起きます。掲載先ごとに承認カットを分けて保存します。

7. 公開版との一致

承認したファイルと実際に公開するファイルが同じかを確認します。書き出しやサイズ変更、圧縮、CMS への取り込みで色や文字が変わることがあります。公開前の最終ファイルを、承認時のファイルと並べて確認する工程を残します。

採用・要修正・不採用の3区分

生成結果は、次の 3 区分で判定します。

区分 判定条件 次の工程
採用 7 項目すべて基準を満たす 掲載仕様に合わせて書き出し、公開
要修正 直す部分と再確認する担当者が明確 修正指示を記録し、修正版で再判定
不採用 企画・商品・権利のいずれかを満たさない 理由を記録し、今回の制作では使わない

要修正と不採用を区別する境界は、修正で基準を満たせるかどうかです。指示や参照素材を追加すれば直せる問題は要修正、企画そのものや権利条件に起因する問題は不採用として扱います。判断が難しい場合は、上位の確認者(ブランド担当→法務→責任者)へ持ち上げる手順を先に決めておきます。

案件ごとに基準を調整する

7 項目すべてを毎回同じ重みで確認する必要はありません。案件の性質に応じて重点項目を変え、不要な項目は明記して外します。

  • 背景変更のみの案件: 商品本体が変わっていないこと、色味が承認済み画像と合うことを重点確認
  • 文字を含む制作物: 誤字、数字、改行、フォント指定を確認項目に追加
  • 人物を扱う案件: 契約範囲、公開先、モデル本人への通知・承認プロセスを追加
  • 社内会議用の試作: 掲載仕様と公開版一致の確認は省略、企画・商品・権利のみ確認
  • SNS 拡散を狙う制作物: 炎上リスク(表現、時期、対象への配慮)を追加項目として明記

案件開始時に、「今回チェックする項目」と「今回省く項目」を担当者間で合意しておくと、確認漏れと過剰確認の両方を防げます。

判断結果を記録する

判定を残す最小構成は次の 6 項目です。

  1. 利用したサービスとモデル(バージョンまで)
  2. 入力素材(ファイル名、権利管理元、契約範囲)
  3. 主な指示文(プロンプト)と参照素材
  4. 判定結果(採用/要修正/不採用)
  5. 修正内容と再判定回数
  6. 確認者と承認日

不採用の結果も、理由が分かる形で保存します。「表現が合わなかった」ではなく「商品ロゴの位置が承認済み配置から 15% ずれた」と具体的に残せば、次回の指示や参照素材の見直しに使えます。

同じ問題が続いた場合、指示文だけを直すのではなく、入力素材、利用機能、確認タイミング、参照素材の解像度まで見直します。制作記録を月次で振り返り、実際に起きた問題に合わせて判断基準そのものを更新する運用にします。

判定シートの記入例

商品画像の背景生成案件を想定した、社内共有用の判定シート例です。

案件: 秋新商品 A の Web 商品ページ用背景生成
対象カット: 正面カット、45 度カット、寄せカット(各 1 枚)
利用サービス: [社内承認済みサービス名] / [モデル名 v○.○]
入力素材: 正面カット原画 3 枚(承認 ID: PRD-2026-045)
参照素材: ブランドカラーガイド v3、承認済み Web バナー 3 点
重点項目: 商品本体(色・形・ロゴ位置)、背景の色相、掲載サイズでの視認性
省略項目: 人物、社外公開表示(社内 A/B テスト後に別途判定)
判定: 正面=採用 / 45 度=要修正(ロゴ位置 8% ズレ)/ 寄せ=不採用(商品エッジ崩れ)
修正指示: 45 度カットに参照素材の縦グリッドを追加指示、寄せカットは撮影素材で代替
確認者: 制作担当(一次)→ ブランド担当(最終)

この例は、「今回は何を確認し、何を確認しないか」を先に決めてから判定に入る流れになっています。案件によって重点項目と省略項目を書き換えて使います。

判断基準は、担当者が変わっても再現できる形に

判断基準の価値は、精緻さよりも再現性にあります。今日の担当者が下した採否を、来月の別担当者が同じ制作物に対して下せる状態が理想です。

そのためには、判断基準そのものを社内資料化し、新しく参加する担当者への引き継ぎ手順まで整えておく必要があります。基準を作った担当者だけが運用できる状態では、退職や異動で判定が止まります。判断基準は、書いた本人がいなくても回る形まで作り込みます。

よくある質問

判断基準は何段階から始めればよいですか

最初は 7 項目を全案件に適用するのではなく、社内試作の段階では企画・商品・文字の 3 項目のみから始める運用が現実的です。社外公開に近づくにつれて、権利、掲載仕様、公開版一致を段階的に追加します。

判断基準を作っても現場が使わない場合は

判断シートの記入が任意になっていると、繁忙期に飛ばされます。判定シートの提出を承認プロセスの必須ステップに組み込み、シートがない案件は次工程へ進めない運用にします。

生成 AI を使わない従来制作にも同じ基準を当てるべきですか

7 項目のうち、企画・商品・文字・権利・掲載仕様・公開版一致の 6 項目は、生成 AI を使わない制作物にも当てはまります。判断基準は生成 AI 専用ではなく、制作物全体の品質基準の一部として整備すると、社内の運用負荷が下がります。

判断基準をつくるときに確認したい情報


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